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F84広汎性発達障害の診断基準・小児自閉症
2024.05.272024.05.31
広汎性発達障害、ICD-10
子供の発達障害について
通常の学級の子どものうち6.5%が発達障害(生まれついての脳機能の発達の偏りによって生じる障害。学習障害やADHD、広汎性発達障害などの総称)の可能性があると言われています。 この中の広汎性発達障害は特に対人関係・コミュニケーションで問題を抱えやすく、大人になってからも生きづらさを感じる人が多いです。
この記事と次の記事では、F84広汎性発達障害について、ICD-10をベースに説明します。
F84広汎性発達障害の概要
広汎性発達障害の中核的特徴は、以下の3つです。
①相互的な社会関係における質的障害(対人関係の障害や社会性の障害と呼ばれることもあります)
(例)視線を合わせない
場の空気・雰囲気や暗黙の了解を理解できない
指差しをしない
※指差しができるということは、何かに興味を持つことができることや、指を差すことで意図を伝えられることを理解していることを示し、発達的に重要である
②コミュニケーションのパターンにおける質的障害
(例)抽象的・曖昧な言葉を理解できない
冗談をそのまま文字通りに解釈する
ノンバーバル・コミュニケーション(表情・ジェスチャー・声の抑揚など)で伝えることができない。またノンバーバル・コミュニケーションを理解できない
※知的障害(知能指数が70未満であること)を伴う場合は言葉の遅れやオウム返し(相手が言った言葉を繰り返す)が多く見られる
③限定された関心・常同的な行動
(例)特に幼児期では特定の物に強い関心を抱きやすい(水道から流れる水をずっと見続けたり、おもちゃの車のタイヤを回し続けたりするなど)
同じ道順や手順への強いこだわりを示す(家具の場所が変わったり、違う道から目的地へ行こうとしたりすることを非常に嫌がる。パニックを起こすこともある)
ぴょんぴょん跳ねる、ぱちぱち手を鳴らすなど、目的もなく同じ動作を繰り返す
補足
①相互的な社会関係における質的障害と②コミュニケーションのパターンにおける質的障害は似ていますが、①は相手の気持ちの理解とかかわるところであり、②は言葉や、言葉を補うノンバーバル・コミュニケーションの理解に特に焦点を当てたものです。これらの特徴は5歳以前から見られます。なお、多くの場合では広汎性発達障害は知的障害を伴っていますが、知的障害を伴わない広汎性発達障害の場合もあります。知的障害と広汎性発達障害は別の障害であるため、知的障害を伴う場合は別にコード化しなければなりません。
広汎性発達障害は生まれついての脳機能の発達の偏りが主な原因ですが、医学的な病態が原因と考えられるケースもあります。病態例としては、乳幼児けいれんや胎児性風疹、結節性硬化症、脳リピドーシス、脆弱X染色体異常などが挙げられます。とはいえ、広汎性発達障害の診断は行動的特徴に基づいて行うため、これらの病態が見られる場合は別にコード化しなければなりません。
F84広汎性発達障害の各診断基準
この障害の下位診断には小児自閉症や非定型自閉症、他の小児期崩壊性障害、アスペルガー症候群などのDSM-5では自閉症スペクトラム障害と呼ばれるもののほか、レット症候群が含まれます。レット症候群は染色体異常に伴うためDSM-5では発達障害から除外されていますが 、ここではICD-10に基づいてレット症候群の診断基準についても解説します。
F84.0小児自閉症の診断基準
3歳以前から広汎性発達障害の以下の3つの特徴が全て見られる
- ①相互的な社会関係における質的障害
- ②コミュニケーションのパターンにおける質的障害
- ③限定された関心・常同的な行動
上記の行動的特徴のほか、以下の障害・困難が見られることも多い
- 感覚過敏(音や布の肌触りなど外部からの刺激にとても敏感であること)による恐れ/恐怖症
- 睡眠の障害
- 偏食(特に炭水化物と砂糖を好み、特定の野菜や果物、肉を嫌がる傾向がある)
- かんしゃく発作や攻撃性
- 特に重度の知的障害(知能指数が20~34であること)を合併しているときは、手首を噛むなどの自傷行為
- 余暇を過ごすのが苦手
- 抽象的な概念の理解が難しいので、何らかの概念を操作するような作業を行うことが難しい
これらの行動的特徴が見られるのは3歳以前からですが、診断自体は大人に対しても下すことができます。また、知的障害と広汎性発達障害は別の障害ではありますが、3/4のケースで著しい知的障害が認められることが分かっています。
F84.1非定型自閉症の診断基準
・以下のいずれかの点で小児自閉症の診断基準を満たさないこと
- 3歳を過ぎてから広汎性発達障害の特徴が見られるようになった
- 広汎性発達障害の3つの特徴のうち1つあるいは2つが見られる
非定型自閉症は小児自閉症と異なり広汎性発達障害の3つの特徴全てには該当しません。しかし、これは非定型自閉症のほうが小児自閉症よりも障害としての程度が軽いことを意味するものではないです。非定型自閉症では重度の知的障害を伴う場合が多く、小児自閉症の診断で必要となる行動を示せるほど子どもが発達していないためです。
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