名古屋駅から徒歩1分の心療内科,精神科,メンタルクリニックのひだまりこころクリニック名駅エスカ院がF84広汎性発達障害の診断基準・アスペルガー症候群について解説

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F84広汎性発達障害の診断基準・アスペルガー症候群

2024.05.272024.05.31

広汎性発達障害、ICD-10

ICD-10の広汎性発達障害について

F84広汎性発達障害の診断基準①に続いて、F84広汎性発達障害のF84.2レット症候群以降の障害の診断基準について、ICD-10をベースに説明します。

F84広汎性発達障害の各診断基準の続き

F84広汎性発達障害の主な残りの障害は、F84.2レット症候群とF84.3他の小児期崩壊性障害、F84.4精神遅滞[知的障害]および情動運動に関連した過動性障害、F84.5アスペルガー症候群などです。

重篤気分変調症の詳しい説明を心療内科・精神科・メンタルクリニックが行います

F84.2レット症候群の診断基準

以下の運動機能などが低下していく経過から診断が確定されます

  • 手の常同運動(勝手に体が同じ動きを繰り返すこと)
    ※手もみ運動や、胸や顎の前で両腕を屈曲させる手洗いのような運動などが特に多い
  • 一旦はできるようになっていた手先を使った動きの一部あるいは完全な喪失
  • 獲得していた繊細な運動操作力がなくなる
    ※両足の位置や歩幅が広くなり、かつ筋トーヌス(筋緊張)が低くなるので、歩行に問題を抱える
  • ある程度発達していた言語機能の一部あるいは完全な喪失

ほか、レット症候群でよく見られる症状として以下があります

  • 食べ物を咀嚼して飲み込むことができない
  • 過呼吸
  • 排便のコントロールができない
  • 側弯あるいは後側弯(背骨が曲がる)。青年期以降では、半数は重度の運動機能障害を伴った脊髄の萎縮を来す
  • 多くの場合、8歳前までにはてんかん性発作を起こす
  • 全てのケースで重度の知的障害(知能指数が20~34であること)を伴う

広汎性発達障害を含めて、発達障害は男児で女児よりも多いという特徴がありますが、レット症候群はほぼ女児にしか報告されていません。また、広汎性発達障害の場合は「何か目線が合いにくい」など赤ちゃんの頃からその行動的特徴を示しますが、レット症候群では生後7~24ヶ月まではほぼ正常に近い発達を示す点で大きく違います。

できていたはずの手先の動きが徐々にできなくなったり、獲得していた言語機能が少しずつ失われたり、頭囲の増加が減速していくという形で発症していきます。

他の広汎性発達障害ではコミュニケーションに質的な障害を抱えますが、レット症候群の場合は社会性の発達は最初の2、3年で止まるけれども、社会的な関心は保たれる傾向にあるとされています。言語機能が失われるため言葉によるコミュニケーションは困難ですが、近年では視線によるコミュニケーションが模索されているようです 。

F84.3他の小児期崩壊性障害の診断基準

◆少なくとも2歳頃までは正常に発達した後、それまでに獲得した以下の技能を喪失する

(例)重篤な言語の退行、言語喪失、遊びや社会的技能・適応行動の退行、排せつのコントロールの喪失など

◆広汎性発達障害の以下の3つの特徴が見られる

  • ①相互的な社会関係における質的障害
  • ②コミュニケーションのパターンにおける質的障害
  • ③限定された関心・常同的な行動

レット症候群と同様、他の小児期崩壊性障害も2歳~10歳までは正常に発達します。そして障害を発症した後は、それまでの発達によってできるようになっていたはずのことが数カ月に渡ってできなくなり、小児自閉症と似た行動的特徴を示すようになるという点で特徴的です。障害が起きる前駆期では大人の指示に逆らう行動や、いらいらや不安、過動などを示します。

その後、物事にあまり興味を抱かなくなってから、行動の崩壊や言語の喪失が起こります。多くの場合、色々な技能が喪失するものの一旦進行が止まり、わずかながら改善します。とはいえ予後は非常に悪いことが多く、重度の知的障害が残るのが大多数です。

大人の発達障害・ADHDでお困りの方は心療内科までご相談ください

F84.4精神遅滞[知的障害]および情動運動に関連した過動性障害の診断基準

以下の3つ全てに該当する

  • 発達に不釣り合いな重篤な過動
  • 常同運動
  • 重度の知的障害

この障害については疾病論的な妥当性は確定しておらず、定義が不十分な障害とされています。とはいえ、以下の理由からADHDとは異なる特徴を示します。

  • 重度の知的障害を伴う子どもは多動や注意、常同行動などの問題を示し、中枢神経刺激薬が功を奏しないどころか、重篤な不機嫌反応や精神運動制止(頭が動かなくなり、会話が減ったり、根気がなくなったり,集中できない状態)につながることがある
    ※ADHDの場合は衝動的な行動や不注意を改善するのに中枢神経刺激薬が使われる
  • 青年期になると過活動性ではなく活動低下を示すようになる
    ※このような現象は知的障害を伴わないADHD児には見られない

この違いが知能指数の低さによるものなのか、器質的な脳損傷のためかは不明です。少なくともICD-10の段階では、重度の知的障害で多動を伴う場合はこの障害であると診断され、中等度の知的障害と多動を示す場合はF90多動性障害と診断されます。

ためこみ症について

F84.5アスペルガー症候群の診断基準

広汎性発達障害の以下の3つの特徴のうち、以下の2つが見られる

  • ①相互的な社会関係における質的障害
  • ②限定された関心・常同的な行動

広汎性発達障害の3つの特徴のうち言葉の発達に問題がないものが、アスペルガー症候群とも言えます。多くの場合は知的水準にも問題がないため、子どもの頃は「変わった子どもだな」と見過ごされることは少なくありません。そして、成人になって社会に出てから臨床的な問題となることが多いです。

ほか、これまでのカテゴリーに該当しないものとして、「F84.8他の広汎性発達障害」、「F84.9広汎性発達障害、特定不能のもの」があります。広汎性発達障害、特定不能のものは、広汎性発達障害の特徴には概ね合致するけれども矛盾する所見がある場合や、診断基準を十分には満たしていない場合に用いられることがあります。

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