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抗精神病薬による体重増加の予防・治療方法
2024.01.202024.01.20
お薬
抗精神病薬と体重の変化
ほぼ全ての抗精神病薬の副作用として、体重増加が認められます。体重が増えることの問題は、自己イメージの悪化や糖尿病のリスクだけには留まりません。罹患率や死亡率の増加とも関わるため、体重増加を予防することは非常に重要です。
この記事では、抗精神病薬による体重増加の予防・治療方法や、抗精神病薬による体重増加を緩和するために用いられる薬剤について説明します。
抗精神病薬による体重増加の予防・治療方法
早期介入することにより、体重増加を予防あるいは軽減することができます。介入の方法にはモニタリングや薬剤の切り替え、行動プログラムなどがあります。また、これらを組み合わせることも体重管理に有効です。
モニタリング
抗精神病薬の投与を開始する時点で体重を測定することは、非常に重要です。それというのも、治療初期の急速な体重増加が長期的な体重増加を強く予測するためです。治療開始1ヶ月の時点で治療開始前と比べて体重が5%以上増加したかが、急速に体重が増加したかの判断基準となります。
そのため、薬物療法を開始してから3ヶ月間は毎週体重を測定したほうがよいと言われています。また、体重測定は治療開始後3ヶ月間だけ行えばよいというものではありません。少なくとも6ヶ月ごとなど、定期的に体重のモニタリングを行うことが求められます。
体重を測るだけなら簡単だと思われるかもしれません。しかし、体重の適切なモニタリングを行えている患者さんは少数であることが、エビデンスによって示されています。体重測定を行う意義を患者さんに伝え、体重管理のモチベーションを維持してもらう必要があります。
薬剤の切り替え
切り替える薬剤としては、アリピプラゾールやziprasidone、lurasidoneなどが推奨されています。またクロザピンやオランザピンにアリピプラゾールを追加することで体重が減少することが報告されているため、これらの薬剤の場合は切り替えるのではなくアリピプラゾールを加えることもあります。
とはいえ、薬剤の切り替えには症状の再燃や治療中断のリスクを伴う点に注意する必要があります。また、薬剤の切り替えによって体重をある程度コントロールできますが、その影響力は強いわけではありません。そのため、体重を適正範囲に留めるためにも行動プログラムを併用して行うほうがよいでしょう。
行動プログラム
行動プログラムの中でも、「行動的生活習慣プログラム」が体重増加への介入法として大きな効果が認められています。このプログラムでは、食事の改善と身体活動の増加が行われます。
抗精神病薬による体重増加を緩和するために用いられる薬剤
薬剤の切り替えや行動プログラムでは体重管理できない場合や、肥満による身体へのリスクが高い場合には、薬剤を使って体重管理するという治療方法もあります。抗精神病薬による体重増加を緩和するために用いられる薬剤には、実は数多くあります。一部を取り出して以下に紹介をしています。
但し、保険診療ではない治療法もあることや、抗精神病薬に関わらず、体重増加を緩和する薬剤という視点では、見解についても各分野様々であることをご了承ください
アリピプラゾール
クロザピンやオランザピンと併用することで、体重が減少したり、代謝パラメータに有益な影響を及ぼしたりすることが示されています。ただし、クロザピンやオランザピン以外の抗精神病薬との併用は推奨されていません。
リラグルチド
元々は2型糖尿病の薬として承認された薬剤です。クロザピンやオランザピンによる過体重の前糖尿病患者を対象にした研究で、体重減少の効果が示されています。そのため、糖尿病患者やクロザピンによる体重増加において使用が推奨されています。基本的に忍容性は良好ですが、胃腸障害を引き起こす恐れがあります。また、日本ではリラグルチドの肥満や体重増加への使用は保険の適用外とされている点には注意が必要です。
メトホルミン
メトホルミンには、特にオランザピンをはじめとする抗精神病薬による体重増加を低減する効果があると、多くのエビデンスが示しています。ただし、メトホルミンを服用することでビタミン12欠乏症のリスクが高まる点には注意しなければなりません。またメトホルミンも、日本では肥満や体重増加への使用は保険の適用外となっています。
orlistat
クロザピンやオランザピンを除いた薬剤による体重増加に関するデータはほとんどありませんが、肥満改善効果の信頼性があり、臨床で広く使われています。ただし、低脂肪食の食事療法を遵守しないと下痢を起こしたり、経口薬の吸収不良を起こしたりする恐れがあります。
reboxetine
オランザピンによる体重増加を緩和したり、いくつかの代謝の変化を戻したりすることができます。
最後に
体重増加は罹患率や死亡率にも影響を及ぼす恐れがあるため、体重管理は治療において非常に重要です。
早期介入することで体重増加を予防・軽減できると言われているとはいえ、体重管理を続けるには患者さんのモチベーションをも大切です。体重管理の大切さを患者さんにしっかり伝え、モニタリングや良い生活習慣を守ってもらえる働きかけや、そのような課題に医療者も意識をして関わることも同様に重要なことでもあります。
野村紀夫 監修
医療法人 山陽会 ひだまりこころクリニック 理事長 / 名古屋大学医学部卒業
保有資格 / 精神保健指定医、日本精神神経学会 専門医、日本精神神経学会 指導医、認知症サポート医など
所属学会 / 日本精神神経学会、日本心療内科学会、日本うつ病学会、日本認知症学会など
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