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レム睡眠行動障害
2021.05.062022.06.08
レム睡眠行動障害
はじめに
みなさんは夜眠っているとき、夢を見ますか?
よく覚えているかそうでないかの違いはあっても、これまでの人生で一度も夢を見たことがないという方はまずいないのではないかと思います。
夢の中で誰かと戦ったり、何かから逃れようともがく経験をしたことがある方も多いことでしょう。
ふつう、夢の中でどんなに激しく体を動かしても現実の身体は動くことはありません。ところが、なんとも信じがたいことに、夢の中の動きに伴って実際に現実の体が動いてしまう病気があります。
それが今回ご紹介する「レム睡眠行動障害」です。どのような病気なのか、詳しく見ていきましょう。
【レム睡眠行動障害】概要
レム睡眠行動障害(REM Sleep Behavior Disorder : RBD)は、レム睡眠時に通常の脱力状態にならず、夢の通り行動してしまう病気です。私たちの睡眠は、浅い眠りである「レム睡眠」と、深い眠りである「ノンレム睡眠」に分けられます。レム睡眠はおおよそ90分間隔で、数分から1時間前後出現するもので、この間にわたしたちは夢を見ます。夢を見るという状態からもわかるように、レム睡眠下でも脳は動いています。しかし、脳の信号が体には伝わらないよう、筋肉の活動はブロックされる仕組みになっており、通常手足は動かせません。ところが、レム睡眠行動障害では、夢見中の脳の信号がうまくブロックされずに筋肉まで伝わってしまうことで、睡眠時の異常行動につながると考えられています。多くの場合、20~30分のレム睡眠が終わると、ふたたび通常の睡眠に戻ることも特徴です。
【レム睡眠行動障害】症状
レム睡眠行動障害では、主に以下の症状があるといわれています。重症化するまで自身では気づきにくく、一緒に寝ている家族やパートナーの訴えで発覚するケースも少なくありません。
- ・大声で寝言を言う(怒鳴る、叫ぶ、笑う、泣くなど)
- ・手足を動かしたり、振り回したりする
- ・隣の人を殴る、首を絞める
- ・近くの物を投げる、蹴り飛ばす
- ・立ち上がり壁にぶつかる、ベッドから落ちる
- ・徘徊して階段から落ちる
診断は、症状の聞き取りに加え、脳波等の生理学的検査をもとになされます。
夢中遊行症(夢遊病)との違い
レム睡眠行動障害とよく似た病気に、夢中遊行症(夢遊病)があります。夢中遊行症(夢遊病)も、徘徊等の睡眠中の異常行動を示す病気ですが、レム睡眠行動障害と違い異常行動中に声をかけても目覚めさせるのが困難だといわれています。また、行動中の記憶がないことも特徴です。対して、レム睡眠行動障害では、異常行動中やその直後に声をかけたり、身体を揺さぶることで、完全に目覚めさせることができるといわれています。さらに、寝言や異常行動の内容は本人の見ていた夢とほぼ一致するため、まったく身に覚えがないことは少ないケースが多いといわれています。
【レム睡眠行動障害】発症しやすい年代と男女比
レム睡眠行動障害をよく発症する年代は50~60代の中高年期だといわれています。60歳以上では人口の2%程度、70歳以上では6%程度の人に出現するという報告もあり、高齢者では珍しい疾患ではないことがうかがえます。
また、レム睡眠行動障害は男性に多いと言われています。
【レム睡眠行動障害】原因
レム睡眠行動障害は、パーキンソン病や、レビー小体型認知症、脳腫瘍といった神経伝達に関わる病気の初期症状として現れることがあります。また、過度の飲酒や心理的なストレス・不眠症などで心身に負担がかかった際も発症しやすいといわれています。しかし、レム睡眠行動障害の約半数は基礎疾患を持たないといわれており、まだ明らかになっていないことも多い病気です。
【レム睡眠行動障害】治療
レム睡眠行動障害の治療は主に薬物療法が用いられます。加えて、環境調整や生活習慣の見直し、場合によっては精神療法も有効な場合があります。
薬物療法
レム睡眠を抑制したり、脳の働きを抑えたり、筋肉の緊張を緩めるお薬であるクロナゼパムの服用で、9割近くの患者さんは症状が改善すると言われています。薬物療法は、下記の生活習慣の改善や精神療法と併用して行うとより効果的だとされています。
環境調整
けがを防ぐために、ベッドの周りに物を置くことを避ける、窓や階段からベッドを離すといった環境調整も大切です。さらにパートナーには、症状が安定するまでは別室で寝てもらうといいかもしれません。
生活習慣の改善
日々の生活で心身に負担をかけすぎていないか見直し、問題がある場合は生活スタイルを見直すことで、症状の改善にもつながります。他の睡眠障害と同様に、就寝と起床のリズムを整えることも基本になります。また、カフェインやアルコールの取りすぎは禁物です。
精神療法
症状の背景に精神的な問題がありそうなときは、精神面からのアプローチが有効です。原因のはっきりしない睡眠の問題の背景には、自分では気づかないストレスなどがある場合も多いといわれます。体の不調は、心の健康についても考えてみるいい機会かもしれませんね。なお、症状の程度にもよりますが、レム睡眠行動障害の場合、精神療法は薬物治療と並行して行っていく事もとても多いです。
今回は、レム睡眠行動障害についてご紹介しました。
レム睡眠行動障害は、放置により自然治癒することは少ないといわれています。症状にお困りの方は、早めに専門家にご相談くださいね。
参考資料:下畑享良ら(2017)『Rapid eye movement(REM)睡眠行動障害の診断,告知,治療』臨床神経学 57巻2号
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