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適応障害とは?症状や治し方、うつ病との違いについて解説
2024.05.212024.05.21
適応障害、うつ病
ストレスやプレッシャー面で、不調が出てしまう時
「最近なぜかやる気が出ない…」「イライラして疲れが取れない…」といつものパフォーマンスが出せていないのは、適応障害の兆候かもしれません。適応障害は、ストレスやプレッシャーが原因で精神面や身体面に症状が出る精神疾患です。
誰もがなりうる病気ですが、適切な治療を行えば改善が見込まれます。本記事では、適応障害の症状や経過、治療法について詳しく解説していますので、ぜひ参考にしてください。
適応障害とはどんな病気?
適応障害とは、職場や家庭などの生活上のストレスにうまく対応できずに生じる「心の不調」のことです。さまざまなストレスが原因となり、不安や憂うつな気分、行動の乱れなどの症状が起こることがあります。
ストレスに対する反応が強く出ており、生活に支障が出ている場合は適応障害の可能性があるといえるでしょう。
例えば、仕事でミスをしてしまったときに、「失敗した…」と落ち込むのは正常な反応でしょう。しかし、ミスをしたことで酷く不安になったり、仕事に行けないほど落ち込んだり、仕事で同じような環境で震えてしまったり不調が出てしまうなど、強く反応してしまう状態は適応障害かもしれません。
適応障害は、ストレス反応が強く出てしまい、生活を送る上で支障が出ている状態だといえます。ストレスの原因を取り除き、適切な治療を受けることが大切です。
適応障害にはどんな症状がある?
ストレスが原因となり起こる適応障害ですが、具体的にはどのような症状が起こるのでしょうか。症状の特徴と一般的な経過について解説します。
【症状】精神面、身体面、行動面の症状に分けられる
適応障害の症状は個人差があり、多彩なことが特徴です。不安や抑うつなどの「精神症状」、頭痛やめまいなどの「身体症状」、イライラして攻撃的になるなどの「行動上の変化」の3つに分けられます。
精神面の症状
適応障害の精神症状の特徴は抑うつと不安であり、うつ病の症状と似ています。具体的には以下のような症状が代表的です。
- 抑うつ気分:気分が落ち込んで喜んだり楽しんだりできない
- 意欲の低下:やる気が出ない
- 不安、焦り:ストレスに感じている物事を思い出すと不安で焦ってしまう
身体面の症状
精神症状に加えて、身体面にも症状が起こることがあります。特に、子どもや高齢者では身体症状が起こりやすいでしょう。具体的な症状は以下の通りです。
- 頭痛・肩こり
- 胃部の不快感
- 動悸・息苦しさ・吐き気
- めまい
- 不眠
- 体のだるさ・疲れやすさ
行動上の変化
精神面や身体面だけでなく、行動上の変化としても適応障害の症状があらわれることがあります。特徴的なのは、イライラしやすくなった際の攻撃的な行動です。具体的には、以下のような行動が挙げられます。
- 遅刻や欠勤が増える
- 無茶な運転をしてしまう
- 飲酒やタバコの量が増える
- 家に閉じこもる
行動上の変化は、適応障害の全般的な症状としてみられるわけではなく、人によっては起こらない場合もあります。
【適応障害のタイプ】6つのタイプに分けられる
適応障害の特徴は非常に多岐にわたります。国際的な診断基準であるDSM-5※では、特徴を整理するために、以下のように6つのタイプに分けられています。
- 抑うつ気分を伴う適応障害:抑うつ気分や涙もろさ、絶望感を特徴とするタイプ
- 不安を伴う適応障害:動悸、焦り、様々な物事への過敏さを特徴とするタイプ
- 不安と抑うつ気分の混合を伴う適応障害:抑うつと不安の混合型
- 素行の障害を伴う適応障害:責任感が低い、ルールを無視する行動を取るタイプ
- 情動と素行の障害の混合を伴う適応障害:素行の障害に不安や抑うつ気分が混合したタイプ
- 特定不能の適応障害:上記5つに当てはまらないタイプ
同じ適応障害でも、抑うつ気分を伴うものと素行障害を伴うものとでは特徴が大きく異なります。そのため、一見するとストレスが原因になっているものと分からないこともあるので注意が必要です。
※米国精神医学会の発行する「精神疾患の診断・統計マニュアル」
【適応障害の経過】良くなる可能性が高いが、他の精神疾患を発症するケースもある
適応障害は、ストレスが原因となって3カ月以内に症状が出現します。ストレスとなっている物事から離れて適切な治療を受けると、3カ月以内に回復することが一般的です。そのため、基本的には「良くなる可能性が高い精神疾患」だといえます。
しかし、思春期から20代前半までの青年期の患者様では、成人よりも回復に時間がかかることがあるでしょう。時間がかかる理由としては、うつ病をはじめとした気分障害やアルコール依存症を発症してしまうケースがあるからです。
治すためには、無理をせずに治療に専念することや、悪循環になっているストレス解消パターンを見直していくことが大切だといえます。
【他の病気との違い】うつ病に似ているが原因が違う
適応障害は抑うつ気分や不安、不眠など、うつ病と症状が似ています。しかし、症状が起こるきっかけに違いがあるのです。適応障害は原因が明確なことが多いのですが、うつ病は気分が落ち込む理由が漠然としている傾向があります。
うつ病でみられる落ち込みは、気分をつかさどる脳内の神経伝達物質のバランスが崩れている状態です。そのため、ストレスに関連して生じる落ち込みや不調ではないため、適応障害の症状とは異なります。
両者は治療の進め方が変わってくるため、専門医の意見を聞いて適応障害やうつ病かを見極めることが大切です。
適応障害の原因となるストレスとは?
適応障害を引き起こすストレスにはどのようなものがあるのでしょうか。ストレスの要因は、年齢や性別、置かれている状況により異なります。適応障害の原因として多いストレス要因について、「性別」「年齢」という2つの側面から説明します。
性別:女性の方が男性に比べて発症リスクが2倍
適応障害は、一般人口のうち2~8%にみられる病気であり、女性の発症リスクは2倍とされています。特に、独身女性の発症リスクが高いことが特徴です。女性は、育児や介護など家庭にまつわる負担や、月経や出産といった生理的なストレスを抱えやすいことが影響していると考えられています。
年齢:思春期から20代前半までの青年期に多い
年齢ごとにストレスになる要因が異なるため、適応障害の原因は多彩だといえます。発症の多い思春期から20代前半までは「学校の悩み」「親からの拒絶や離婚」といったストレスの影響が大きいでしょう。成人してからは、「夫婦間の問題」「離婚」「環境の変化」「金銭的な問題」が発症の原因として多い傾向があります。
また、同じ出来事でも、人生の中での時点が違えば、異なった意味を持つでしょう。例えば、親を亡くすことは大人になってからよりも子どものころの方がショックは大きいものです。同じストレスでも年齢により受ける影響が異なるため、発症の原因は多岐にわたります。
適応障害の治療、治し方は?
ストレスに対する強い反応を生じる適応障害ですが、治し方はどのような方法があるのでしょうか。基本的には、精神療法を用いてストレスの軽減や耐性を高めつつ、必要に応じて薬を使っていく形がとられます。
精神療法:ストレスに合わせて多様な形態で治療を行う
精神療法とは、医師との対話を通じて症状の軽減を図る治療法です。適応障害の治療には、精神療法が有効とされています。下記のように、外来での通院精神療法以外にもグループ単位で行う集団療法や個人カウンセリングなど、ストレスに合わせて多様な形態で行えるものもあります。以下に紹介をしています。
治療法 説明 効果
- 集団療法 グループ単位で自分について語る。同じ病気を持つ人の体験を共有できる。 慢性疾患のように同じ境遇のストレスを共有し、対処方法を知れる。
- 個人カウンセリング カウンセラーと1対1で対話し、自分の気持ちや考え方に気付く。 適応障害の原因のトラウマを解消する。
- 家族療法 本人だけでなく家族にも働きかけるカウンセリング技法。 行動上の問題により、周囲との関係がこじれている場合に、周囲に理解を促せる。
- 危機介入 困った状況を乗り越えるためにカウンセラーがサポートする。 経済的な困窮などの強いストレス状況を解決する。
薬物療法:症状を軽減する目的で使われる
適応障害に対して、薬物療法が有効かどうかは明らかではありません。しかし、うつ病や不安障害に似た症状がみられることがあるため、抗うつ薬や抗不安薬が使われます。
ただ、適応障害自体を治療するというよりも、あくまでも症状を軽減する対処療法的なものです。仕事に行けないほど症状が強いという場合に用いるなど、生活を送れるようにすることが主な目的だといえます。
適応障害は悪化させないように注意しましょう
適応障害は、ストレスがもとになり起こる病気であり、ストレス状況が軽減されると症状は緩和します。そのため、休養が第一です。しかし、「気分が沈む」「外に出るのが億劫」といった症状が続いている場合は、無理せず専門家に相談してみましょう。
野村紀夫 監修
医療法人 山陽会 ひだまりこころクリニック 理事長 / 名古屋大学医学部卒業
保有資格 / 精神保健指定医、日本精神神経学会 専門医、日本精神神経学会 指導医、認知症サポート医など
所属学会 / 日本精神神経学会、日本心療内科学会、日本うつ病学会、日本認知症学会など
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