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抗精神病薬と向精神薬の違いとは?|精神科の薬について正しく理解するために
2025.07.092025.07.10
抑うつ、うつ病、お薬、双極性障害・躁うつ病、統合失調症
抗精神病薬と向精神薬の違いとは?
「抗精神病薬と向精神薬って、どう違うのですか?」
精神科や心療内科の外来で、患者さんやご家族からしばしば聞かれる質問のひとつです。
精神に作用する薬は、その名前や分類が複雑で、混乱を招きやすいものです。この記事では、「抗精神病薬」と「向精神薬」という2つの言葉の違いを中心に、精神科領域で使われる薬の基本的な枠組みについて丁寧に解説します。
「向精神薬」とは?広い意味を持つ総称
まず最初におさえておきたいのは、向精神薬(こうせいしんやく)という言葉の意味です。これは、精神に作用するすべての薬の総称であり、医学的・薬理学的に広いカテゴリを指しています。
たとえば、以下のような薬はすべて「向精神薬」に含まれます。
- 抗うつ薬(うつ病、パニック障害などに使われる)
- 抗不安薬(不安や緊張をやわらげる)
- 睡眠薬(不眠症の治療に使用)
- 気分安定薬(双極性障害の気分の波を安定させる)
- ADHD治療薬(注意欠如・多動症の治療)
- 抗精神病薬(幻覚や妄想、興奮状態などに用いる)
つまり、「向精神薬」とは、精神科や心療内科で使われる薬の“総称”であり、その中にさまざまな薬が含まれているのです。
「抗精神病薬」とは?特定の症状に対応する薬
次に、「抗精神病薬(こうせいしんびょうやく)」について見てみましょう。
これは、「向精神薬」という大きな分類の中のひとつのカテゴリにあたります。具体的には、以下のような精神症状に対して使用されます。
- 幻覚(実際には存在しない声が聞こえる、ものが見えるなど)
- 妄想(根拠のない確信、被害妄想や誇大妄想など)
- 思考の混乱やまとまりのない発言
- 興奮、暴力、衝動性のコントロール困難
- 重度の不安や焦燥
- 双極性障害の躁状態
代表的な疾患としては、統合失調症、双極性障害(特に躁状態)、一部のうつ病、重度の強迫性障害、自閉スペクトラム症の易刺激性などがあげられます。
▶ 具体的な薬の例
- リスペリドン
- オランザピン
- クエチアピン
- アリピプラゾール
- クロザピン
など
これらの薬は主に脳内の神経伝達物質であるドーパミンの働きを調整することで、症状を緩和します。
つまり、両者の関係性はこうなる
ここまでの説明をまとめると、両者の関係は次のようになります。
- 向精神薬:精神に作用する薬の総称(抗うつ薬、抗不安薬、抗精神病薬などを含む)
- 抗精神病薬:向精神薬の中の一つ。特定の重い症状(幻覚・妄想・思考障害など)に対応
つまり、抗精神病薬は「向精神薬の一部」ということです。
「抗精神病薬」という名前が不安を招くことも
「抗精神病薬」という名前を聞いて、「重い病気なのではないか」と不安になる方も少なくありません。実際には、用量や使い方によって、幅広い場面で活用される薬です。
たとえば、
このように、抗精神病薬は「統合失調症専用」ではありません。症状ベースで柔軟に使われる薬であり、必要な場合に、必要な量だけ用いるのが現代の精神科治療です。
精神科で処方される薬の役割や分類について
精神科で処方される薬は、その名前だけを聞くと不安になってしまうことがあります。しかし、「抗精神病薬」と「向精神薬」は、名称としての範囲が違うだけであり、それぞれの薬は適切な症状に対して安全に使用されるべきものです。
治療に対して不安があるときは、「この薬は何の症状を和らげるためのものですか?」と、ぜひ医師に確認してみてください。薬の名前ではなく、「その薬がどんな目的で処方されているか」を知ることが、納得できる治療の第一歩になるはずです。
野村紀夫 監修
医療法人 山陽会 ひだまりこころクリニック 理事長 / 名古屋大学医学部卒業
保有資格 / 精神保健指定医、日本精神神経学会 専門医、日本精神神経学会 指導医、認知症サポート医など
所属学会 / 日本精神神経学会、日本心療内科学会、日本うつ病学会、日本認知症学会など
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