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子どもの不安症に向き合うために

2025.09.252025.09.25

全般性不安障害、不安障害・不安症、社交不安障害

子どもの不安症、「分離不安症・全般性不安障害・社交不安障害」を理解する

はじめに

不安は、危険を察知し身を守るために誰もが持っている自然な感情です。しかし、その不安が強すぎたり長く続いたりすると、子どもの成長や日常生活に大きな影響を与えることがあります。こうした状態を「不安症」と呼びます。

子どもの不安症は決して珍しいものではなく、世界的な疫学研究では子どもや青年の約10~20%が不安症の症状を経験すると報告されています。とはいえ、不安を感じたからといってすぐに「不安症」と診断されるわけではありません。診断には一定の基準や持続期間が必要で、子どもの場合は少なくとも4週間以上症状が続くことが条件とされています。

この記事では、子どもの不安症のなかでも特に多い分離不安症・全般性不安障害社交不安障害について解説し、原因や予後、治療方法、そして家庭でできる支援についても紹介します。

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子どもの不安症とは?

「不安症(anxiety disorder)」とは、特定の出来事や状況に対して、実際の危険性と比べて過剰な恐怖や心配を感じ、そのために生活や学習、人間関係に支障をきたす精神疾患の総称です。

子どもの場合は、成長に伴う「一時的な不安」との区別が重要です。たとえば、2歳前後に母親から離れることを嫌がる「分離不安」は正常な発達段階でよく見られます。しかし、学齢期になっても過度の不安が続き、登校や友人との交流ができない場合には「分離不安症」と診断される可能性があります。

子どもの不安症では、以下の3つが特に多く、相互に重なり合うことも少なくありません。

研究によれば、いずれか1つを持つ子どもの約6割が他の不安症を併発し、3割は3つすべてを抱えるとされています。そのため診断や治療では、包括的に評価することが重要です。

分離不安症

特徴

「分離不安症(separation anxiety disorder)」は、親や養育者と離れることに対して年齢相応を超えた強い不安を感じる状態です。

通常の発達過程では、生後8か月ごろから「人見知り」や「分離不安」が見られ、1歳半~2歳でピークを迎えます。多くは2歳半頃には落ち着きます。しかし、小学校に入学してもなお「親がいないと大事件が起こるのでは」と過剰に恐れる場合は、分離不安症を疑います。

よくみられる症状

  • 「親が事故に遭って戻ってこないかも」と強く心配する
  • ひとりで登校できない、友だちの家に泊まれない
  • 分離場面で泣き叫ぶ、かんしゃくを起こす
  • 腹痛や頭痛を訴えて学校を休みたがる

子どもが抱える恐怖

分離不安症の子どもは、単なる「さみしがり」ではありません。頭の中で「自分が誘拐されるかも」「親が突然死んでしまうかも」といった強い不安イメージを抱き、それが現実のように感じられるのです。

全般性不安障害

特徴

全般性不安障害(generalized anxiety disorder:GAD)」は、日常生活のあらゆることに対して制御しにくい不安が長期間続く状態を指します。

大人の場合は「仕事がうまくいかないのでは」「家族に病気が起こるのでは」といった心配が代表的ですが、子どもでは「宿題を間違える」「友達に嫌われる」「発表で失敗する」といった学習や人間関係に関する不安が多く見られます。

典型的な症状

心理的な不安だけでなく、身体的な症状も現れます。

  • 落ち着かない、集中できない
  • 不眠、疲労感、イライラ
  • 頻脈、息切れ、めまい、吐き気
  • 下痢や腹痛など自律神経症状

こうした症状が続くことで、学業の遅れや人間関係の悪化を招き、自己肯定感の低下につながる危険性があります。

社交不安障害

特徴

社交不安障害(social anxiety disorder)」は、他人から注目されたり評価されたりする場面に対して、極端な恐怖や緊張を抱く状態です。

子どもは恥ずかしがり屋に見えるかもしれませんが、その背後には「笑われる」「失敗する」「恥をかく」といった強い恐怖が潜んでいます。

よくあるサイン

  • 授業で指名されると声が出ない
  • 発表や人前で泣き出す、動けなくなる
  • 学校行事や集会を避ける
  • 当日になると腹痛や頭痛を訴える

社交不安障害を「性格の問題」と誤解されることも多いですが、適切な治療を行わないと不登校や孤立、うつ病のリスクにつながります。

子どもの不安症の原因

子どもの不安症には、複数の要因が重なり合って関与します。

遺伝・家庭環境

  • 親に不安症やうつ病の既往があると、子どもも発症しやすい傾向がある
  • 養育者が過度に心配性だと、子どもも不安を学習しやすい

養育スタイル

「失敗したら危ないからやめなさい」「ちゃんとできる?」といった過干渉や過保護は、子どもの自立心を阻害し、不安を強めることがあります。

ストレスフルな出来事

  • 引越しや転校
  • 親の離婚、家族の死
  • 入院や慢性疾患など

これらの変化は子どもにとって大きなストレスとなり、不安症の引き金になることがあります。

予後(先行き)について

不安症の経過は子どもの年齢や生活環境によって異なります。

  • 発症年齢が低いほど改善しやすい
  • 友達との交流が保たれている子は予後が良い
  • 他の精神疾患(うつ病、ADHDなど)が併存すると改善しにくい

ある研究では、分離不安症の子どもの96%が3年以内に寛解し、多くは1年以内に改善していると報告されています。早期発見と治療が予後を大きく左右します。

治療法

子どもの不安症に対しては、心理的支援と薬物療法の両面から治療が行われます。

認知行動療法(CBT)

不安を引き起こす考え方の癖に気づき、現実的な捉え方を学ぶ方法です。子どもに合わせたプログラムでは、遊びやロールプレイを取り入れて進めることもあります。

薬物療法

必要に応じて、SSRI(選択的セロトニン再取り込み阻害薬)が使用されます。副作用や年齢への影響を考慮し、医師の管理下で慎重に行われます。

家族支援

親子で取り組むプログラムや、不安を扱うスキルトレーニングも有効です。家庭での接し方が子どもの改善に直結するため、親へのサポートも重視されます。

家庭でできるサポート

医療機関での治療に加え、日常生活での支えも重要です。

  • 子どもの気持ちを否定せず「怖いんだね」と共感する
  • 小さな成功体験を積み重ねる
  • 親自身が不安を抱え込みすぎない
  • 学校と連携して支援体制を整える

まとめ

子どもの不安症は「性格」や「甘え」ではなく、医学的に理解されている心の病気です。分離不安症・全般性不安障害・社交不安障害はいずれも子どもに多くみられ、互いに併発しやすい特徴があります。

不安症は早期に気づいて支援を始めれば、多くの子どもが回復していきます。もしお子さんの不安が長引き、学校生活や家庭生活に影響を与えていると感じたら、専門家に相談することが大切です。

不安を抱える子どもたちが安心して学び、遊び、成長していけるよう、家庭・学校・医療が一体となってサポートしていきましょう。

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野村紀夫 監修
医療法人 山陽会 ひだまりこころクリニック 理事長 / 名古屋大学医学部卒業
保有資格 / 精神保健指定医、日本精神神経学会 専門医、日本精神神経学会 指導医、認知症サポート医など
所属学会 / 日本精神神経学会、日本心療内科学会、日本うつ病学会、日本認知症学会など

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