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ボンディングとは?人間関係を支える「絆」の心理学(part1)
2025.08.302025.08.31
ボンディング
ボンディングの基本的な意味
「ボンディング(bonding)」とは、他者との間に育まれる強い情緒的なつながりや信頼関係を指す概念です。家族、恋人、友人、あるいは職場の仲間など、あらゆる対人関係において重要な役割を果たし、安心感や精神的安定をもたらします。心理学、発達学、社会学など幅広い分野で研究されており、私たちの幸福度や社会生活の適応に直結するテーマでもあります。
特に親子関係におけるボンディングは、生まれて間もない時期から形成される根源的な絆であり、その後の人間関係の基盤を形づくると考えられています。
親子関係にみるボンディングの形成
親子間のボンディングは、母親(または養育者)と赤ちゃんの間で築かれる感情的な結びつきを指します。これは出生直後から始まり、抱っこや授乳、語りかけなどのスキンシップを通じて育まれます。
安定したボンディングがある場合
子どもは安心感を得て、情緒面・社会性の発達に良い影響を受けやすい。
ボンディングが十分に育たない場合
子どもは不安定な情緒を抱えやすく、対人関係に不安を感じたり、将来の親密な関係の構築に困難を抱えるリスクが高まります。
ボンディングの不足がもたらす傾向
ボンディングの不全は、成長後の人間関係にも影響します。特徴的な傾向には次のようなものがあります。
- 承認欲求の強さ➡小さな出来事でも「嫌われたのでは」と不安を感じやすい。
- 過度な依存➡相手に頼りすぎ、自立が難しい。
- 拒絶への敏感さ➡相手の些細な変化にも過剰に反応してしまう。
- 感情の不安定さ➡愛情を感じると安心するが、不安になると怒りや悲しみに傾きやすい。
こうした背景には、幼少期に「安定しない親の態度(過干渉、無関心、気分による対応の揺れ)」が影響しているケースが多いと指摘されています。
ボンディングの心理学的基盤
1. オキシトシンの役割
「愛情ホルモン」「絆ホルモン」とも呼ばれるオキシトシンは、スキンシップや信頼できる関係性を通じて分泌されます。
その効果には以下が挙げられます。
- 安心感や安定感の促進
- ストレス反応の軽減
- 他者への信頼の強化
- 共感的な行動の促進
2. 愛着理論(Attachment Theory)
精神科医ジョン・ボウルビィの愛着理論は、幼少期の養育者との関係が、その後の人間関係やストレス対処に大きく影響することを示しました。
- 安定した愛着を持つ人:人間関係を築く力が高い
- 不安型・回避型の愛着:対人不安や距離の取り方の問題を抱えやすい
3. ボンディングとアタッチメントの違い
日本助産学会の定義によると、
- ボンディング➡親から子へ向けられる感情的な絆
- アタッチメント➡子から養育者へ向けられる愛着行動
方向性の違いがある点に留意が必要です。ただし日本語の「愛着」という言葉は、両者を混同して使われることも少なくありません。
ボンディングを育むための具体的な要因
1. 身体的接触
抱っこや授乳、マッサージといった肌のふれあいは、オキシトシンの分泌を促進し、安心感を与えます。大人同士でも、ハグや握手が絆を強める働きを持ちます。
2. 応答的な関わり
赤ちゃんの泣きに応える、目を見て話すといった行動は、信頼を深めます。大人同士でも「話をしっかり聞く」「共感を示す」といった態度が同様の効果をもたらします。
3. アイコンタクト
視線を交わすことは、安心や信頼のメッセージを伝える強力な手段です。親子関係だけでなく、恋愛や友人関係にも共通するポイントです。
4. 肯定的な言葉のやりとり
「大丈夫だよ」「ありがとう」などの前向きな言葉は、相手の自己肯定感を高め、関係の安定につながります。
5. 質の高い時間の共有
スマートフォンから離れ、相手と向き合いながら過ごす時間が、関係を深めます。親子なら遊びや読み聞かせ、パートナーなら趣味や旅行などが有効です。
6. 共通の体験や困難の共有
一緒に挑戦や困難を乗り越えることは、強固な絆を生み出します。仕事のプロジェクトやスポーツなどの協働経験は、その典型です。
まとめ(パート1)
本稿では「ボンディングとは何か」という基本的な意味から、親子関係における形成プロセス、心理学的理論、そして絆を育むための具体的要因までを整理しました。
ボンディングは人間関係の基盤であり、家庭、恋愛、職場、あらゆる場面で重要な役割を果たします。
次回のパート2では、ボンディングが十分に形成されない背景や阻害要因、それが及ぼす心理的・社会的影響について詳しく解説します。
参考文献
- 日本助産学会「助産用語特別検討委員会案」
https://www.jyosan.jp/uploads/files/journal/josanyougo.pdf - 精神経誌 2002 第124巻別冊
https://fa.kyorin.co.jp/jspn/guideline/kG108-113_s.pdf
野村紀夫 監修
医療法人 山陽会 ひだまりこころクリニック 理事長 / 名古屋大学医学部卒業
保有資格 / 精神保健指定医、日本精神神経学会 専門医、日本精神神経学会 指導医、認知症サポート医など
所属学会 / 日本精神神経学会、日本心療内科学会、日本うつ病学会、日本認知症学会など
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