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仕事でやる気が出ない…バーンアウト(燃え尽き症候群)の3つの症状と病気との関係について解説
2024.05.212024.05.22
バーンアウト・燃え尽き症候群、適応障害、うつ病、自律神経失調症
目標を失ったとき、意欲が低下した時
バーンアウトとは、目標を失ったときに意欲が低下し、何も手につかなくなる状態をいいます。燃え尽き症候群とも呼ばれ、燃えるように頑張っていた人が、急に炎が消えたように何もできなくなるという状態です。
仕事においては、長時間労働や業務のプレッシャーなどのストレスが重なり、突然やる気を失ってしまうことが多いでしょう。うつ病に似た状態ですが、医学的な病名ではなく、ビジネス場面で起こりやすいメンタルヘルス不調の1つとして知られています。
本記事では、バーンアウトの症状や精神疾患との関係性について解説しますので、仕事の意欲が低下してお困りの方は参考にしてください。
バーンアウト(燃え尽き症候群)の3つの症状
バーンアウトには、どのような症状があるのでしょうか。バーンアウトの程度を図る尺度として、MBI(Maslach Burnout Inventory)があります。MBIに定義されている症状としては、以下の3つです。
- 情緒的消耗感
- 脱人格化
- 個人的達成感の低下
参考:バーンアウト (燃え尽き症候群)―ヒューマンサービス職のストレス―
バーンアウトの症状①:情緒的消耗感
情緒的消耗感とは、気持ちを込めて仕事に向き合った結果、エネルギーが枯渇してしまった状態です。バーンアウトの中核的な症状であり、仕事に情熱を注ぐのが難しくなるという変化を指します。
「頑張ったのに正当に評価されない」「やっても無駄だ」と感じ、やる気を失ってしまうことが特徴です。
特に、対人援助やサービスに関する職種は、自分の感情を抑制しながら働く「感情労働」がストレスとなり、エネルギーが枯渇しやすいでしょう。
【情緒的消耗感の例】
- 1日の仕事が終わると「やっと終わった」と感じることがある
- 身体も気持ちも疲れはてたと思うことがある
- 仕事のために心にゆとりがなくなったと感じることがある
バーンアウトの症状②:脱人格化
情緒的なエネルギーが枯渇した結果、自分を守るためにエネルギーを必要以上に使わないようになります。そして、人間らしさを失ったようなやる気のない状態に陥ることが特徴です。具体的には、周囲への思いやりのない態度や悪口、責任転嫁などがみられるようになります。
【脱人格化の例】
- 自分の仕事がつまらなく思えてしかたのないことがある
- 仕事の結果はどうでもよいと思うことがある
- 今の仕事は、私にとってあまり意味がないと思うことがある
バーンアウトの症状③:個人的達成感の低下
情緒的消耗感や脱人格化がみられるようになると、仕事の質が低下します。対人援助職の場合、支援する人へのサービスの質が落ち、評価が下がってしまうでしょう。そのため、自信を失い、達成感ややりがいを持てなくなるといった悪循環が生じます。
【個人的達成感の例】※個人的達成感が高い場合の例
- 我を忘れるほど仕事を熱中することがある
- 仕事を終えて、今日は気持ちのよい日だったと思うことがある
- 仕事が楽しくて、知らないうちに時間が過ぎることがある
バーンアウト(燃え尽き症候群)に関連する3つの病気
バーンアウトは、医学的な病名ではありません。ストレス状態が慢性化した適応障害や自律神経失調症と診断されることがあります。うつ病とは異なる症状だといえますが、重症化すると長期のうつ病につながる可能性もあり、注意が必要です。
バーンアウトに関連している3つの精神疾患について紹介します。
バーンアウト(燃え尽き症候群)との関連①:適応障害
適応障害とは、ストレスにより生じる心身の反応が強く、不調をきたしている状態です。一時的に強いストレスを受けたときや、ストレス状態が慢性化したときに生じます。抑うつ感や意欲の低下など、うつ病に似た症状がみられますが、発症の原因が明確であるのが適応障害の特徴です。
バーンアウトは、業務負担や裁量範囲、プレッシャーの程度などさまざまな要因で生じますが、原因は分かりやすいでしょう。そのため、適応障害と診断されることが多いといえます。しかし、長期化するとうつ病に発展する可能性もあるため、注意が必要です。
バーンアウト(燃え尽き症候群)との関連②:うつ病
うつ病は、気分の落ち込みを主とする代表的な精神疾患の1つです。適応障害とは異なり、気分の落ち込みのきっかけが明確でないことが多いでしょう。以下のような症状が2週間以上持続する場合、うつ病が疑われます。
- 以前よりも興味が湧かなくなった
- 何をするにも億劫だ
- 悲観的に考えてしまう
- 食欲や体重が減った、もしくは増えた
- 眠れなかったり、眠りが浅く夜中に目が覚めたりする
- 死にたい気持ちがある
やる気が出ない状態に加えて、悲観的な考えや食欲・体重・睡眠の異常などがみられる場合、うつ病が疑われます。バーンアウトが長期化し、うつ病を発症しているケースもあるため、意欲の低下のほかにどのような症状があるのかチェックすることが大切です。
バーンアウト(燃え尽き症候群)との関連③:自律神経失調症
自律神経失調症とは、交感神経と副交感神経のバランスが乱れることで生じる心身の不調のことです。自律神経は、人間の身体の働きをコントロールする役割を果たしています。
ストレスを感じて対処するときには交感神経が、リラックスするときには副交感神経が働くことが特徴です。無理をして働いた場合、休まないといけない状態でも交感神経を働かせて何とか乗り切ろうとします。
すると、常に交感神経が優位な状態となり、仕事を終えて帰宅しても副交感神経が働かず、緊張した状態で眠れなくなるのです。「アクセルとブレーキが壊れた状態」となり、原因の分からない心身の不調をもたらします。
バーンアウトの症状のうち、情緒的消耗感は交感神経が機能せずにやる気を失った状態といえるでしょう。また、脱人格化でイライラする状態は、交感神経が過剰に働いている状態と考えられます。
どんなときにバーンアウトになりやすい?
仕事で生じる健康問題を説明した「仕事の要求度-コントロールモデル」では、「仕事の要求度」がバーンアウトの原因になるとされています。仕事の要求度とは、業務や役割に関する負担や、周囲との競争によるプレッシャーなど仕事をする上で生じるストレスです。
バーンアウトを予防できる方法とは
しかし、仕事の要求度が高くても、「個人の資源」や「仕事の資源」が豊富であるとバーンアウトを予防できるとされます。個人の資源とは、楽観性や自信などのストレス状況に肯定的な対応ができる特性です。環境の資源は業務の裁量性や正当な評価などの目標達成や成長を促し、ストレスを低減させる環境的な要因を指します。
要求度と資源のバランスが重要であり、要求度が過剰になるとバーンアウトに陥る可能性が高まるでしょう。具体的には、以下のような場合はバーンアウトに陥る可能性が高いといえます。
- 仕事の要求度が高すぎる:裁量権がなく、毎日深夜まで働いている
- 仕事の要求度が高く、仕事の資源も十分でない:プレッシャーのかかる仕事をしているのに正当に評価されない
- 仕事の要求度が高く、個人の資源も十分でない:責任ある仕事をやり遂げられる自信がない
バーンアウトの予防や治し方は?
バーンアウトを予防するためには、以下の方法が考えられます。
- 仕事の要求度を下げる
- 仕事の資源を増やす
- 個人の資源を増やす
しかし、仕事の要求度や資源を増やすことは、個人の努力では限界があります。業務量を減らしてもらえなかったり、上司に相談しにくかったりすることもあるでしょう。
そのため、個人の資源を増やすことを中心に考えることがおすすめです。資源を増やすために必要なことは「休息」です。枯渇したエネルギーを取り戻し、もとの状態で働けることを目指します。
休息には、医師の診断書が必要な場合が多いため、精神科や心療内科を受診し、診断を受けることが必要でしょう。
また、バーンアウトに陥った原因を、休息中に振り返っておくことも大切です。例えば、対人援助職を始めとしたサービスを提供する職種では、相手の気持ちに巻き込まれて疲弊することが少なくありません。自分と相手の気持ちに境界をもてるように意識するとよいでしょう。
こういった振り返りは、1人で取り組むことにもエネルギーを使ってしまいます。そのため、家族や友人、医師やカウンセリングを通して、専門家と一緒に考えていくようにすると、精神的な安定につながるでしょう。
バーンアウトはこれまで頑張った証拠
仕事におけるバーンアウトは、気持ちを込めて働きすぎた結果、燃え尽きてしまう状態です。頑張り屋であるほど、無気力で情熱を持てない自分を責めてしまうこともあるかもしれません。しかし、それほど情熱を注いで頑張った成果だとも考えられます。
これまで頑張ってきた自分を認めて、次からはより良い働き方ができるように見直していきましょう。
野村紀夫 監修
医療法人 山陽会 ひだまりこころクリニック 理事長 / 名古屋大学医学部卒業
保有資格 / 精神保健指定医、日本精神神経学会 専門医、日本精神神経学会 指導医、認知症サポート医など
所属学会 / 日本精神神経学会、日本心療内科学会、日本うつ病学会、日本認知症学会など
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