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カタルシス効果とは?心理学的な意味とメリットを分かりやすく解説
2024.05.232024.05.24
カタルシス効果
話すことで得られる感覚・感情とは
自分の気持ちを発散すると、ストレス解消や心身の健康につながります。以下のように、誰かに話したり、感情を出したりすることでポジティブな気持ちになった経験をしたことが一度はあるのではないでしょうか。
- 「悩みを話せてスッキリした」
- 「感動して泣くと前向きな気持ちになれた」
- 「友達に気持ちを吐き出して分かってもらえた」
感情を発散することでスッキリすることを「カタルシス効果」といいます。カタルシス効果は、本来は診察や心理療法などのの場面で生じる治療的なものです。これまでに体験したことがあっても、どのようなプロセスで心が癒されるのか分からない方も多いのではないでしょうか。
本記事では、カタルシス効果の意味やメリットについて分かりやすく説明します。カタルシス効果が起きる理由を理解し、心身の安定に役立てましょう。
カタルシス効果とは?
カタルシス効果とは、過去のつらい体験やそれに関連する不安、恐怖といった感情を自由に表現することで、心の浄化が起こるものです。
非常につらい体験をしているときは、不安や恐怖を感じすぎると対応できなくなるので、感じないようにするといった防衛本能が働きます。そのときに我慢した気持ちを再び体験して、自由に表現することが心の安定につながるのです。
カタルシス効果は、主にカウンセリングや心理療法の中で重視されているものですが、日常生活においてもみられます。例えば、以下のような気持ちを発散してスッキリする体験です。
- 友達に悩みを話してスッキリする
- 映画や本を読んで感動し、涙を流す
- 悲しい音楽を聞いて、歌詞を自分の気持ちに重ねる
- スポーツ観戦をして盛り上がる
- カラオケで精一杯歌って発散する
日常生活では多かれ少なかれ、気持ちをストレートに表現せずに我慢していることが多いでしょう。我慢していた気持ちを吐き出すことで、「スッキリした」「安心できた」というポジティブな気持ちが生まれるのです。
カタルシス効果の2つのメリット
カタルシス効果には、「ストレス解消」と「信頼感の向上」という2つのメリットがあります。
カタルシス効果のメリット①:ストレス解消につながる
抑えていた気持ちを発散することで、ストレス解消につながります。
カタルシス効果を得られる代表的な例には、対話がありますが 抑えていた気持ちを発散する他の方法に「涙を流すこと」もあります。大人になるにつれて、「涙を流すのは恥ずかしいこと」という認識がうまれ、感動してもその気持ちにブレーキをかけてしまうことがあります。
「涙を流すこと」は抑えていた気持ちを一気に吐き出せるため、ストレス解消にもつながるのです。特に、涙を流すことで副交感神経が優位になり、リラックスできることがわかっています。
対話、涙を流すことなどのように、抑えがちな気持ちを発散することで、ストレスの解消につながるといえるでしょう。
カタルシス効果のメリット②:気持ちを共有した相手との信頼感が高まる
内に秘めていた気持ちを共有すると、その相手をより信頼できたり、相手からも信頼されたりすることもメリットの1つです。悩みを打ち明けられた相手は、「大切な話をしてくれた」と信頼できるようになります。自分自身も親身に聞いてくれた経験から相手をもっと信頼できるようになるでしょう。
抑えていた気持ちを分かち合うことで、「1人じゃない」という安心感につながります。そして、心が安定し前向きな気持ちになれるでしょう。
カタルシス効果が逆効果になる2つのケース
カタルシス効果は、抑えていた気持ちを発散しストレスを解消する効果がありますが、どんな気持ちも発散すればよいというわけではありません。時には、気持ちに蓋をしておいた方がよいこともあります。
「怒り」と「過去のトラウマ」の2つに関しては、吐き出すことがかえって逆効果になる場合があるでしょう。
カタルシス効果の逆効果①:怒りに任せて発散する
怒りを発散させると、より攻撃的になって怒りが強まることがあります。海外で行われた実験では、怒りを発散させることはかえって攻撃性を増すことがあるということも示されました(※)。2分間サンドバッグを殴ってもらい、その後の攻撃性の強さを調べたものです。その結果、自分を罵倒した人間の写真を貼ったサンドバッグを殴ったグループが、最も攻撃的になりました。
つまり、怒りの感情を発散することは怒りを増幅させて、かえって攻撃性を強めてしまうのです。「身体を鍛える」「イラストや文章で表現する」というように、怒りのエネルギーを別の形で発散したり、落ち着くまで待つ方がよいでしょう。
※Brad J Bushman(2002)”Does venting anger feed or extinguish the flame? Catharsis, rumination, distraction, anger, and aggressive responding”Brad J Bushman(2002)”Does venting anger feed or extinguish the flame? Catharsis, rumination, distraction, anger, and aggressive responding”
カタルシス効果の逆効果②:過去のトラウマ体験を話す
カタルシス効果は、本来はトラウマ的なつらい体験を語りなおして治療する際に効果を発揮するものです。しかし、思い出すとつらい気持ちに耐えられないほど、苦しい体験をした場合は、話すことで心身のバランスを崩してしまうことがあります。
これは、トラウマ的な体験の性質が関係しているといえるでしょう。トラウマにならないほどの苦しい体験だと、当時の気持ちは少し色あせていて、距離を取って感じられます。しかし、トラウマになるほどの体験は、鮮明に思い出されるので、つらい気持ちになりやすいのです。
「話してもスッキリしない」「かえってしんどくなった」という場合は、傷つきが深い状態なのかもしれません。専門的なスキルをもった治療者と安心して話せる関係の中で、少しずつ話していくことが必要です。
気持ちが晴れないときには専門家に相談を
カタルシス効果は、抑えていた気持ちを発散させることで、前向きな気持ちになれる現象です。
ストレスの緩和や人への信頼感の向上につながる一方で、怒りの発散は攻撃性を高める場合があります。傷が深い体験を話すとかえってつらい気持ちが蘇り、心身のバランスを崩してしまうこともあるでしょう。
気持ちを発散してもスッキリしない場合やしんどさが増してしまうときには、専門的な治療が必要かもしれません。精神科や心療内科を受診し、医師やカウンセラーに相談してみましょう。
野村紀夫 監修
医療法人 山陽会 ひだまりこころクリニック 理事長 / 名古屋大学医学部卒業
保有資格 / 精神保健指定医、日本精神神経学会 専門医、日本精神神経学会 指導医、認知症サポート医など
所属学会 / 日本精神神経学会、日本心療内科学会、日本うつ病学会、日本認知症学会など
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