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聴覚過敏や発達障害にも影響する?カクテルパーティー効果とは?
2024.05.232024.05.25
APD・聴覚情報処理障害、カクテルパーティー効果、大人の発達障害・ADHD
必要な情報を聞き分ける、注意を向けることとは
騒がしい飲食店で友達と会話しているとき、周囲の話し声にとらわれずに友達の話を聞き取れることがあるでしょう。数ある音声の中から、興味のある話に注意を向けられることを「カクテルパーティー効果」といいます。
カクテルパーティー効果は、必要な情報を聞き分ける役割を果たすため、コミュニケーションにおいて重要な要素といえるでしょう。しかし、発達障害の特性を持つ人の中では、カクテルパーティー効果、あるいは適切な情報の取捨と選択がうまくいかせず、聴覚過敏や聞き取りの難しさにつながるケースがあります。
社会生活の面において、聞き取りが難しい状態は、「集中していないからだ」「我慢すれば苦手な音も慣れる」と努力の問題と誤解されることもあるでしょう。努力の問題ではなく、カクテルパーティー効果という認知的な機能が適切に働かないために生じます。
本記事では、カクテルパーティー効果の特徴や具体例とともに、発達障害との関係性を解説します。聞き取りに困っている方は、ぜひ参考にしてください。
カクテルパーティー効果とは?
カクテルパーティー効果とは、複数の人が雑談している環境でも、関心のある会話や言葉、名前などを聞き取れる現象のことです。パーティー会場のように、何人もの声が聞こえてくる状況でみられる現象ということから、カクテルパーティ効果と呼ばれています。
カクテルパーティー効果の具体例
カクテルパーティー効果は、下記のような場面で生じる現象です。正しく話を聞く必要がある場面で起こる身近な現象といえます。
- 騒がしい人混みの中でも、友達との会話を聞き取れる
- クラスメイトの会話で自分の名前が出てきた瞬間話の内容が気になる
- 「20代の方におすすめ」と商品を勧められると話を聞きたくなる
カクテルパーティー効果の実証実験
カクテルパーティー効果を提唱したイギリスの認知心理学者であるコリン・チェリーが行った両耳分離聴実験が有名です。実験では、次の2つの手続きが行われました。
- 被験者に、左右の耳でそれぞれ違う音を聞いてもらい、片方の耳だけに注意を向けるように指示した
- 注意を向けていなかった方向から、被験者の名前を流す
実験2の結果、名前が聞こえた方向に注意が移り、しっかりと聞き取れていたのです。この結果から、自分の関心がある音声情報を無意識的に選択していると言うことがわかります。そして、関心がない情報は聞き流していることが実証されたのです。
カクテルパーティー効果の原因とメカニズム
カクテルパーティー効果が生じるのは、脳の処理をパンクさせないためです。私たちは耳から多くの音声を受け取っていますが、全てを情報として認識すると、脳の処理が追い付かなくなります。必要な情報だけを瞬時に取捨選択し、不要な情報は処理しないようにしているのです。
視覚にもカクテルパーティー効果が起きることがある
必要な情報だけを瞬時に取捨選択するプロセスを「選択的注意」と呼びます。カクテルパーティー効果は、選択的注意のうち聴覚にみられる現象です。視覚にも「カラーバス効果」という選択的注意が働くことがあり、カクテルパーティー効果と似ています。
カラーバス効果とは、1つの物事を意識すると、関連する情報や対象が目につくようになるという現象です。例えば、「白い鞄が欲しい」と思っていると、白い鞄を持っている人が気になったり、お店で見つけたときに目についたりすることがあるでしょう。
「意識したものをよく見かけるように感じる」というのがカラーバス現象の特徴です。
カクテルパーティー効果が生じないとどうなる?
カクテルパーティー効果が生じる程度には個人差があります。中には、適切に生じずにコミュニケーションに支障をきたすケースもみられるでしょう。
カクテルパーティー効果が弱い場合に起こる問題としては、「聴覚過敏」や「聴覚情報処理障害」があります。
聴覚過敏:苦手な音に慣れず圧倒されてしまう
発達障害の特徴がみられる場合、カクテルパーティー効果、あるいは適切な情報の取捨と選択が生じにくく、聴覚過敏が生じる場合があります。聴覚過敏とは、「音が耳に突き刺さるように感じる」「頭の中で苦手な音が反響する」などと、音に対して過敏に反応してしまう状態です。
カクテルパーティー効果が働かないと、不必要な雑音と必要な音声を区別しないまま聞き続けてしまいます。雑音を適切に抑制できないことが聴覚過敏の原因になるのです。
聴覚過敏は理解を得られにくい特徴であり、「苦手な音でも聞き続けていれば慣れるよ」と言われることもあります。しかし、雑音をシャットアウトする機能がうまく働いていないため、聞き続けても慣れにくいのです。
聴覚過敏は、カクテルパーティー効果との関係性を理解しておくと分かりやすいといえます。
聴覚情報処理障害(APD):必要な情報を聞き分けられない
聴覚情報処理障害(APD)とは、聴力に問題がみられないにもかかわらず、聞き取りが難しい障害です。APDの原因にも、カクテルパーティー効果が影響していると考えられます。
カクテルパーティー効果、あるいは適切な情報の取捨と選択が働かないと、情報が必要かどうかを区別する機能が働きません。そのため、音声としては聞こえていても、必要な情報を聞き分けられないことが起きやすいでしょう。そして、「聞いていないようにみえる」と誤解されてしまいます。
例えば、上司から説明を受けているのに、周りの話し声が気になって、重要な説明を聞き漏らすということが起きます。「上司が説明しているから重要だ」と認識していても、うまく注意を向けられないのです。
聞き取りが難しいのはカクテルパーティー効果が関係しているかもしれない
誰かと過ごす環境の中では、さまざまな音声が聞こえてきますが、全てを認識して処理しているわけではありません。その負担を減らすための機能として、適切な情報の取捨と選択があり、「カクテルパーティー効果」という表現があります。
しかし、発達障害の特性があるとうまく機能しないことがあります。
機能がうまく働いていない状態なので、決して甘えや努力が足りないというわけではありません。聞き取りの問題や聴覚過敏があり、困っているという方は、精神科や心療内科を受診し、専門家の力を借りることも1つの方法です。ぜひお気軽にご相談ください。
野村紀夫 監修
医療法人 山陽会 ひだまりこころクリニック 理事長 / 名古屋大学医学部卒業
保有資格 / 精神保健指定医、日本精神神経学会 専門医、日本精神神経学会 指導医、認知症サポート医など
所属学会 / 日本精神神経学会、日本心療内科学会、日本うつ病学会、日本認知症学会など
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