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繊細で生きづらい”のは、脳の感受性と関係している?
2025.04.212025.04.21
HSP、大人の発達障害・ADHD
“繊細で生きづらい”のは、脳の感受性と関係している?
- ちょっとしたひと言に傷ついてしまう。
- 人混みに行くだけで、ぐったりと疲れる。
- 他人の機嫌に敏感で、空気を読みすぎてしまう。
こうした“繊細さ”を抱える人の中には、「どうして自分だけ、こんなに生きづらいんだろう」と感じている方も少なくありません。けれどそれは、単なる「気にしすぎ」や「性格の問題」ではなく、脳の感受性の高さという、生まれ持った特性が関係している可能性があります。
「生きづらい」と感じやすい人の特徴とは?
まず、「繊細で生きづらい」と感じる方には、共通する傾向があります。
- 周囲の感情や空気に敏感
- 刺激に圧倒されやすい(音、光、匂いなど)
- 小さな変化にもすぐ気づく
- 物事を深く考え込みやすい
- 他人の期待や評価に過敏になりがち
- 人との距離感に悩みやすい
こうした特徴に心当たりがある方は、HSP(Highly Sensitive Person)と呼ばれる気質に当てはまるかもしれません。
HSPは「病気」ではなく「特性」
HSPは医学的な診断名ではありません。1990年代にアメリカの心理学者エレイン・アーロン博士によって提唱された概念で、「人よりも感受性が高く、刺激を受けやすい生まれ持った気質」です。
人口の約15~20%がHSPに該当するとされ、決して珍しいものではありません。
重要なのは、HSPは“繊細すぎる性格”ではなく、脳の処理の仕方の違いによって生まれる「感じ方の傾向」だという点です。
脳の「感受性」が高いとどうなる?
HSP傾向のある人は、外からの情報(音・光・人の表情・感情など)を、脳が深く処理しやすいという特性があります。
たとえば、以下のような脳の反応が見られることが研究で分かっています
- 視覚や聴覚の刺激に対して、脳が過剰に反応する
- 他者の表情や感情に関わる脳領域(島皮質など)が活発に働く
- 共感に関わる神経回路が強く働く
つまり、同じ出来事でも、脳の処理量が多いために疲れやすくなるのです。
これにより、他の人が「気にしない」ことも、HSPの方には「頭から離れない」「どっと疲れる」原因になってしまうのです。
感受性が高いことで、実は「良い面」も多い
「繊細さ」は一見するとデメリットに感じやすいものですが、実は長所としての側面も多く持っています。
- 細やかな気配りができる
- 感情や空気の変化にいち早く気づける
- 深く物事を考える力がある
- 芸術や音楽などに強い感性を持っている
- 他者への共感力が高い
しかし、こうした特性も、刺激が多すぎる環境にいると負担が大きくなってしまいます。HSPの人が「生きづらい」と感じやすいのは、こうした特性が現代社会のスピードや人間関係の複雑さとミスマッチを起こしているからともいえます。
「過敏=悪いこと」ではない
社会の中では「鈍感なほうが楽に生きられる」と思われがちですが、それは一面的な価値観にすぎません。
感受性の高い人は、情報を深く、立体的にとらえる能力に長けています。それゆえに、疲れやすさやストレスの蓄積があるだけであって、決して「欠点」ではありません。
問題は、そうした感受性が“自分のコントロールを超えている”ときです。心のエネルギーが消耗しきってしまう前に、適切なケアが必要になります。
こんな状態が続くときは、要注意
以下のような症状が続く場合、HSPの特性だけでなく、心の疲労やうつ状態・うつ病・発達障害などが重なっている可能性があります。
- 気を遣いすぎて、人と会うだけでぐったりする
- 自分を責める思考が止まらない
- 「消えてしまいたい」と思う瞬間がある
- 趣味や楽しみが心に響かない
- 朝起きられない、日中も眠い
- 小さな音や光に過剰に反応してつらい
HSPは診断名ではないため、症状が悪化していても「これって性格のせいだよね」と思い込みやすいのが落とし穴です。
専門機関での相談もひとつの選択肢
「繊細でしんどい。でも、これって病気ではないし…」と思うかもしれませんが、感受性の強さが生活に支障をきたしている場合は、立派な相談理由になります。
心療内科や精神科では、HSPの特性と抑うつ状態、発達特性などの関係性を丁寧に見立てながら、今の状態に必要なサポートを提案してもらうことが可能です。
また、診断名にこだわるのではなく、「今のしんどさにどう向き合うか」を一緒に考えていくことができるのも、専門機関のメリットです。
【まとめ】「繊細で生きづらい」の背景には、理由がある
繊細さは、脳の感受性という“体質”に近いものです。だからこそ、単なる性格のせいにして自分を責める必要はありません。
その特性を理解し、無理をしない工夫を取り入れていくことで、「過敏すぎて疲れる日々」から少しずつ距離を置くことができます。
もし日常生活に支障を感じているようであれば、ひとりで抱えずに、専門家の力を借りることも選択肢に入れてみてください。
「生きづらい」は、あなたの弱さではなく、感受性の高さがもたらす“サイン”かもしれません。そのサインに気づき、正しくケアしていくことで、日々の負担を減らしていくことができます。
野村紀夫 監修
医療法人 山陽会 ひだまりこころクリニック 理事長 / 名古屋大学医学部卒業
保有資格 / 精神保健指定医、日本精神神経学会 専門医、日本精神神経学会 指導医、認知症サポート医など
所属学会 / 日本精神神経学会、日本心療内科学会、日本うつ病学会、日本認知症学会など
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