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自分が自分でない気がする…?「離人・現実感喪失症候群」の症状をセルフチェック
2024.05.252024.05.26
離人・現実感喪失症候群
自分が自分でない感覚とは…
- 「自分が自分でない感覚がある…」
- 「世界から切り離されたように現実感がない…」
こういった感覚は、強いストレスを受けたり、睡眠不足が続いたりするときに一時的に生じる反応です。しかし、一時的ではなく慢性的に続いている場合は、「離人・現実感喪失症候群」という病気かもしれません。
本記事では、離人・現実感喪失症候群の診断基準や症状、原因、治し方について解説しています。症状に心当たりがある方は、当てはまるポイントがないかチェックしてみましょう。
離人・現実感喪失症候群とは?
離人・現実感喪失症候群とは、「離人感」と「現実喪失感」という2つの特殊な感覚が生じる精神疾患です。
離人感とは、自分を外から観察しているような、「自分が自分ではない感覚」をいいます。現実喪失感とは、自分が周りの世界から切り離されているような感覚です。2つの感覚が繰り返し起こったり、持続したりすることで、強い違和感を抱いてしまいます。
有病率は、人口の2%程度とされており、男女差はあまりありません。平均発症年齢は16歳であり、子どものころから思春期にかけて生じるケースがほとんどです。
離人感や現実喪失感は、うつ病や不安障害、統合失調症などの他の精神疾患の一症状としてみられることが多く、単独で生じることは多くありません。他の精神症状との関係性を考えながら治療する必要があるといえるでしょう。
離人・現実感喪失症候群の診断基準と症状とは?
離人・現実感喪失症候群の診断基準や症状は、どのようなものがあるのでしょうか。当てはまる症状がないかチェックしてみましょう。
診断基準
国際的な診断基準であるDSM-5(※)では、離人感と現実喪失感は以下のように定義されています。
- 離人感:自らの考え、感情、感覚、身体、または行為について、非現実、離脱、または外部の傍観者であると感じる体験
- 現実感消失:周囲に対して、非現実または離脱の体験(『DSM-5精神疾患の分類と診断の手引』より抜粋)
離人感と現実喪失感が一時的ではなく続く、もしくは繰り返し起こる場合に診断されます。また、症状が起こっても、現実検討能力は保たれていることが多いでしょう。
※アメリカ精神医学会が刊行する精神疾患、精神障害の分類マニュアル
離人・現実感喪失症候群の症状・セルフチェック
離人・現実感喪失症候群は、以下のような症状が代表的です。感覚に異常が生じたり、鈍くなったりすることで、「自分が自分でない感覚」になることが特徴といえます。さらに、現実感が失われて、自分が存在していないかのような感覚にさいなまれることもあるでしょう。
【離人感の一例】
- 自分の身体なのに、自分で動かしていないように感じる
- ロボットのような感覚がある
- 何かに触れても、自分で触れていないような感触がある
- 身体が傷つけられても、他の人の痛みのように感じる
- 慣れ親しんだ場所が初めてみたような場所に感じる
- 好きなことをしていても楽しくない
- 身近な人に親しみの感情が湧かなくなる
【現実喪失感の一例】
- 自分が現実に存在しないような感覚になる
- 見ているものが、イラストや写真を見ているように感じる
- 自分と外の世界の間にベールがかかっているかのように感じる
- 自分が何かを考えているように感じられない
- 自分が話していても、機械が言葉を発音している感覚がある
離人・現実感喪失症候群の原因とは?
離人感や現実喪失感は、明確な原因は判明していませんが、強いストレスに対抗するために生じる反応だといわれています。具体的には、子どものころに経験した虐待や死別体験など、ショックな経験を気持ちを切り離すことで乗り切ってきたゆえに生じるものです。
例えば、親から虐待を受けている子どもは、事実をそのまま受け止めるとつらい気持ちに圧倒されてしまいます。圧倒されないように、「これは現実に起こっていることではない」と無意識的に考えるのです。こういったストレスの対処が他の出来事にも用いられるようになり、離人感や現実喪失感を抱くようになります。
しかし、離人感や現実喪失感のうち、25~50%は軽いストレスにより生じており、原因が分かりにくいこともあるでしょう。
また、脳に作用する薬物を使用した場合でも生じることがわかっています。いずれにしても、離人感や現実喪失感は、脳や心に負担がかかっている場合に起こる症状だといえるでしょう。
離人・現実感喪失症候群の治し方は?
離人感や現実喪失感はどのように治療すればよいのでしょうか。以下の3つの方法が考えられます。
- ストレスマネジメント:ストレスの対処方法を増やす
- 認知行動療法:感覚への過度な集中を緩める
- 薬物療法:うつ病や不安障害などの他の精神疾患の症状を抑える
基本的には、ストレスを受けても気持ちを切り離さずに受け止められるように取り組むことが中心です。うつ病や不安障害などの他の精神疾患の症状として生じている場合は、薬を使ってその治療を行います。
治し方①:ストレスマネジメント
ストレスマネジメントとは、ストレスの受け方の傾向を把握して、適切な対処を取れるように取り組んでいく治療法です。
ストレスの受け方は人によって異なります。例えば、「人間関係がストレスだ」という場合でも、「初対面の人と話せない」「自分の意見を言えずに窮屈」など、ストレスの感じ方は人それぞれです。こういった傾向を記録をつけながら把握していきます。
自分の意見が言えないときは自己表現方法を学ぶというように、原因に合わせて適切な対処を考えることが主な流れです。
ストレスから自分を守る方法として離人感や現実喪失感が生じているため、正しいストレス対処を身につけることが重要といえるでしょう。
治し方②:認知行動療法
認知行動療法とは、ストレスを感じたときの捉え方(認知)やその後の対処(行動)の悪循環を把握し、そのパターンを改善していく治療法です。認知行動療法は、それぞれの精神疾患に対応した治療法が確立されており、離人感や現実喪失感に対する治療も行われます。
認知行動療法では、離人感や現実喪失感に苦しむプロセスを「感覚に対するとらわれ」と捉えるのが特徴です。「世界から切り離されている」という感覚が生じると、「どこかおかしい」と不安が高まります。しかし、「普通にしていればバレないだろう」と思い、何でもないように振る舞ってしまうのです。
他にも、「自分の姿を鏡で見ない」「離人感が起きる場所を避ける」といった回避行動を取ります。こういったプロセスによって、離人感や現実喪失感が定着してしまうのです。
治療においては、離人感や現実喪失感が生じても、回避行動を取らないよう、感覚をそのまま感じられるように取り組みます。
治し方③:薬物療法
離人感や現実喪失感に対しては、強い不安を和らげて、ストレス反応を緩和するというように対症療法的に用いることがあります。ただ、根本的な治療とはならず、ストレスを減らしていくことが最も大切です。
また、うつ病や不安障害、統合失調症などの他の精神疾患が影響している場合は、疾患に応じた薬が用いられます。症状の一部として生じているときには、もとになる精神疾患を治療することで改善が見込めるでしょう。
離人・現実感喪失症候群はストレスから身を守るためのもの
離人感や現実喪失感は、起きている本人にとっては不思議な感覚で日常生活に支障を及ぼすことがあります。しかし、これまでストレスから守るために行ってきた無意識的な対処方法だともいえるでしょう。
そういった感覚に違和感を抱いたということは、ストレス対処方法を見直す時期にきているのかもしれません。ストレスに対する考え方を整理し、より良い方法を探していきましょう。
野村紀夫 監修
医療法人 山陽会 ひだまりこころクリニック 理事長 / 名古屋大学医学部卒業
保有資格 / 精神保健指定医、日本精神神経学会 専門医、日本精神神経学会 指導医、認知症サポート医など
所属学会 / 日本精神神経学会、日本心療内科学会、日本うつ病学会、日本認知症学会など
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