「発達性協調運動症」とは?不器用さの背景にある“見えにくい特性”について名古屋ひだまりこころクリニック名駅エスカ院が心療内科ブログで解説

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「発達性協調運動症」とは?不器用さの背景にある“見えにくい特性”について

2025.07.242025.07.24

発達性協調運動症、自閉症スペクトラム・ASD、アスペルガー症候群、大人の発達障害・ADHD

「発達性協調運動症」とは?不器用さの背景にある“見えにくい特性”

「子どもが極端に不器用だけど、成長すれば治るのだろうか」「職場で作業に時間がかかり、自分の不器用さが足を引っ張っている気がする」…こうした悩みの背景に、「発達性協調運動症(DCD)」という神経発達特性が隠れている可能性があります。

この特性は、いわゆる「不器用さ」を超えて、日常生活や社会活動に実際的な困難をもたらすことがあります。一方で、本人の努力不足と誤解されやすく、気づかれないまま困りごとが長引いてしまうケースも少なくありません。

本記事では、「発達性協調運動症」の基礎知識から、現れやすい症状、周囲のサポート方法まで、臨床的な視点を交えてわかりやすく解説していきます。

発達性協調運動症とは:不器用さに隠れた発達の違い

発達性協調運動症(Developmental Coordination Disorder: DCD)は、知的能力や身体の構造に明確な問題がないにもかかわらず、「体の使い方が不自然」「運動や手先の動きが極端に苦手」といった特徴が見られる神経発達症の一つです。

単なる“運動音痴”との大きな違いは、その不器用さが本人の生活全体に強く影響する点にあります。例えば

  • 日常的な着替えや箸の使用に手間取る
  • 体育やスポーツに大きな苦手意識があり、集団活動になじめない
  • 書字に時間がかかり、学習全体に影響する
  • 大人になると、道具を使う作業やマルチタスク業務に困難が生じやすい

発達性協調運動症は乳幼児期に兆候が現れることが多いものの、年齢が上がってから「どうしても動作がぎこちない」「努力しても上達しない」という悩みとして表面化することもあります。

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主な症状と生活への影響「大きな動きも、細かい動きも苦手」

発達性協調運動症の特徴は、大まかに次の2つに分けられます。

1. 粗大運動(大きな動き)のぎこちなさ

ジャンプやスキップ、ボール遊び、自転車の乗りこなしといった運動が苦手で、体の動きが不自然に見えることがあります。走り方が他の子と違う、バランスを取るのが難しいなどの訴えも多く、「転びやすい」「よく物にぶつかる」といったトラブルにつながることも。

集団での遊びや体育の授業がストレスになり、「運動=苦手」「外遊び=嫌なもの」と記憶されてしまうことも少なくありません。

2. 微細運動(細かい動き)の困難

ボタンをとめる、紐を結ぶ、箸やはさみを使う、文字を書く…これらの細かい作業も発達性協調運動症の人にとっては大きなハードルとなります。書字に関しては、ゆっくりしか書けない、字形が整わない、疲れやすいといった困難が顕著になり、学業面でも不利になる場合があります。

こうした不器用さは周囲に理解されにくく、「だらしない」「努力が足りない」と誤解され、本人の自己肯定感が下がってしまうこともあります。

発達性協調運動症の背景にあるもの「原因と併存の傾向」

発達性協調運動症の正確な原因はまだ十分に解明されていませんが、以下のような要因が影響していると考えられています。

  • 神経系の発達差➡脳内での情報処理や運動の計画・実行に関与する機能がうまく連携していない可能性があります。
  • 遺伝的要素➡家族内に類似の特性が見られるケースもあります。
  • 早産・低出生体重などの出生歴がリスク因子となる場合があります。

また、ADHD(注意欠如・多動症)や限局性学習症(読み書きの困難など)と併存することが多く、運動だけでなく、注意の維持や学習面での困難を抱える方もいます。

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診断の進め方「早期発見と専門的な評価がカギ」

発達性協調運動症の診断には、医師や心理士などによる専門的な評価が必要です。

  • 動作観察・運動テスト➡ジャンプ、バランス、ボール操作、手作業などのスキルを実際に確認
  • 生活への影響の把握➡年齢に見合った日常動作がどの程度行えているか
  • 成育歴の聴取➡乳幼児期からの運動発達や周囲の評価なども重要です

診断は「生活への影響が明確であること」「他の病気による運動障害ではないこと」などを踏まえて慎重に行われます。

発達性協調運動症との向き合い方「治療と生活サポート」

発達性協調運動症には「薬で完治する」といった治療法はありませんが、適切な支援によって生活の困難を大きく和らげることができます。

1. 運動療法・作業療法

理学療法士・作業療法士などによる支援で、運動の基本スキルを身につける訓練が行われます。子どもにとっては遊びの延長のように感じられる工夫がされており、自己肯定感を高める効果も期待されます。

2. 環境調整・支援機器の活用

  • 書字に苦手があればパソコンやタブレットを使用
  • ボタンのない服や滑り止め付きの文房具を活用
  • 体育の代替活動の導入、授業の配慮など

こうした「できる方法」で日常を過ごせる工夫が、本人の安心感や参加意欲につながります。

3. 心理的サポートと家族支援

不器用さがいじめや孤立、自信喪失に直結しやすいため、本人の心のケアも重要です。精神療法や心理療法などのペアレントトレーニングを通じて、家庭でも前向きに支える力を身につけていくことも大切です。

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不器用さの背景に「努力だけでは埋められない違い」があることを知って

発達性協調運動症は、まだ広く知られていない特性ですが、「なぜこんなに苦手なのか」という本人の疑問や、親・教師の戸惑いに答えを与えてくれる概念でもあります。苦手なことがあっても、自分に合った方法を見つけられれば、自信を取り戻し、より良い社会参加も可能になります。

もし、ご自身やお子さんの「不器用さ」が気になっている場合は、医療機関や専門機関での相談を検討してみてください。早めの理解と対応が、日々の暮らしをより安心で豊かなものに変えていく第一歩にも繋がります。

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野村紀夫 監修
医療法人 山陽会 ひだまりこころクリニック 理事長 / 名古屋大学医学部卒業
保有資格 / 精神保健指定医、日本精神神経学会 専門医、日本精神神経学会 指導医、認知症サポート医など
所属学会 / 日本精神神経学会、日本心療内科学会、日本うつ病学会、日本認知症学会など

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