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F30躁病エピソードの診断基準
2024.02.082025.03.29
双極性障害・躁うつ病
F30躁病エピソードの診断基準
有病率が10%と高いうつ病と比べると、躁病は躁うつ病と併せても有病率は0.1~3%ほどしかありません。しかし、躁うつ病のように他の気分障害の診断を行ううえで躁病エピソードの知識は基盤となるので、躁病エピソードの知識は必要です。
この記事では、ICD-10をベースにして躁病エピソードの診断基準を説明します。
F30躁病エピソードの診断基準の概要
躁病は、気分の高揚や、身体的・精神的活動の増大を特徴とする疾患です。典型的な症状としては以下があります。
・気分の高揚
・気力や活動性の亢進
・著しい健康観・心身の好調感
・社交性の増大・過度に馴れ馴れしいコミュニケーション
・多弁
・性的活動の亢進
・浪費
・睡眠欲求の減少
※うつ病の場合は「眠れない」ですが、躁病の場合は「眠くならない」
躁病エピソードの患者さんは活動的で上機嫌といったことが多いですが、過度に偉そうな態度を取ったり、些細なことでイライラしたりすることもあります。軽躁病のレベルであれば仕事や対人関係にトラブルが出るという程度ですが、躁病のレベルになると仕事や対人関係が完全に妨げられるほどになります。
なお、躁病エピソードと診断されるのは初回の躁病のみです。躁病エピソードが2回以上繰り返される場合は双極性感情障害[躁うつ病]と診断されます。これは、躁病エピソードだけを繰り返す患者さんであっても、病前性格や発症年齢、長期予後、家族歴などにおいて、躁病エピソードとうつ病エピソードの両方を示す患者さんと多少なりとも類似性が見られるためです。
F30躁病エピソードの各診断基準
基本的に躁病エピソードは、「F30.0軽躁病」、「F30.1精神病症状を伴わない躁病」、「F30.2精神病症状を伴う躁病」の三段階の重症度のいずれに該当するかという観点から診断されます。
F30.0軽躁病の診断基準
・気分の高揚や活動性の増大などの症状が少なくとも数日間持続する
・気分循環症(F34.0)よりも症状は重く、持続期間も長い
軽躁病の重症度は、気分循環症と躁病との中間です。それぞれの躁状態のイメージは以下のようになります。
・気分循環症の躁状態
活動的になったり、おしゃべりになったりします。躁状態に対する患者さん自身の認識は「調子がよい」というレベルであり、他の人から見た場合も「気分の波がある気まぐれな人」という程度の認識に過ぎません。
・軽躁病の躁状態
色々なアイディアが浮かぶため物事に集中できなくなったり、TPOを考えずにやたらとおしゃべりになったりします。患者さん自身の認識は「絶好調」「自分に問題はない」に留まり、病的とは自覚されません。ただしトラブルを起こすこともあるので、他の人から見ると、「何かおかしい」と異常状態に気付かれることもあります。
・躁病の躁状態
職場の上司に何度も傲慢な言動を取るほどの行動の抑制の欠如・肥大した自尊心が見られたり、会話相手が口を挟めないほどにとにかく話続けたりします。患者さん自身は自分の考えや行動は正しいと思っていますが、他の人からは「明らかにおかしい」と分かります。
以下の点で軽躁病と似た症状を呈する疾患と区別しなければなりません。
・活動性の亢進や落ち着きのなさ…甲状腺機能亢進症や神経性無食欲症
・易刺激性(些細なことでイライラしてしまうこと)…中年後期の激越うつ病(非常に強い不安や落ち着きのなさを特徴とするうつ病)の早期状態
F30.1精神病症状を伴わない躁病の診断基準
・気分の高揚や活動性の増大をはじめとして、以下の症状のいくつかが少なくとも1週間ほど持続する(特に、談話促拍、睡眠欲求の減少、誇大性や過度の楽観主義がよく見られる)
談話促拍(度を超して話したてる)
睡眠欲求の減少
誇大性や過度の楽観主義
活動性の過多
社会的抑制の喪失
著しい転導性の亢進(集中して1つのことを続けることができない)
・仕事や社会的活動がかなり妨げられるほど、症状が重症である
・妄想や幻覚といった精神病症状は伴わない
※目に見えるものが色鮮やかになったり、聴覚が過敏になったりすることはあるが、幻覚のレベルには至らない
F30.2精神病症状を伴う躁病の診断基準
・「F30.1精神病症状を伴わない躁病」よりも重症な臨床像を示す
(例)誇大性や過度の楽観主義ではなく誇大妄想を抱く
談話促拍だけではなく観念奔逸(考えが次々と浮かぶ。重度だと考えの方向性がない)も生じるため、患者さんの話が他者からは理解できない
睡眠欲求がなくなるだけではなく食事や飲水の欲求もなくなり、脱水状態に陥る
・妄想や幻覚といった精神病症状を伴う
誇大妄想ではなく、易刺激性から被害妄想を抱くこともある
妄想や観念奔逸などの統合失調症に典型的な症状が多く見られることから、統合失調症との鑑別診断が必要になります。特に極期に初回の診察を行った場合は、妄想や了解不能な会話から患者さんの話だけでは基盤にある感情障害の部分が分かりにくいです。ただICD-10では、気分と一致しない幻覚や妄想が優勢であるならば、統合失調感情障害(感情障害と統合失調症の両方の症状が同一エピソードで現れる疾患)の診断のほうが適切であるとされています。
ほか、これまでのカテゴリーに該当しないものとして、「F30.8他の躁病エピソード」や「F30.9躁病エピソード、特定不能のもの」があります。
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