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頭痛薬が効かない…薬の飲みすぎで起こる「薬物乱用頭痛」とは?
2024.05.212024.05.21
薬物乱用頭痛、うつ病、強迫性障害
頭痛薬の使用が多い時の「頭痛」症状
「仕事前に頭が痛くなって、頭痛薬を飲んで乗り切った」という経験をした人は多いのではないでしょうか。しかし、「頭痛のたびに薬を飲んでいるけど、効かなくなった」という場合は、「薬物乱用頭痛」かもしれません。
薬物乱用頭痛は、鎮痛薬の飲みすぎで生じる頭痛です。頭痛を和らげるための薬がかえって痛みを強くすることが分かっています。特に、以下のような場合は、薬物乱用頭痛の可能性があるでしょう。
- 「2日に1回は薬を飲んでいるけど、頭痛が治らない」
- 「朝に起きたときから頭が痛い」
- 「あまり痛くなくても予防として薬を飲んでいる」
本記事では、薬物乱用頭痛の症状や診断基準、治療法について解説します。薬が効かない頭痛に悩まされている方の対処法を説明していますので、本記事の内容をぜひ参考にしてください。
薬物乱用頭痛とは?
薬物乱用頭痛は、頭痛を治すために鎮痛薬を何度も飲んだ結果、かえって痛みが強くなったり、薬が効かなくなる状態をいいます。薬が効かなくなるために、飲む量や回数が増え、より痛むという悪循環に陥ってしまうことが特徴です。
主に片頭痛や緊張型頭痛などの頭痛持ちの人に起こりやすく、女性に多く、100人に1~2人の割合でみられます。
また、「頭が痛くなってしまうかもしれない」「頭痛で仕事がはかどらないと困る」と思い、頭痛が起こる前に服用するケースもあるでしょう。そのため、薬の効果が低下するとともに、頭痛に敏感な状態となり、ちょっとした痛みに強く反応するようになるのです。
治療においては、頭痛薬の過剰摂取をやめる必要がありますが、離脱症状が起こる可能性があるため注意が必要です。医師と相談し、薬の調整を行いながら、症状を抑えていくことになります。
薬物乱用頭痛の症状と診断基準は?
薬の飲みすぎで頭痛が起こる薬物乱用頭痛ですが、薬を飲む頻度や痛みの性質など、症状にはどのような特徴があるのでしょうか。国際頭痛分類第3版(ICHD-3)の基準に基づいて解説します。
【症状】頭痛と薬の過剰服用が特徴
薬物乱用頭痛は、緊張型頭痛や片頭痛のような痛みが続きますが、以下のような症状がみられるのが特徴でもあります。
- ほぼ毎日頭痛がある
- 起床時に痛くなる
- 月に10~15日以上頭痛薬を飲んでいる
- 薬を飲んでも効果を感じられない
- 頭痛を予防するために薬を飲むが効果がない
- 頭痛とともに吐き気がある
- イライラして集中力が低下する
【診断基準】頭痛と薬の服用に関する3つの条件を満たすかどうか
薬物乱用頭痛の診断基準は、以下の3つを満たすことが条件とされています。
- A.以前から頭痛疾患をもつ患者において、頭痛は1ヵ月に15日以上存在する
- B.1種類以上の急性期または対症的頭痛治療薬を3ヵ月を超えて定期的に乱用している
- C.ほかに最適なICHD-3の診断がない
参照※日本頭痛学会「頭痛の診療ガイドライン2021」VI薬剤の使用過多による頭痛(薬物乱用頭痛, MOH)など
以前から頭痛持ちで、1ヵ月のうち半分以上頭痛があり、3ヵ月以上の頭痛薬の乱用がある場合に、薬物乱用頭痛とされます。
【乱用の基準】1ヵ月に10日または15日以上
基準Bに関しては、頭痛薬の種類によって、以下のように基準となる日数が決められています。
【1ヵ月に10日以上】
- エルゴタミン
- トリプタン
- オピオイド
- 複合鎮痛薬
【1ヵ月に15日以上】
- アセトアミノフェン
- 非ステロイド性抗炎症薬
- アセチルサリチル酸
薬物乱用頭痛でよくみられるのは、カフェインと鎮痛成分が含まれている市販の複合鎮痛薬の乱用です。カフェインの過剰摂取によっても、薬物乱用頭痛を引き起こす可能性があります。
身近で手に入る市販薬でも、過剰に摂取してしまうと薬物乱用頭痛に苦しむことになるといえるでしょう。
薬物乱用頭痛はどのような原因で起こる?
薬物乱用頭痛は、頭痛薬の過度な摂取により、痛みを感じる神経系が過敏になってしまうことが原因とされています。ちょっとした頭痛でも強い痛みに感じられてしまい、頭痛薬を服用してしまうのです。
また、頭痛薬だけでなく、アルコールやタバコなどの「物質依存傾向」がみられる場合があり、薬に依存しやすい体質は遺伝的な要因も関係しています。
薬物乱用頭痛はどのように治療する?
薬物乱用頭痛の治療方法としては、以下の3つが基本的な方針となります。
- 薬物乱用頭痛を引き起こす薬の服用中止
- 薬の中止後に起こる頭痛への対処
- 頭痛予防薬の服用
予防薬を使いながら、頭痛薬を中止していくことが主な治療法です。薬の中止により1~6ヵ月で約70%が改善するとされており、効果が大きい治療といえるでしょう。
しかし、薬の中止後、1週間程度は中止による痛みが出ることがあり、再び痛み止めに頼りたいと感じることも少なくありません。そのため、治療に取り組む前には、十分に治療の必要性を理解することが大切です。
さらに、4~6年以内に約30%が再発するとされているため、頭痛を自分でコントロールしながら、再発を防止するのが理想といえるでしょう。
そのためには、薬を飲んでいる回数や、痛みの強さなどを記録する「頭痛ダイアリー」をつけることが有効です。頭痛ダイアリーは、薬と頭痛が起こるメカニズムを理解し、痛みをコントロールするために役立ちます。
薬物乱用頭痛と精神疾患の関係とは?
精神疾患があると、薬物乱用頭痛が悪化したり、治りにくかったりすることが分かっています。うつ病を始めとした気分障害が併存していると、治療が進みにくく、治りにくいとも考えられています。他にも、恐怖症や強迫性障害、心気症などの精神疾患があると、治りにくいとされます。
精神疾患の1つの症状として、頭痛薬に対する依存が生じている可能性がありますので、原因となる病気を治療することも必要でしょう。
頭痛薬が止められない背景には、精神的な問題が隠れているかもしれません
薬物乱用頭痛は、頭痛薬の過度な摂取によって引き起こされる頭痛です。痛みを気にして、ついつい薬に頼ってしまうことから起こってしまう状態であり、市販薬によっても生じる身近なものだといえます。
薬物乱用頭痛の多くは、薬を飲まなくなることで改善しますが、ストレスや精神疾患の影響で頭痛が慢性化し、薬に頼らざるを得ない場合もあるかもしれません。そのような場合は、精神科的な治療も必要となりますので、専門家とともに治療に取り組んでいきましょう。
野村紀夫 監修
医療法人 山陽会 ひだまりこころクリニック 理事長 / 名古屋大学医学部卒業
保有資格 / 精神保健指定医、日本精神神経学会 専門医、日本精神神経学会 指導医、認知症サポート医など
所属学会 / 日本精神神経学会、日本心療内科学会、日本うつ病学会、日本認知症学会など
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