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【同調効果とは?】つい人の意見に合わせてしまう心理、危険性について解説
2024.05.172024.05.17
同調効果
つい、人の意見に合わせてしまう。同調効果とは?
自分がしたいことと周りの意見が違うと、つい合わせてしまうことがあります。とくに、仕事のように、上下関係がある場面だと、つい上司の意見に従わないといけないと感じることが多いでしょう。
同調効果は、親和を図る上でも有効ではある
心理学では、自分の意見や行動を他人に合わせることは「同調効果」と呼ばれます。「みんなの意見が正しく、和を乱さないだろう」と、多数派の意見を判断のよりどころとする現象です。
同調効果には良い面ばかりではないことも
同調効果は、組織の中での人間関係を適度に保つ役割がある一方で、間違った判断を助長するといったデメリットもあります。学校や職場では、いじめや少数派の孤立につながる場合もあり、メンタル面の問題にも影響する場合があるのです。
本記事では、同調効果が起こる原因と危険性について解説します。人間関係の中で意見を合わせることにストレスを感じている方は、原因を理解し、適切な対処を取りましょう。
同調効果とは?
同調効果とは、社会心理学の用語であり、無意識的に自分の意見を他人に同調させてしまう現象を指します。
同調効果は、社会心理学者であるソロモン・アッシュが実証したものです。アッシュが行った実験は以下のようなものでした。
- 被験者1人、サクラ7人を実験室に集める
- 線が描かれた2つの図を見せ、同じ長さの線を選ばせる
- サクラは全員不正解の回答をする
上記の図のように、同じ長さの線を選ぶ問題の正解は、「B」が正解です。しかし、7人のサクラが「A」だというと、被験者の75%はサクラと同じように答えました。簡単な問題でも、周囲に同調して事実とは違う判断をしてしまったのです。
集団の中で、同調効果が生まれて意見がまとまってしまうことがある
日常の中でも、自分以外の多数派が同じ意見であると、違う意見を持っていても、関係を壊さないように同調することがあります。しかし、事実と間違った判断であったとしても、組織の中では「正しい判断」とされてしまうことがあるのです。
同調効果は、意見を1つにして結束力を高める効果があるものの、少数派の意見を持ちにくくなりがちだといえます。「偏った判断がなされているのではないか」という視点から、物事を見つめることが大切といえるでしょう。
日常生活で起きる同調効果の例とは?
アッシュが行った実験は、特殊な状況だといえますが、日常的にはどのような場面で同調効果が生じているのでしょうか。職場とプライベートの人間関係における例を紹介します。
職場でみられる同調効果の例
- 周りの同僚や上司がサービス残業をしているので、『自分もしないといけない』と感じる
- 有給休暇の申請をしたいが、『有給を取ってはいけない』という雰囲気がある
- 上司が提案した意見に賛成する
- 異なる意見を持っていても、多数派の意見に賛同してしまう
- 雰囲気を壊すのが嫌で、自分の意見を言えない
プライベートでみられる同調効果
- グループでの食事で、他の人が食べるメニューに合わせてしまう
- 友人の趣味に合わせる
- SNSで発信されている意見が正しいように思えてしまう
同調効果が起きる2つの原因とは?
組織において間違った判断を生むことにもなる同調効果ですが、どのようなメリットがあり生じるのでしょうか。同調効果が生じる原因として、「規範的影響」と「情報的影響」という2つの要因があると考えられています。
【規範的影響】嫌われたくないので同調する
規範的影響とは、自分が属している組織のメンバーから嫌われたくないという思いにより、同調することです。多くの人は、周りから好かれたいと思い、多数派から受け入れられることを望みます。
そのため、本心では多数派の意見に同調していないものの、表面的に同調するということが生じやすいでしょう。
【情報的影響】正しいかどうか分からないので同調する
情報的影響とは、自分の判断が正しいかどうかを他人の意見を参考にして考えることです。人間は正しい判断をしたいと思うものですが、自分の判断に確信が持てないとき、多数派の意見を参考にする傾向があります。
規範的影響とは異なり、情報の拠り所として他人の意見を求めるので、本心から多数派の意見に同調していることが多いでしょう。
同調効果はどういうときに生じやすい?
同調効果は同じ組織に所属しているメンバーの間で生じる現象ですが、どのような条件のもとで起こるのでしょうか。同調効果が生じやすい条件として、以下のような点が挙げられます。
- 組織の人数が3人以上:3人以上で生じ、人数が多いほど同調効果が生じやすい。しかし、5人以上ではほとんど効果の大きさは変わらない。
- 多数派に反対する人がいない:多数派に反対する人が1人でもいると、信憑性が薄れて同調効果が起きにくくなる。
- 集団凝集性※が高い:メンバー同士が組織に所属している意識が高いと、もめ事を避けて同調する傾向が強くなりやすい。
- メンバー間の地位の差が大きい:地位や役職が低い人ほど、立場が上の人の意見に反論できずに同調しやすい。
- メンバー個人の性格:自信がない人や周りと仲良くしたい気持ちが強い人ほど同調しやすい。
※集団凝集性:組織のメンバーをその組織の一員として留まらせるための動機付け。
同調効果で生じる危険性とは?
同調効果は、組織の中での意見をそろえ、意思決定を迅速にしたり、人間関係を円滑に保ったりするメリットがあります。一方で、同調効果が原因で社会的な問題につながり、個人を苦しめる場合もあるのです。
代表的な例は、「いじめ」と「SNSでの炎上」が挙げられます。
問題①:いじめ
いじめでは、いじめの加害者と被害者の他に、行為をはやしたてる「観衆」や何もしない「傍観者」が存在します。「いじめは悪いことだ」と分かっていても、いざその場面を目撃すると、「ターゲットにされたくない」との思いから、加害者に同調してしまうのです。
とくに、傍観者には、「傍観者効果」と呼ばれる心理現象も生じやすいでしょう。傍観者効果とは、助けを必要としている人がいても、責任を引き受けることを避けるものです。例えば、「誰かが助けてくれるだろう」「実はそこまで助けを必要としていないだろう」と合理化してしまいます。
いじめを止めることは、自分がターゲットにされるリスクを伴うものです。責任を負うのは怖いものですが、学校や会社などに訴えて、組織として対応してもらうことが大切でしょう。
問題②:SNSでの炎上
SNSでは、1つの批判的な意見にさまざまな人が同調して、炎上してしまうことがあります。時には、誹謗中傷にまで発展し、被害者に大きな傷を残してしまうケースもある社会的な問題です。
SNSでの批判的意見は、それが多数派かのように受け取られやすいといえます。しかし、SNSは特定の組織というわけではなく、全世界からアクセスできることが特徴です。そのため、批判的意見をコメントしている人たちは、その場では多くいるように見えても、全世界の人数からすると大した割合ではないことがあるでしょう。
実際の顔が見えないやり取りである分、大勢の人が同調しているように錯覚しやすく、批判が正しいと判断しやすいのです。批判的意見ばかりに流されず、肯定的な意見も参照し、中立的に判断していくことが大切といえます。
同調効果は誰にでも起こるもの
同調効果は、組織の人間関係を円滑にするメリットがありますが、誤った判断の助長につながることがあります。いじめやSNSでの炎上といった問題にも影響しており、少数派が孤立しやすい側面があるでしょう。
同調効果は、社会的な組織の中では起こりうる現象であり、個人の問題で生じる割合は少ないとされます。「同調圧力が怖くて自分の意見が言えない…」と悩むこともあるかもしれませんが、自分が悪いのではなく、組織ではありうることなのです。
組織に所属している限り、同調効果は起こるものだと認識しておくと、適度に束縛されない関係性を築けるでしょう。
野村紀夫 監修
医療法人 山陽会 ひだまりこころクリニック 理事長 / 名古屋大学医学部卒業
保有資格 / 精神保健指定医、日本精神神経学会 専門医、日本精神神経学会 指導医、認知症サポート医など
所属学会 / 日本精神神経学会、日本心療内科学会、日本うつ病学会、日本認知症学会など
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