名古屋駅から直結徒歩1分の心療内科,精神科,メンタルクリニックのひだまりこころクリニック名駅エスカ院がフロイトの「構造論」で理解する人の心について解説

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フロイトの「構造論」で理解する人の心とは?

2024.05.242024.05.25

心理面・思考

精神分析学について

フロイトが提唱した「構造論」とは、人の心を3つの領域に分けて説明する理論です。精神療法や心理療法・カウンセリングの基礎にもなっている精神分析学の中核ともいえる概念であり、行動を理解するための参考にもなるでしょう。

本記事では、フロイトが提唱した構造論について、3つの機能の特徴や相互関係について解説します。

人の心を説明する3つの領域

構造論では、人の心の領域は以下の3つに分けられると考えます。3つの領域には、それぞれの役割と機能があり、相互に影響し合っているとされています。「心の中に3人の自分がいる」とイメージすると、わかりやすいかもしれません。

  • イド(エス)
  • 超自我
  • 自我

イド(エス)

イド(エス)は、あらゆる欲求が備わっている本能的な欲求の源がある領域です。食欲や睡眠欲、性欲、承認欲求などあらゆる欲求に沿って判断、行動します。生まれたばかりの赤ちゃんや幼い子どもをイメージするとわかりやすいでしょう。

イド(エス)には、「不快なことを避ける」「リビドーが存在する」といった2つの特徴があります。

特徴①:不快なことを避ける

イド(エス)は、欲求を満足させることを第一に考えるため、自分にとって不快になることを避ける特徴があります。人間がもつ、動物的な本能ともいえるでしょう。不快を避けて快になる体験を求める「快感原則」によって、行動や思考の方向性を決定します。

イド(エス)における機能は、無意識のものであるという特徴もあり、普段は意識されにくいものです。

特徴②:リビドーが存在する

イド(エス)の領域に存在しているのは、無意識的なリビドーであると考えられています。「リビドー」とは、生の欲動ともいわれる性的衝動のことです。フロイトは、リビドーをさまざまな対象に変換することでエネルギーを発揮できると考えました。生きるために必要なエネルギーの源であるといえるでしょう。

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超自我

超自我は、イド(エス)とは逆に、ルールや規範、道徳を重視する領域をいいます。悪い行動をしないように禁止し、社会にうまく適応するためにルールを守る無意識的な心の働きです。例えば、「遅刻をしてはいけない」「嘘をついてはいけない」といった無意識で守っているルールが挙げられます。

イド(エス)が子どもなら、超自我は親をイメージすると分かりやすいでしょう。

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特徴①:親から学習することで形成される

超自我は、親から学習することで形成されます。そのため、親の価値観や理想の影響を強く受けることが多いでしょう。超自我の形成には、「エディプス葛藤」という幼少期の心の葛藤体験が影響していると考えられています。

エディプス葛藤とは、5~6歳ごろに生じる男児が父親に抱く母親への嫉妬の感情にまつわる葛藤です。男児は、母親を自分のものにしたいという欲求を抱きますが、父親という存在があるため、その欲求が叶いません。

初めは父親を競争相手として超えることを目指しますが、やがてそれが難しいと気づくと、父親のようになろうとします。父親が持っている価値基準に沿って成長しようとすることで、超自我のようなルールを取り込んでいくのです。

超自我の領域には、自分でも気づかないうちに、親の影響を受けたマイルールが存在しているといえるでしょう。

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特徴②:罪悪感や後悔として体験される

超自我は、無意識的な心の働きであるため、直接的に体験することは難しいでしょう。意識的には、罪悪感や後悔の念として感情的に体験されます。

例えば、「食事中は静かにしないといけない」というルールを持っていて、おいしい食事が運ばれてきて「おいしそう!」と言ってしまいました。「やってしまった」「失敗した」と感じてしまうのではないでしょうか。

食事の例では、あまり問題になりませんが、無意識的に持っているルールが過度に厳しいものだと、生活に支障をきたすことがあります。具体的には、過度に自分を責めてしまったり、自分の意思を持ちにくかったりするなどの影響があるでしょう。

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自我

自我は、超自我とイド(エス)を調整する働きをする領域です。超自我が強すぎると自由な表現ができず、イド(エス)が強すぎてもルールに従った行動が取れません。両者をうまく調整し、バランスの良い行動をとろうとするのが自我の働きです。

例えば、ダイエット中にお腹が空いたときに、「何か食べたい」と思うのはイド(エス)の働きです。一方、「3日間、間食しなかったから我慢すべき」と考えるのは超自我が働いています。自我は両者の働きを調整しながら、「体を動かしてごまかそう」「少しだけ食べよう」などと、葛藤に対処することが特徴です。

自我は、「自分である」と認識できる領域だといえますが、意識的な働きだけではありません。意識と無意識の2つの領域にわたって働いていると考えられています。

意識的な働き

意識的な自我の働きとしては、「現実機能」があります。自分の置かれている状況を正確に理解し、理性的な判断を行う機能です。イド(エス)の本能的な衝動に巻き込まれず、超自我の過度なルールにも影響を受けすぎないように理論的に考えます。

また、「自分は自分である」という認識を明確にする機能もあります。この機能がうまくいかないと、他人と自分の境界線があいまいになり、さまざまな精神症状を引き起こすことがあるでしょう。

無意識的な働き

無意識的な自我の働きも存在します。「防衛機制」と呼ばれるもので、葛藤が生じたときに、心のバランスを保つために調整するプロセスです。

例えば、「自分は仕事を頑張っているのに、同僚ばかり評価される」という悩みがあるとします。「評価されたい」という欲求が満たされず、残念な気持ちになってしまうでしょう。

そこで、「この会社で評価されても意味がない」「同僚に勝っても何も得られない」と理由付けして納得しようとすることがあります。これが防衛機制の働きで、欲求不満を解消するために、心のバランスを保とうとしているのです。

自我の働きは、意識的に生じるものだけでなく、無意識的にバランスを保とうとする機能も果たしています。

自分の中には無意識的な自分もいる

フロイトの構造論は、イド(エス)、超自我、自我の3つに分類して人の心を理解する考え方です。自分として認識できる領域は自我にあたりますが、無意識的に働いている「自分」も他にも存在します。

欲求やルール、葛藤の対処など、無意識的な働きはさまざまです。普段何気なく行っている行動や言動も、無意識の影響を受けています。そのため、人の行動は意識的な部分だけで起こるものではありません。

自分や他人の行動を見て、理解しにくいものがあったら、無意識的な働きで生じているのではないかと考えることも重要です。構造論に沿って説明した人の心の働きを理解し、人間の理解を深めましょう。

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野村紀夫 監修
医療法人 山陽会 ひだまりこころクリニック 理事長 / 名古屋大学医学部卒業
保有資格 / 精神保健指定医、日本精神神経学会 専門医、日本精神神経学会 指導医、認知症サポート医など
所属学会 / 日本精神神経学会、日本心療内科学会、日本うつ病学会、日本認知症学会など

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