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ジェネラティビティをより深く理解するために

2025.09.142025.09.14

ジェネラティビティ

ジェネラティビティをより深く理解するために

心理学者エリク・エリクソンは、人の一生を8つの発達段階に分け、それぞれの時期に特有の課題があると考えました。その中でも、40歳前後から中年期にかけて現れる中心的なテーマが「ジェネラティビティ(generativity)」です。日本語では「世代性」「次世代への生産性」などと訳され、自己の充実だけではなく、次の世代や社会全体に貢献していく姿勢を意味します。この考え方は、働き方や子育て、地域活動といった日常生活だけでなく、心の健康維持にも深く関わっています。

最新研究が示す発達の変化

  1. 中年期~後期成人期における変動
    フィンランドを対象とした縦断研究では、42歳時点から61歳までの間にジェネラティビティ(他者や社会への貢献意識などを測る尺度)が平均ではやや低下する傾向が見られたものの、個人差が大きいことが示されました。
    つまり、年齢が上がると共に必ずしもジェネラティビティが高まるわけではなく、その人の人生経験、職業・家庭状況、社会参加の度合いなどによって差がある、ということです。
  2. 職場におけるジェネラティビティと健康・幸福との関係
    メタ分析によると、仕事上で後輩育成や社会貢献的な仕事(教育・ボランティア・リーダーシップなど)をする人は、自己効力感やウェルビーイング(精神的健康や満足度)が高い傾向があります。
    また、ジェネラティビティが親であるかどうか、子ども育成の経験があるかどうかも関係しますが、それだけでは決まらず「どのように役割を感じているか」「どのような価値観を持っているか」が大きく影響する、という報告もあります。

測定方法・尺度の多様性

  • Loyola Generativity Scale (LGS) などがよく使われる尺度ですが、年齢・文化・職業・家族構成によって項目の適切さや回答の意味が変わることが指摘されています。
  • 高齢者向けのジェネラティビティ尺度(年齢が上がっても意味を持ちやすい項目を含むもの)を開発・検証した研究もあります。
  • また、「ジェネラティブ関心 (generative concern)」「ジェネラティブ能力 (generative capacity)」「ジェネラティブ実践 (generative action)」のように、モチベーション・能力・実際の行動という三つの側面で見るアプローチがあります。

年齢・文化・性差によるジェネラティビティの違い

  • 年齢では、中年期(約40〜60歳)でピークを迎えるという仮説を支持する研究もあれば、42歳あたりから徐々に減少するという結果を示す研究もあります。
  • 性差(男性/女性)も、ジェネラティビティの表れ方に違いが見られることがありますが、平均レベルでは大きな差がないという研究も多いです。
  • 文化的な違いも重要です。個人主義的な文化と集団主義的な文化では、他者への貢献や「社会に残すもの」に対する期待や価値観が異なるため、ジェネラティビティを表現する形式(子育て、ボランティア、地域活動など)やタイミングが変わるという指摘があります。

ジェネラティビティが高い人の特徴・要因

研究から、ジェネラティビティが高まる・維持される要因として次のようなものが挙げられています:

  • 自己効力感 (Self-efficacy)
    自分が何かを成し遂げられるという感覚が強い人は、他者・社会への貢献に積極的になります。
  • 仕事の裁量性(自由度)と責任感
    職場で与えられる裁量(どのように仕事をするか決める自由)が高く、後輩指導や責任ある役割を担っている人はジェネラティビティを発揮しやすいというデータがあります。
  • 社会参加やボランティア・教える役割
    家庭外での活動(地域活動・教育・ボランティアなど)に関わることがジェネラティビティの実践を促すことがわかっています。
  • 人生経験・育児経験などのライフイベント
    子育て、親となること、介護などの経験がジェネラティビティを高める契機になるケースがあります。

ジェネラティビティの課題・停滞(stagnation)

ジェネラティビティが十分に発揮されない状態(停滞)には、いくつかの要因があります

  • 自己中心的な生き方にとどまる/他者との関わりが減る
  • 社会的・職業的な役割が限定される/期待される役割を果たす機会が少ない
  • ストレス・健康上の問題などで社会・他者への貢献が難しくなる

停滞が強まると、人生の意味感・満足度の低下や孤独感の増大につながるという研究結果もあります。

ジェネラティビティがもたらすメリット

研究で明らかになっている、ジェネラティビティが高い人や強く育てられた人にもたらされる利点は以下の通りです

  • 精神的ウェルビーイングの向上:満足感・幸福感が高く、ストレスを感じにくい。
  • 社会とのつながりの強化:地域や職場での関係性が良好で、助け合いの環境を築きやすい。
  • レガシー(遺産・社会的影響)の意識が持てることで、老年期においてもアイデンティティ(自己統合)の感覚が保たれやすい。

日本における文化的・社会的な応用可能性

ジェネラティビティの概念は欧米での研究が多いですが、日本でも応用が進められています。たとえば

  • 地域活動や自治会、ボランティアなどで地域貢献に参加することで、ジェネラティビティを育てているケースが多い
  • 高齢化社会が進む中で、シニア世代が持つ経験や知識を若い世代に伝える「生きがい」的な役割が注目されており、それがジェネラティビティの現れとなる
  • 職場での後輩育成・OJT、働きながら家庭を育む世代にとって、ジェネラティビティを感じられる役割(指導・育成・教育など)が幸福感・仕事満足度に影響を与える可能性

【まとめ】ジェネラティビティをどう育むか

ジェネラティビティを意識して育てるためには、以下のようなアプローチが考えられます

  • 自分が何に貢献したいか、どんな価値を次世代に残したいかを明確にする
  • 職場や地域で指導や後輩育成・教育的役割を引き受ける
  • ボランティアやコミュニティ活動へ参加する
  • 自己効力感やスキルを磨き、与えられた役割に責任を持つ
  • 価値観や文化的伝統を次世代に伝える取り組みを意図的に行う

参考文献

Generativity at work: A meta-analysis – ScienceDirect

https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC7031015/?utm_source=chatgpt.com

https://midus.wisc.edu/findings/pdfs/1371.pdf?utm_source=chatgpt.com

https://link.springer.com/article/10.1007/s10804-022-09436-1?utm_source=chatgpt.com

https://www.researchgate.net/publication/232560182_Measuring_Generativity_in_Older_Adults_The_Development_of_New_Scales?utm_source=chatgpt.com

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野村紀夫 監修
医療法人 山陽会 ひだまりこころクリニック 理事長 / 名古屋大学医学部卒業
保有資格 / 精神保健指定医、日本精神神経学会 専門医、日本精神神経学会 指導医、認知症サポート医など
所属学会 / 日本精神神経学会、日本心療内科学会、日本うつ病学会、日本認知症学会など

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