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忙しい心に「今ここ」を取り戻す、マインドフルネスという選択
2025.07.142025.07.14
心理面・思考、マインドフルネス
忙しい心に「今ここ」を取り戻す、マインドフルネスという選択
現代社会において、私たちは常に膨大な情報とタスクにさらされ、「立ち止まる時間」を失いがちです。SNSの通知に振り回され、未来への不安や過去の後悔に心を引っ張られ、目の前の一瞬を見失っていませんか?
そんな中、注目されているのがマインドフルネスという概念です。これは単なる「リラックス法」ではなく、心のパフォーマンスを整える実践的スキルとして、ビジネスから医療、教育まで幅広い領域で取り入れられています。
マインドフルネスとは何か?
マインドフルネスとは、「今、この瞬間の経験に、価値判断を加えずに注意を向け続ける」心の状態を指します。仏教の瞑想にルーツを持ちながら、近年では神経科学や心理学の研究により、科学的な裏付けのある実践法として再定義されています。
心理学者ジョン・カバット・ジン氏は、マインドフルネスをストレス低減法(MBSR)の中核に据え、医療現場での活用を拡大。GoogleやIntelなど、世界的な企業でも社員研修に組み込まれ、「注意力とレジリエンス(回復力)を高める技法」として評価されています。
「マインドフルネスの効用」科学が示す7つの恩恵
- ストレスの軽減
扁桃体(不安・恐怖の中枢)の過活動が抑制され、自律神経が整いやすくなります。 - 集中力・作業効率の向上
前頭前野の活性化により、注意の持続力や思考の柔軟性が高まります。 - 感情のセルフマネジメント
衝動的な反応が抑えられ、怒りや悲しみへの過剰反応が和らぎます。 - 睡眠の質の改善
就寝前の実践により、交感神経の興奮を鎮め、入眠しやすくなります。 - 幸福感・自己受容感の向上
「今ここ」に集中することで、比較や自己否定から距離を置けるようになります。 - 人間関係の改善
他者との関係でも「聴く力」や共感性が高まり、対人ストレスが減少します。 - デジタル疲労の緩和
過剰なスクリーンタイムによる疲弊から回復し、情報過多による“脳の騒音”を静める効果があります。
実践例:マインドフルネスの5つのアプローチ
① 呼吸瞑想(ブリージング・マインドフルネス)
呼吸に意識を向ける基本的な方法。「吸っている」「吐いている」と心の中でラベリングすることで、思考の流れを遮断し、現在に意識を集中します。
- 目を閉じ、背筋を伸ばして座る
- 自然な呼吸のリズムに注意を向ける
- 雑念が浮かんだら「今、気づいた」と自覚し、呼吸に戻る
② 食べる瞑想(マインドフル・イーティング)
食事中に五感を研ぎ澄ませ、「食べる行為」そのものに意識を集中する実践です。ダイエット支援や摂食障害治療にも応用されています。
- 食材の色、香り、質感に注意を向ける
- 一口ごとに味や歯ごたえを丁寧に味わう
- テレビやスマホはオフ。静かな環境で行う
③ 歩行瞑想(マインドフル・ウォーキング)
ゆっくりと歩きながら、足の感覚、呼吸、周囲の景色に意識を向ける実践です。
- 通勤や散歩中に取り入れる
- 一歩ごとに「足が地面に触れる感覚」を意識する
- 呼吸と歩調を合わせるようにする
④ ボディスキャン
頭から足先まで、身体の各部位に順に注意を向ける方法です。自律神経の調整や不眠改善にも有効とされています。
- ベッドやマットに横になる
- 呼吸を整えた後、頭→首→肩…と注意を移動
- 緊張や違和感を観察し、無理に変えようとしない
⑤ サウンド・マインドフルネス
周囲に存在する「音」に集中する方法です。騒音も評価せず、ただ「あるがままに聴く」ことが目的です。
- 鳥のさえずり、風の音、遠くの車の音に耳を澄ます
- 音に意味づけせず、感覚として捉える
- 意識が別のことに逸れたら、また音に戻る
マインドフルネスを続けるための工夫
- 1日3分からでOK。習慣化が大切
- 「できない」自分を否定しない。気づいて戻ることが訓練
- タスクの合間や朝晩のルーチンに組み込む
- アプリ(例:Headspace、Insight Timerなど)を活用するのも効果的
補足:マインドフルネスとセルフコンパッションの関係
近年、マインドフルネスと並び注目されているのがセルフ・コンパッション(自分への思いやり)です。失敗や弱さを受け入れ、自分を責めずに向き合うことで、回復力や精神的安定感が育ちます。
マインドフルネスは「今ここ」に気づく力、セルフコンパッションは「自分にやさしくある力」。両者を併用することで、より深い自己調整力が身につくとされています。
まとめ:今この瞬間に立ち戻るために
マインドフルネスは、誰でも実践できる、「心のリセット」「心のリラックス」を促す行動でもあります。日々の生活に少しずつ取り入れていくことで、ストレス耐性が高まり、注意力や感情の安定性も向上していくことが考えられます。
まずは、「3分、呼吸に意識を向ける」ことから。焦らず、評価せず、静かに「今ここ」に立ち戻る時間を、生活の中に取り入れてみてはいかがでしょうか。
【参考文献】
- 厚生労働省『「統合医療」に係る情報発信等推進事業』:瞑想について
https://www.ejim.ncgg.go.jp/pro/overseas/c02/07.html - Jon Kabat-Zinn (1990). Full Catastrophe Living
- Kristin Neff (2011). Self-Compassion: The Proven Power of Being Kind to Yourself
- Tang YY et al. (2007). “Short-term meditation training improves attention and self-regulation.” PNAS.
野村紀夫 監修
医療法人 山陽会 ひだまりこころクリニック 理事長 / 名古屋大学医学部卒業
保有資格 / 精神保健指定医、日本精神神経学会 専門医、日本精神神経学会 指導医、認知症サポート医など
所属学会 / 日本精神神経学会、日本心療内科学会、日本うつ病学会、日本認知症学会など
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