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自己効力感とは?心理学的背景とメンタルヘルスへの応用
2025.09.202025.09.20
心理面・思考
自己効力感とは?心理学的背景とメンタルヘルスへの応用
自己効力感の定義と起源
「自己効力感(self-efficacy)」とは、心理学者アルバート・バンデューラによって提唱された概念で、「自分はこの課題を達成できる」という見通しや信念を意味します。
単なる自信とは異なり、特定の状況や行動に対して、自分がうまくやれるかどうかの主観的な予測を指します。
バンデューラは、社会的認知理論の枠組みの中で、人間の行動が「環境・認知・行動」の相互作用によって成り立つと考えました。その中心的役割を果たすのが自己効力感です。たとえば「上司に自分の意見を伝える」「新しいスキルを学ぶ」といった行動は、自己効力感が高いほど積極的に取り組まれ、低いほど回避されやすい傾向があります。
自己効力感を形成する4つの情報源
バンデューラは自己効力感が主に以下の4つの経験から形成されると述べています。
- 遂行達成(Mastery Experience)
自ら課題を達成した経験は、最も強力に自己効力感を高めます。小さな成功体験の積み重ねが、困難に直面した際の「自分ならできる」という確信につながります。 - 代理経験(Vicarious Experience)
自分と似た人が課題を達成するのを観察することも有効です。特に職場や教育現場では、同僚や先輩の成功例を目にすることが励みとなります。 - 言語的説得(Verbal Persuasion)
周囲からの励ましや評価の言葉も、自己効力感を支える重要な要素です。逆に「どうせできない」といった否定的な言葉は自己効力感を下げてしまいます。 - 生理的・情動的状態(Physiological and Affective States)
不安・緊張・疲労感などの身体反応は「自分はうまくやれないのでは」という認識につながりやすい一方、落ち着いた心身の状態は前向きな挑戦を後押しします。
自己効力感とメンタルヘルス
研究によれば、自己効力感はうつ病や不安障害などの精神的健康とも深く関係しています。
- うつ病では「何をしても無駄だ」という学習性無力感が自己効力感を著しく低下させることが知られています。
- 不安障害では「失敗するかもしれない」という過度な予期不安が行動の抑制につながりますが、自己効力感を高めることで回避行動の改善につながるケースがあります。
- ストレス対処においても、自己効力感が高い人ほど柔軟なコーピング(対処行動)ができるとされています。
こうした知見から、自己効力感を育てることは、単なるパフォーマンス向上にとどまらず、精神的健康を維持・改善する上でも重要な要素と考えられます。
自己効力感を高める具体的な方法
自己効力感は固定的なものではなく、意識的な取り組みで強化することが可能です。以下にいくつかの実践的アプローチを紹介します。
- 小さな成功を積み重ねる
大きな目標をいきなり達成しようとすると挫折しやすいため、段階的な目標を設定し、クリアしていくことが有効です。 - ロールモデルを見つける
同じ環境で努力して成果を出している人を見ることで、「自分にもできるかもしれない」と感じやすくなります。 - 肯定的な言葉を取り入れる
他者からの励ましを受け取るだけでなく、自分自身に対しても「大丈夫」「やってみよう」といったセルフトークを活用することが役立ちます。 - 心身のコンディションを整える
睡眠・運動・食事といった生活習慣を整えることは、心身の安定を保ち、自己効力感を下支えします。
教育・職場・日常生活での応用
- 教育分野では、生徒が達成可能な課題を経験することで学習意欲が高まります。
- 職場では、適切なフィードバックや目標設定が従業員の自己効力感を高め、生産性や離職率の改善につながります。
- 日常生活では、運動習慣や健康管理なども「自分でできる」という感覚が持続行動を支えます。
まとめ
自己効力感は、心理学の基礎的な理論でありながら、教育・ビジネス・医療と幅広い分野で応用されています。小さな成功体験、周囲の支え、身体の安定を積み重ねていくことで、自己効力感は徐々に高めることが可能です。
それは決して一夜にして変わるものではありませんが、日々の生活の中で意識的に取り組むことで、困難に立ち向かう力を支え、心の健康を守る土台となっていきます。
野村紀夫 監修
医療法人 山陽会 ひだまりこころクリニック 理事長 / 名古屋大学医学部卒業
保有資格 / 精神保健指定医、日本精神神経学会 専門医、日本精神神経学会 指導医、認知症サポート医など
所属学会 / 日本精神神経学会、日本心療内科学会、日本うつ病学会、日本認知症学会など
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