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自己調整学習とは?主体的な学びを支える理論と実践
2025.09.212025.09.21
心理面・思考
自己調整学習とは?主体的な学びを支える理論と実践
近年、教育現場やビジネス研修、さらにはリカレント教育(社会人の学び直し)の場面で注目を集めているのが「自己調整学習(Self-Regulated Learning:SRL)」です。従来の「与えられた教材を受動的に学ぶ」学習とは異なり、学習者自身が目標を設定し、進め方を管理し、振り返りながら改善していくプロセスが重視されます。
自己調整学習は、教育心理学の研究を基盤とした概念であり、近年では「AI時代に必要な学び方」としても取り上げられています。本記事では、自己調整学習の定義、段階的プロセス、必要なスキル、具体例、そして教育や日常生活におけるメリットについて詳しく解説していきます。
自己調整学習とは?
自己調整学習とは、学習者が自らの思考・感情・行動を意識的にコントロールしながら学習を進めることを指します。単に「自主学習」や「独学」といった意味ではなく、以下のプロセスを伴うのが特徴です。
- 目標を設定する
- 計画を立て、学習方法を選択する
- 進行状況をモニタリングする
- 振り返りを通して改善点を見出す
このサイクルを繰り返すことで、学習はより効率的かつ持続的になり、知識の定着や応用力の強化につながります。
アメリカの教育心理学者バリー・ジマーマン(Barry Zimmerman)らの研究によれば、自己調整学習ができる学生は成績が安定して高く、自己効力感(self-efficacy:自分はできるという感覚)も強いことが知られています。
自己調整学習の具体的な例
理論だけではイメージしにくいので、日常的に取り入れられる自己調整学習の具体例を挙げます。
- 学習計画をアプリで管理し、進捗を毎日チェックする
- 学びたい内容を「1週間での到達目標」と「半年後の長期目標」に分ける
- 習得内容を自作テストで確認し、正答率を数値化する
- 学習日記をつけ、理解度や感情の動きを振り返る
こうした方法は学校教育だけでなく、資格取得、ビジネススキルの習得、語学学習など幅広い場面で応用可能です。
自己調整学習を支える3つの段階
自己調整学習は大きく「計画 → 実行 → 振り返り」の3段階に分けられます。それぞれの段階は独立しているわけではなく、互いに影響し合いながらサイクルを形成します。
1. 計画段階
学習を始める前に、目標を明確にし、戦略を決定するステップです。
- 目標設定
「数学を勉強する」という曖昧な目標ではなく、「今週中に二次方程式を解けるようになる」といったSMART(具体的・測定可能・達成可能・関連性・期限付き)の原則に基づいた目標が有効です。 - 動機づけ
「達成したらどう役立つのか」を自覚することが継続のカギです。小さな成功体験を積み重ねることで「やればできる」という感覚が育まれます。 - 戦略選択
参考書やアプリ、マインドマップ、記憶術など、自分に合った学習法を組み合わせて準備します。
2. 実行段階
計画に沿って学習を進める段階で、自己管理能力が問われます。
- 自己監視
進捗を可視化することが重要です。学習時間をタイマーで測る、解いた問題数を記録する、自分で他人に説明できるかを試す、などが有効です。 - 集中力の維持
学習環境を整えることが第一歩。さらにポモドーロ・テクニック(25分集中+5分休憩)など、科学的に効果が実証された方法を活用すると効率が上がります。 - 柔軟な修正
理解が進まない場合は教材を変える、解説動画を見るなど柔軟に対応することが求められます。
3. 振り返り段階
学習後の内省を通じて次につなげるプロセスです。
- 自己評価
目標にどの程度到達できたかを数値や具体的な基準で評価します。 - 原因分析
成功の要因や改善点を洗い出します。「計画不足だった」「集中できる時間帯が限られていた」など具体的に分析することがポイントです。 - 調整
分析結果を次回の計画に反映させることで、学習サイクルはより精緻になっていきます。
自己調整学習を繋ぐサイクル
これら3段階は直線的ではなく、循環的に繋がるサイクルを形成します。計画 → 実行 → 振り返り → 次の計画、と繰り返すことで学習は進化し、自己調整が自動化されていきます。最初は負担に感じても、繰り返すうちに自然と「学び方」が身についていきます。
自己調整学習に必要なスキル
自己調整学習を実践するには、以下のスキルが不可欠です。
- メタ認知
「自分はいまどこまで理解できているか」を客観的に捉える力。 - 時間管理
学習の優先順位を整理し、無駄な時間を削ぎ落とすスケジュール管理力。 - 自己効力感
「自分ならできる」という信念。小さな成功の積み重ねが基盤となります。 - 学習戦略の選択と応用
目的に応じた方法を選び、必要に応じて切り替える柔軟性。
自己調整学習のメリット
自己調整学習を習慣化することで、以下のような利点が得られます。
- 効率的な学習
自分に合った方法を選ぶため、学習効率が高まります。 - 問題解決能力の向上
自ら課題を設定し、解決に導く力が育ちます。 - 学習意欲の持続
目標が明確になるため、学び続けるモチベーションが保ちやすくなります。 - 応用力の獲得
獲得した知識を別の場面でも活かせるようになります。 - 自己成長の実感
学習の過程そのものが、自信や自己肯定感を育む要因になります。
教育現場・社会人教育での活用
文部科学省が掲げる「令和の日本型学校教育」でも、個別最適化された学びや協働的な学びを支える基盤として自己調整学習の重要性が強調されています。また、リスキリングやキャリア形成が求められる社会人にとっても、自律的な学習法は不可欠です。
たとえばオンライン講座を受講する場合でも、自己調整学習ができる人は途中で挫折しにくく、習得スピードも早いとされています。
まとめ
自己調整学習は、単なる学習技術ではなく、主体的に学びをコントロールする力そのものです。計画 → 実行 → 振り返りというサイクルを繰り返すことで、学びは持続可能で深いものとなります。
これは学校教育だけでなく、社会人のスキルアップ、資格試験、趣味の学びにも応用できる汎用性の高い方法です。情報があふれる現代において、自分で学び、自分で改善し続ける力はますます重要性を増しています。
参考文献
文部科学省「令和の日本型学校教育における『個別最適な学び』『協働的な学び』についての概念的考察」
https://www.mext.go.jp/content/20201023-mxt_kyoiku01-000010203_2.pdf
野村紀夫 監修
医療法人 山陽会 ひだまりこころクリニック 理事長 / 名古屋大学医学部卒業
保有資格 / 精神保健指定医、日本精神神経学会 専門医、日本精神神経学会 指導医、認知症サポート医など
所属学会 / 日本精神神経学会、日本心療内科学会、日本うつ病学会、日本認知症学会など
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