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「傷つきやすい自分」は甘えなのか?HSPと繊細さの正体、そして自己否定の罠
2025.05.092025.05.10
人間関係、HSP
「傷つきやすい自分」とHSPと繊細さの正体、そして自己否定の罠
- 「なんでこんなに些細なことで傷ついてしまうんだろう」
- 「もっと図太くなれれば、ラクに生きられるのに」
- 「でも、こんな自分は“甘えている”だけかもしれない……」
そんなふうに、自分の“繊細さ”に悩み、自責のループに陥る人は少なくありません。
今回は、「傷つきやすい自分は、果たして弱いのか」「甘えなのか」という問いに、精神科医療と心理学の視点から向き合ってみたいと思います。
「傷つきやすい」は性格の一部か、病気か?
まず大前提として、人の“感じやすさ”や“心の柔らかさ”は、もともと個人差のあるものです。
たとえば
- 人の表情や声のトーンに敏感
- 相手のちょっとした態度の変化で不安になる
- 他人の痛みを自分のことのように感じる
- ひとりの時間がないと疲れてしまう
こうした特徴を持つ人は、近年「HSP(Highly Sensitive Person)」と呼ばれることが増えています。HSPは病気ではなく、神経的な感受性の高い“気質”のひとつとされ、全人口の15~20%が該当すると言われています。
つまり、「傷つきやすさ」は“異常”ではなく、人間のバリエーションの一種なのです。
「甘え」や「弱さ」という誤解
しかし現実には、こうした繊細な気質の人が“わがまま”“メンタルが弱い”“気にしすぎ”といった評価を受けやすいのも事実です。
とくに日本の文化では、
- 「空気を読む」ことが美徳とされる
- 「人に迷惑をかけない」ことが重視される
- 感情をあまり表に出さないことが“大人”とされる
といった背景があるため、自分の傷つきやすさを「未熟さ」や「甘え」と捉えてしまいやすくなっています。
しかし、ここで一つ問い直したいのは、「甘え」という言葉の使い方そのものです。
本来「甘える」とは、「信頼関係のなかで心をゆだねる」ことを意味します。信頼できる相手に頼ったり、弱さを見せたりするのは、人間にとって自然なことのはずです。
「すぐ傷つく自分=だめな自分」という連想は、多くの場合、周囲からの理解不足や、社会的な“強さ信仰”によって生み出された思い込みにすぎません。
傷つきやすい人が抱えがちな心理的背景
繊細な人ほど、以下のような“内的葛藤”を抱えていることが少なくありません。
他人からどう思われるかが常に気になる
過剰な自己評価恐怖(対人不安)とも関係します。「嫌われたくない」「迷惑をかけたくない」と思うあまり、自分の感情よりも相手の機嫌を優先しがちです。
自分の気持ちにブレーキをかけてしまう
「こんなことで傷ついてはいけない」「もっと我慢すべき」と、自分の痛みすら否定してしまう傾向があります。その結果、感情がうまく処理されず、慢性的な自己否定に陥ることがあります。
過去の傷が“今”の感受性を過剰に刺激する
いじめ、家庭内の不和、過去の人間関係のトラウマなどが、「似たようなシチュエーション」で強く反応を引き起こすこともあります。これは脳の“危機管理”システムが働いている証拠であり、弱さとは別物です。
「繊細さ」は生きづらさか? それとも才能か?
「傷つきやすい」という特性は、裏を返せば
- 空気の変化にすばやく気づける
- 他人の気持ちをくみとる力がある
- 美術や音楽などの芸術的な表現に敏感
- 深く物事を考える傾向がある
といった“豊かな感受性”につながっています。
つまり、環境次第でそれは「欠点」ではなく「資質」に変わるのです。
たとえば、共感力が求められる対人援助職やクリエイティブな分野では、HSP的な特性がむしろ強みになります。逆に、「スピード重視」「競争重視」の場では、生きづらさとして感じやすくなるのです。
傷つきやすさをどう扱えばいい?
「変わる」よりも、「扱い方を知る」ことが、繊細さと共に生きるカギです。
1. 無理に「強くなろう」としない
図太さは身につけるものではありません。むしろ、ありのままの反応を責めないことが、心の回復を促します。
2. “安全な場所”を意識的に確保する
誰にも否定されずに感情を出せる環境が、繊細な人には不可欠です。信頼できる人、安心できる場所、そしてときには専門家の力も頼ってください。
3. 自分の感情を「外に出す」練習をする
言語化や表現は、自分の気持ちを整理し、傷を癒す手段になります。日記を書く、信頼できる人に話してみるなどの、小さな一歩が、大きな安心につながります。
「甘えかどうか」ではなく、「困っているかどうか」で考える
「自分は甘えているだけではないか」と悩むとき、それは往々にして真面目さや責任感の裏返しです。
ですが、本当に大切なのは、「甘えかどうか」ではなく、「自分が今、困っているかどうか」「負担が大きくなっていないかどうか」という視点でもあります。繊細さは個性の一つであり、誰にとっても得意・不得意はあります。必要なのは、それを責めることではなく、自分に合った環境や対処法を知ることです。
メンタルクリニックでは、そうした悩みや困りごと、気質との付き合い方を一緒に整理することができます。日常生活に支障が出ていると感じたら、一度相談してみるのも一つの選択肢です。お気軽にご相談くださいませ。
野村紀夫 監修
医療法人 山陽会 ひだまりこころクリニック 理事長 / 名古屋大学医学部卒業
保有資格 / 精神保健指定医、日本精神神経学会 専門医、日本精神神経学会 指導医、認知症サポート医など
所属学会 / 日本精神神経学会、日本心療内科学会、日本うつ病学会、日本認知症学会など
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