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常同運動症とは|繰り返される動作の背景と支援のあり方

2025.07.242025.07.24

常同運動症、自閉症スペクトラム・ASD

「常同運動症とは」繰り返される動作の背景と支援のあり方

同じ動作を繰り返す行為を目にすることがあります。それが単なる「癖」なのか、あるいは医療的な支援が必要な状態なのか…見極めることは簡単ではありません。このような繰り返し動作が習慣化し、日常生活に影響を及ぼす場合、「常同運動症(じょうどううんどうしょう)/Stereotypic Movement Disorder」と呼ばれる状態の可能性があります。

本記事では、常同運動症の概要や関連疾患との違い、診断の考え方、治療や支援のアプローチについて解説します。

常同運動症とは?その定義と特徴

常同運動症は、反復的かつ目的のない運動行動を特徴とする発達症群のひとつです。動作は習慣的で、リズミカル、または一定のパターンに沿って繰り返されることが多く、以下のような行動が報告されています。

  • 手指をひらひらと動かす
  • 頭や体を揺らす
  • 自分の髪を抜く・触る
  • 唇や爪、皮膚を噛む・引っかく
  • 頭を壁にぶつける
  • 同じフレーズを反復する(運動に準じた音声的反復)

これらはしばしば「子ども特有のしぐさ」や「癖」として見過ごされることもあります。特に1歳〜3歳の乳幼児では一時的に出現することがあり、発達に問題がない場合は成長とともに自然に減少することも少なくありません。

しかし、日常生活や社会的活動に支障を来すレベルで反復行動が継続している場合や、自傷的な動作を含む場合には、より専門的な対応が必要となる可能性があります。

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発症年齢と経過の多様性

常同運動症は、乳児期または幼児期に発症することが多く、通常は3歳までに現れます。ただし、症状の持続期間や重症度には個人差が大きく、学齢期や思春期以降も行動が残存するケースもあります。

行動の内容は発達段階や周囲の環境要因によって変化することもあり、子どもの個性や発達背景と切り離して考えることはできません。

そのため、常同運動そのものを「異常」とみなすのではなく、周囲の支援と生活上の適応のしやすさを基準に考えることが重要です。

原因と背景要因:発達・神経・環境の影響

常同運動症の明確な原因は解明されていませんが、以下のような複合的な要因が関与するとされています。

1. 神経発達的な要因

前頭葉や線条体などの脳機能に関連する神経ネットワークが関与している可能性が示唆されています。運動制御や習慣化に関与する脳部位の調整機能の偏りが、反復行動の出現に関与していると考えられます。

2. 自閉スペクトラム症(ASD)との関連

常同的行動は自閉スペクトラム症でよく見られる症状のひとつです。ただし、ASDを有さない児童でも常同運動が見られることもあり、必ずしも診断とは直結しません。

3. 知的能力障害の併存

知的障害のある方では、認知的な柔軟性が制限されることから、常同行動が目立ちやすい傾向があります。

4. 精神的ストレス・感覚刺激への応答

反復行動が、緊張や不安の軽減、感覚的な自己刺激(self-stimulation)として機能していることがあります。環境変化や強いストレスが引き金となり、動作が悪化する場合もあるため、生活環境の調整が治療の重要な要素となります。

チック症や強迫症との鑑別

常同運動症は、チック症や強迫症と行動面で類似する部分がありますが、以下の点で区別されます

疾患 特徴 抑制のしやすさ 行動の目的
常同運動症 リズム的・習慣的動作 集中すれば一時的に抑えられることもある 無目的または自己刺激的
チック症 突発的・速い動作や発声 抑えると一時的に苦痛が高まる 不随意的、内的衝動に基づく
強迫症(OCD) 不安を打ち消すための強迫行動 不安が高まり、やめにくい 思考に基づき、安心感を得るために行動

正確な評価には、発達歴、動作の文脈、持続時間、抑制可能性などを詳細に観察する必要があります。

診断のポイント

常同運動症は、DSM-5(精神疾患の診断と統計マニュアル)において「神経発達症群」に分類されており、以下の条件が診断基準とされています。

  • 反復的な運動行動(例:手の振り、頭部の打ちつけ、咬む、肌をたたく)を持続的に行っている
  • 社会的・学業的・身体的に機能障害をもたらす
  • 行動が他の神経疾患や精神障害によって説明できない

診断には、精神科医や小児神経科医などによる総合的な観察と問診が必要です。また、必要に応じて心理検査や神経学的評価が行われます。

常同運動症への治療と支援アプローチ

1. 行動療法(ハビットリバーサル法など)

行動療法では、本人の常同運動に気づく「気づき訓練」と、それを代替する行動(例:深呼吸、手を握る)を身につけるトレーニングが行われます。反復的行動に「代わりの選択肢」を提示することで、習慣を少しずつ調整していきます。

2. 環境調整とストレスマネジメント

  • 刺激過多な空間の見直し
  • 定期的な休息やスケジュールの可視化
  • 運動・趣味活動の導入
  • 保護者・教師・周囲の理解の促進

日常生活の中で無理なく対応する環境を整えることが、最も基本的な支援になります。

3. 薬物療法(重症例に限定)

常同運動症のみを対象とした薬剤は存在しませんが、自傷行動が顕著なケースでは、抗精神病薬(リスペリドンなど)や抗不安薬が補助的に用いられることがあります。ただし、副作用への慎重な配慮と、行動療法との併用が前提となります。

周囲の理解と支援が鍵になる

常同運動症のある方にとって、周囲の人々の「理解のあるまなざし」は何よりも重要です。否定的な対応や強制的な抑制は、かえって不安やストレスを高め、症状が悪化する要因になります。

  • 行動の背景に「意味」があることを知る
  • 社会的マナーの指導ではなく、本人の快適さを優先する
  • 学校・保育園などと連携し、サポート体制を構築する

繰り返す動作には理由がある

常同運動症は、見た目の特徴から「異質」に捉えられやすい症状ですが、必ずしも異常や病気と決めつける必要はありません。重要なのは、その行動が本人の生活に支障を与えているかどうか、そして周囲が柔軟に支えられる環境や相談先が整っているかという視点でもあります。

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野村紀夫 監修
医療法人 山陽会 ひだまりこころクリニック 理事長 / 名古屋大学医学部卒業
保有資格 / 精神保健指定医、日本精神神経学会 専門医、日本精神神経学会 指導医、認知症サポート医など
所属学会 / 日本精神神経学会、日本心療内科学会、日本うつ病学会、日本認知症学会など

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