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うつ病について
2021.04.132022.06.08
うつ病
今の時代、だれしも、一度は「うつ」という言葉を耳にしたことがあるのではないでしょうか?
今や現代病とも呼ばれるうつ病ですが、これほど世間に浸透したのはここ20年あまりの出来事なのです。2000年代にはいり、なぜうつ病が認知されるようになったのか?そこにはいくつかの背景があるといわれています。
その一つが、うつ病の新薬を開発していた製薬会社が造った、「うつは心の風邪」というキャッチフレーズの広まりです。もともと、日本人は、欧米の人に比べて、心の病で病院を受診したり、薬を飲んだりといったことへの抵抗が大きい傾向にありました。そこへ、このキャッチフレーズが浸透し、うつ病を身近な身体の不調である「風邪」と同等にとらえる風潮がうまれたことで、うつ病への認知が大幅に増えたと考えられています。
また、2000年代に入り、過労うつや過労による自死に対して社会問題として真摯に向き合う報道やニュースが増え、うつ病に関する啓もうが、国や企業で盛んにおこなわれるようになった社会背景も大きいと言われています。
平成25年に厚生労働省が行った調査によると、日本人のうつ病の生涯有病率6.7%。これは、15人に一人が一生に一回はうつ病を経験するということを表しています。知名度だけでなく、罹患率を取ってみても、うつは、わたしたちに最も身近な心の病といって過言でなくなってきているのかもしれません。
今回はそんな、うつの症状や原因、治療法について解説していきます。
うつ病とは?
うつ病は、気分障害の一種で、身体の病気がないのに、意欲の低下や落ち込み、不眠・食欲不振などが現れ、日常生活に支障をきたす病気です。(うつ病、双極性障害、気分変調症などを合せて「気分障害」と呼びます)。
うつ病の症状
・代表的な症状は以下の通りです。
・抑うつ気分…一日中嫌な気分が続き、好きなことをしても気が晴れない。朝起きたときがもっとも辛く、夕方にかけて快方へ向かうことが多い。
・意欲低下…仕事や家事はもちろん、趣味や遊びに対しても意欲がわかない。
・興味喪失…何に対してもまったく興味がわかない。
・食欲低下・体重減少…食欲がなくなり、何を食べても味気なく感じる。結果として、体重が何キロも減ってしまう。
・不眠・早朝覚醒…夜眠れず、早朝に目が覚める。
・精神運動抑制・決断困難…頭がうまく働かず、物事をさっと決められない。
・焦燥…気持ちが落ち着かず、落ち着かない動きを繰り返す。
・微小念慮…物事を悪い方にしか考えられず、自分をだめな人間だと思い込む。
・希死念慮…死にたくなってしまう。
いくつか注釈はありますが、基本的にこのうち5つ以上が2週間以上続くと、うつ病の基準を満たすといわれています。
【うつ病】よく発症する年代
20代~30代と50代~60代が好発年齢(その病気がよく発症する年齢)といわれています。
【うつ病】男女比
うつ病の罹患率は女性の方が1.5倍~2倍ほど高いといわれています。
うつ病の原因
引き金となるストレスに加え、幼少期の環境、性格、身体的要因、薬の影響、社会的要因などが関連して発症に至ると考えられていますが、明確なメカニズムはまだ十分明らかになっていません。
うつ病になりやすい性格
うつになりやすい性格としては、精神科医の下田光造が提唱した「執着性格」、同じくドイツの精神科医テレンバッハが提唱した「メランコリー性格」が有名です。近年では、若い世代に多いとされる「自己愛性格」とうつ病の関係も注目されているので、併せてご紹介します。
・執着性格…几帳面、凝り性、正義感・責任感が強いなどと形容されることの多い、いわゆる「真面目な人」です。自身のキャパシティを超えて仕事や頼まれごとを引き受けてしまい、ストレスをため込んでしまうことがしばしばあります。
・メランコリー性格…「秩序を重んじる」「几帳面で完璧主義」を中核とする性格傾向で、執着性格と近しいものだといわれています。この性格の人は、ストレスを実際のもの以上に大きく感じやすいため、転居や転職、親しい人との別離などのタイミングでうつ状態に陥りやすいと言われています。
・自己愛性格…自己愛性格とは、端的に言うと、強すぎる自己愛ゆえに対人関係に問題を抱えやすい性格です。社会への十分な適応力を持つ執着性格やメランコリー性格の人が、心身ともに疲弊してうつ病になるのとは異なり、そもそもの社会への適応力の乏しさがうつ病の主要因になっているのはないかと考えられています。
うつ病の治療
うつ病の治療には大きく分けて3つの方法がとられます。
① 十分な休養
うつ病の急性期(発症後すぐの症状が重い時期)には、十分な休養が欠かせません。家族や、職場の上司・同僚などの協力も得ながら、身体と心を休めることが治療の第一歩です。
② 薬物療法
うつ病の治療には、必要なお薬を、必要な期間欠かさず取ることが有効であることがこれまでの研究でわかっています。服薬に関する不安や、違和感は医師にその都度相談しながら、身体にあったお薬を無理なく続けていくことが大切です。
③ 精神療法(カウンセリング)
休養とお薬で症状が落ち着いてきたら、通院を通して認知面に働きかける精神療法を受けることも症状の改善と今後の再発予防に有効です。精神療法と言っても特定の技法を指すものではありませんが、医師の診療と通院を通して、不安や嫌だと思う環境や出来事、更には抑うつに関連する感情を取り挙げながら社会生活へ順応できるように働きかける行為が効果的だといわれています。特に認知行動療法とは、考え方のクセを修正することで、ストレスに対する免疫をつけていく療法です。
さまざまなうつ病
最後に、これまで典型的なうつ病について解説してきましたが、近年は、従来の枠組みではとらえきれない“うつ病”が増えてきているのが現状です。いくつかみてみましょう。
※次にあげるものは全て、正式な診断名ではありません。
仮面うつ病
頭痛やめまい、動機などの身体症状を主症状とするうつ病の一種。気分の落ち込みや意欲の低下よりも、身体面の訴えが強調されるため、うつ病と気づかれにくいのが特徴。
新型うつ病
うつ病によく似た症状を呈しながらも、異なる点も多いことから、独立した概念として広く世間に広まっているうつ病の一種。(うつ病の枠組みでとらえるべき問題かどうかは、専門家の間でも意見が分かれている)。常に憂鬱な気分が続く典型的なうつ病とは異なり、本人にとって苦痛の大きい場面でのみ症状があらわれ、楽しいことには普段通り取り組めるのが最大の特徴。先に挙げた自己愛性格との関連も指摘されている。
産後うつ
育児へのプレッシャーや不安などがストレスとなって産後に発症する、うつ症状を表す言葉。何かしらの具体的なストレス因があって発症するストレス反応性抑うつの一種と考えられる。
コロナうつ
コロナ禍の不安定な社会情勢や、ライフスタイルの変化によって引き起こされるうつ症状の総称。何かしらの具体的なストレス因があって発症するストレス反応性抑うつの一種と考えられる。
今回は、身近な心の病うつ病についてご紹介しました。少しでもお役にたてれば幸いです。
参考資料:日本精神神経学会(日本語版用語監修)(2014)『DSM-5精神疾患の診断・統計マニュアル』 医学書院
野村総一郎,樋口輝彦(監修)(2003)『こころの医学事典』講談社
中村義明・繁桝算男・箱田裕司編(2005)『新・心理学の基礎知識』有斐閣ブックス
川上 憲人(2016)『精神疾患の有病率等に関する大規模疫学調査研究:世界精神保健日本調査セカンド 厚生労働科学研究費補助金(障害者対策総合研究事業)』 総合研究報告書
北中淳子(2014)『うつの医療人類学』日本評論社
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