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治療抵抗性うつ病
2021.05.262022.06.08
うつ病
治療抵抗性うつ病
今回は「治療抵抗性うつ病」について解説していきたいと思います。
治療抵抗性うつ病は病名ではありません。とても簡単に言うならば、「通常の治療法で治りにくいうつ病」ということになります。
どのような病態を指すのか、まずは典型的なうつ病とその治療法についてみていきましょう。
概要
うつ病は気分障害の一種で、意欲の低下や落ち込み、不眠・食欲不振などが現れ、日常生活に支障をきたす病気です。通常は、薬物療法が効果的だと言われていますが、適切な服薬を一定期間続けても効果が表れない場合「治療抵抗性うつ病」と捉えられます。
症状
うつ病では、何とも言えない気分の落ち込みと、興味関心や喜び・満足感の喪失がみられます。これら2つの中核症状のいずれかに加え、以下に挙げる症状のうち5つ以上が2週間毎日見られるとうつ状態だといわれます。
- ・食欲の減退または亢進、
- ・不眠または過眠
- ・周囲から見てもわかるほどの焦り苛立ち、または注意力散漫
- ・疲労感や気力の減退
- ・自分には価値がないと感じる無価値観、罪悪感
- ・思考や集中が難しくなり、決断ができない
- ・死について繰り返し考える
つまりうつ病とは、その症状によって、日常生活に支障をきたしている状態と捉えることもできます。
うつ病の治療法
うつ病の治療は、薬物療法と休養・休息を基本とします。精神療法や運動療法などを組み合わせて行われることも一般的です。適切な治療を受ければ、多くの人は3か月~6か月ほどで症状が回復すると言われています。
治療抵抗性うつ病の発症率
適切な治療を一定期間続けても効果が見られないうつ病の患者さんは、3人に1人程度というデータがあります。つまり治療抵抗性うつ病はそれほどめずらしいわけではありません。薬が効かなくても悲観的にならず、適切な原因を探っていくことが大切です。
治療抵抗性うつ病の背景
従来の治療法で効果が得られにくいうつ病は、その診断自体を見直す必要がある場合も多くあります。例えば、うつ病と躁病が現れる双極性障害の患者さんに対する抗うつ薬の処方は効果が表れにくいばかりか、症状が悪化してしまうことも少なくありません。うつ病と双極性障害は、経験を積んだ医師でも鑑別が難しいと言われます。
なぜなら、双極性障害においては、患者さんが躁の症状を病気と自分で捉えることが難しく気分が良い時と感じていることも多いために、うつ病の症状のみが医師に伝えられることが多いからです。特に躁の症状が軽度である双極性障害Ⅱ型では注意が必要です。こうした背景もあり、治療抵抗性うつ病の治療においては、患者さんの普段をよく知る家族と一緒に診察を受けることも大切な場合があります。
他にも、純粋なうつ病と間違われやすい疾患・状態には、身体的な疾患(認知症など)を原因とするうつ状態や、男性更年期障害、不安症やパーソナリティ障害を併存したうつ病などがあると言われます。
治療抵抗性うつ病の治療法
①診断の再検討
治療抵抗性うつ病の治療は、診断を見直すところ始まります。うつ病の他に見落としていた身体の病気はないか、患者さんが置かれている環境に問題はないかなどを再度評価しながら、より適した治療法を探るのです。
②抗うつ剤の見直し
診断が正しいにも関わらず投薬の効果が見られにくい場合には、お薬の種類を変えて様子を見ることがあります。同じ抗うつ剤でも、人によってより効きやすい種類があるかもしれないからです。
③増強療法
増強療法とは、抗うつ薬と非定型抗精神病薬を組み合わせて服用することです。従来の治療法(抗うつ薬の処方)で改善が見られにくいうつ病に効果的だと言われています。非定型抗精神病薬の作用で、抗うつ剤の効果を高めることが出来るのです。
最後に、難治性と思われるうつ病のなかには、副作用の辛さや、依存に対する不安から、患者さんが必要なお薬を十分飲めずに治療効果が表れていない場合も多々あります。もし治療を妨げている要因がありそうならば、遠慮せず主治医に告げ、打開策を一緒に考えていきましょう。
例えば、副作用の辛さはより飲みやすいお薬に変えてもらうなど、相談することで解消しやすくなります。
今回は、治療抵抗性うつ病についてご紹介しました。当事者の方やご家族のお役に立てれば幸いです。
参考資料:
David M. Taylor, Thomas R.E. Barnes, Allan H Young著(2019)『モーズレイ処方ガイドライン 第13版 日本語版』ワイリー・パブリッシング・ジャパン株式会社
日本精神医学会(監)(2014)『DSM-5 精神疾患の分類と診断の手引き』医学書院
井上猛ら(編)(2018)『こころの治療薬ハンドブック第11版』星和書店
渡辺衝一郎著(2018)『難治性うつ病―リスクと予測,診断の再考―』精神経誌120巻5号
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