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双極性感情障害とは「気分の波」が日常を揺さぶる病気
2025.05.102025.05.10
双極スペクトラム、うつ病、双極性障害・躁うつ病
双極性感情障害と「気分の波」
双極性感情障害(以下、双極性障害)は、かつて「躁うつ病」と呼ばれていた精神疾患の一つです。「うつ状態」と「躁状態」または「軽躁状態」という、相反するような気分の波が繰り返されるのが特徴です。この病気は、単なる「気分屋」や「性格の問題」ではなく、脳の気分調整機能に生じた医学的な障害です。
適切な理解と治療によって、双極性障害は十分に安定を目指すことができます。本記事では、その特徴や診断基準、治療、誤解されやすい点についてわかりやすく解説します。
どのような症状があるのか?
双極性障害の中心となるのは、「うつ状態」と「躁(または軽躁)状態」が交互に出現することです。
うつ状態
- 気分の落ち込み、興味や喜びの喪失
- 疲労感、倦怠感、眠気または不眠
- 食欲の減退または過食
- 思考の遅さ、集中力の低下
- 自責感や死にたい気持ち など
これらは、いわゆる「うつ病」と酷似しています。実際、双極性障害の患者さんが最初に受診するきっかけの多くは「うつ状態」からです。
躁状態
- 異常に気分が高揚し、活動的になる
- 睡眠時間が極端に短くても平気になる
- 話し続ける、話題が飛ぶ
- 誇大的な自信、根拠のない万能感
- 金銭・性行動・買い物などでの衝動的行動 など
「軽躁状態」はこれよりやや軽度で、社会生活が一見うまく回っているように見えるため、本人や周囲が病気と気づきにくい場合があります。しかしこの時期も、判断力の低下や対人トラブル、仕事上のリスクを伴うことが少なくありません。
双極性障害のタイプ分類
DSM-5(精神疾患の診断・統計マニュアル)では、双極性障害は主に以下の2つに分類されます。
- 双極I型障害(Bipolar I Disorder)
少なくとも1回の明確な躁状態(または混合状態)と、うつ状態を伴う。 - 双極II型障害(Bipolar II Disorder)
明確な躁状態はないが、軽躁状態と重いうつ状態が繰り返される。
II型は特に「うつ」が目立ちやすく、うつ病との鑑別が難しいことがあります。そのため、治療方針の誤りが生じやすい領域でもあります。
うつ病との違いに注意が必要
双極性障害の診断で難しいのは、「最初はうつ状態から始まることが多い」という点です。そのため、初診時には「うつ病」と診断されるケースが少なくありません。しかし、抗うつ薬を安易に使用すると、軽躁または躁状態を誘発してしまうことがあります。
このため、診断時には以下の点に注目することが重要です
- これまでにハイテンションになったことはないか
- 睡眠時間が少なくても平気な時期がなかったか
- 急に活動的になって衝動的な行動をとったことはないか
- 家族に気分の波が激しい人はいないか
患者さん本人だけでなく、家族や周囲の人からの情報も、診断上非常に重要です。
原因は? ― 脳と遺伝の関係
双極性障害の原因は完全には解明されていませんが、以下のような要素が関与していると考えられています。
- 遺伝的要因➡家族内に双極性障害の患者がいる場合、発症リスクが高まります。
- 脳の神経伝達物質のアンバランス➡特にセロトニン、ドーパミン、ノルアドレナリンといった物質のバランス異常。
- ストレス・ライフイベント➡発症のきっかけとして、就職・結婚・出産・喪失体験などが重なることがあります。
これらの要因が複雑に絡み合い、発症すると考えられています。
治療の基本方針
双極性障害の治療は、「気分の波をできるだけ安定させること」が目的です。
主な治療法
- 気分安定薬(例:リチウム、ラモトリギン、バルプロ酸など)
躁と抑うつの波を予防・緩和します。 - 抗精神病薬(例:クエチアピン、オランザピンなど)
躁状態や混合状態が強い場合に使用されます。 - 抗うつ薬
うつ状態が重い場合に慎重に併用されますが、躁転のリスクがあるため必ず医師の判断が必要です。 - 精神療法・心理教育
自分の気分の波に気づき、早めに対処する力をつけることが再発予防に役立ちます。 - 生活リズムの安定化
睡眠・食事・仕事などの生活習慣を整えることが、治療を支える土台になります。
誤解や偏見が回復を妨げることも
双極性障害は、「躁状態」の派手な行動が注目されがちで、「変わった人」「自己中心的」といった誤解を受けやすい病気です。しかし実際には、患者本人が気分の波に苦しみ、日常生活の中で大きなダメージを受けています。
また、軽躁状態は「元気な時期」と誤認されやすく、病識を持ちにくいのも特徴です。症状の波を病気と理解し、早めに医療とつながることが回復への第一歩になります。
まとめ
双極性感情障害は、「気分の高まり」と「落ち込み」が周期的に繰り返される脳の疾患です。適切な診断と治療によって、再発を予防し、安定した生活を取り戻すことが可能です。
「なぜこんなに気分が激しく変わるのか」と自分を責める必要はありません。もしそのように感じた時、そして気分の波に振り回されていると感じたとき、ぜひ専門機関に相談してみてください。
野村紀夫 監修
医療法人 山陽会 ひだまりこころクリニック 理事長 / 名古屋大学医学部卒業
保有資格 / 精神保健指定医、日本精神神経学会 専門医、日本精神神経学会 指導医、認知症サポート医など
所属学会 / 日本精神神経学会、日本心療内科学会、日本うつ病学会、日本認知症学会など
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