双極性感情障害（躁うつ病）とは？

双極性感情障害（躁うつ病）とは？

双極性感情障害（双極性障害）には、「躁（そう）」と呼ばれる「ハイの状態」・「テンションが高い状態」と、「うつ」と呼ばれる「気分が落ち込む状態」「気力が湧かない」状態を繰り返す病気です。

DSM-5では双極性障害と呼ばれ、ICD-10では双極性感情障害や以前は「躁うつ病」と呼ばれており、このようにニュアンスの異なるパターンがさまざまあり、今では「双極性障害」という名称が一般的になっています。

しかし、この病気はうつ病と混同されがちですが、まったく異なる病気であり、診断には注意が必要です。

双極性障害の症状

双極性障害の症状は、躁状態とうつ状態の二つに大きく分けられます。

躁状態の症状

• 睡眠時間が短く、寝なくても平気だと思える
• 上機嫌で、気分が大きく、自慢や自分を大きく見せてしまう
• 周囲との交流や関わりをいつもより求める
• 浪費や大きな契約を組んでしまう

躁状態の患者は「何でもできる」「自分はすごい！」という、異常なまでにエネルギーとパワーに満ちた状態になります。しかし、この状態が実は病気の症状であることや、病気への自覚がないことも多く、これらの突拍子のない行動のために周囲の信用や立場を失ってしまうことがあります。

うつ状態の症状

• 強い罪悪感
• 自己否定感
• 「消えてなくなりたい」と思う

うつ状態では、躁状態での行動を振り返り、強い罪悪感に苛まれることが多いです。この気分の落差は、単極型のうつ病よりも大きな精神的ストレスを引き起こします。

双極性II型

うつ状態が比較的長く、たまに軽い躁状態が現れるタイプの双極性障害の事を双極性Ⅱ型と指しています。

うつ状態が長く続く続くことが特徴のため、診断や受診のタイミングによっては、最初は単極型のうつ病と判断されてしまうこともありますが、うつ病と双極性障害では治療方針が異なりますので注意が必要です。また、とくに軽躁状態は比較的軽いことも特徴ですので、周囲も気づきにくく、見過ごされてしまうことが多いです。

診断の注意

双極性障害における躁状態の時は、本人にとっては「気分が良い」と感じる事も多く、逆に、うつ状態の時には、周囲からは大変おとなしく見えますが、本人にとってはいたたまれないくらいつらくしんどい時期でもあり、うつ状態のタイミングで心療内科､精神科、メンタルクリニックなどの医療機関へ受診することも多いのです。

そのため元気だったときの活動についても、本人にとっては「調子の良い時」と写ることもありますので、問診でも抑うつ状態しかエピソードで認められないこともあり、受診の当初はうつ病と診断されることも珍しいことではありません。医師は、うつ病と診断しても、双極性障害の可能性について注意深く経過を見ていく必要はあります。

治療

双極性障害の治療は、薬物療法と精神療法や心理療法・社会的療法が中心です。そして、双極性障害においては躁状態とうつ状態それぞれに適した薬物が用いられます。治療は気分を安定させる薬物療法が中心であり、通常6～8週間で改善が見られます。

躁状態の治療

躁状態の治療には、リチウムやバルプロ酸、カルバマゼピン、オランザピン、クエチアピン、リスペリドンなどの気分安定薬や抗精神病薬が用いられます。

うつ状態の治療

うつ状態の治療には、オランザピン、クエチアピン、ルラシドン、リチウム、ラモトリギンなどが用いられます。うつ状態では抗うつ薬は避け、気分調整薬や抗精神病薬が中心となります。

入院治療の必要性

躁状態や軽躁状態は、場合によっては病状の管理目的として、入院管理が必要となることがあります。気分変化のサイクルが早すぎる場合や生活リズムの調整が困難な場合にも、入院治療が推奨されます。

まとめ

双極性障害は気分の上下が激しい疾患であり、正確な診断と適切な治療は重要です。しかし単極型のうつ病と似ているため、医療機関における通院や専門家の診察の経過をみながら、双極性障害の可能性についても考慮することも大切です。

野村紀夫 監修
ひだまりこころクリニック 理事長 / 名古屋大学医学部卒業
保有資格 / 精神保健指定医、日本精神神経学会 専門医、日本精神神経学会 指導医、認知症サポート医など
所属学会 / 日本精神神経学会、日本心療内科学会、日本うつ病学会、日本認知症学会など