名古屋駅徒歩0分
大人のための
メンタルクリニック
公式ブログ
キャリアレインボーとは?人生を「仕事だけ」で語らないための視点とは
2025.07.112025.07.11
キャリアレインボー
人生を「仕事だけ」で語らないための視点とは
「キャリア」と聞くと、お仕事の内容や地位を指していると考えることはありませんでしょうか??
人は誰しも、仕事以外にも家庭人であり、地域社会の一員であり、友人であり、親であり、趣味を楽しむ個人でもあります。つまりは仕事だけではなく、人生の視点というのはとても様々にあるものです。こうした視点を包括的に捉えた理論が、「キャリアレインボー(Career Rainbow)」です。
キャリアとは「役割の組み合わせ」である
キャリアレインボーは、アメリカの心理学者ドナルド・E・スーパー(Donald E. Super)が提唱した理論で、彼のキャリア発達理論の一部として位置づけられています。スーパーは、キャリアを「職業人生」に限定するのではなく、人生全体にわたる役割の連続と重なり合いと定義しました。つまりキャリアとは、**仕事の経歴だけでなく、“人生のあらゆる役割の積み重ね”**であり、職業もその一部にすぎないという考え方です。
彼の理論では、人は人生の中で同時に複数の「役割(Life Roles)」を担い、その比重はライフステージに応じて変化していくとされます。そしてその変化と重なりを、虹の帯(レインボー)のように視覚的に表現したものが、キャリアレインボーです。
キャリアレインボーを構成する「8つの役割」
スーパーは、以下のような8つの主要な人生の役割を提示しています。
役割 | 概要 |
---|---|
子ども(Child) | 親や保護者から支援を受ける立場としての自己 |
学生(Student) | 知識・スキルを学び、発達する立場 |
労働者(Worker) | 働き、報酬を得て社会的責任を果たす役割 |
市民(Citizen) | 地域や社会の一員としての参加や貢献 |
家庭人(Homemaker) | 家庭を支え、育児や家事を担う立場 |
配偶者(Spouse) | パートナーとして支え合う関係性 |
親(Parent) | 子を育てる責任を担う立場 |
余暇人(Leisurite) | 趣味や余暇を通じて自己充実を図る時間 |
人はこれらの役割を一生のうちにすべて経験するわけではないかもしれませんし、経験する順番や比重も人によって異なります。しかし重要なのは、「どの役割も、人生にとって意味を持つ」という視点です。
ライフステージと役割の変遷
スーパーはまた、人生を以下の5つのライフステージ(発達段階)に区分しました。
- 成長期(0~14歳):自己概念の形成や、将来の夢の芽生え
- 探索期(15~24歳):興味や能力を探索し、進路を模索する時期
- 確立期(25~44歳):職業的な基盤を固め、安定に向かう時期
- 維持期(45~64歳):経験を活かしつつ、役割を維持する段階
- 衰退期(65歳~):引退を見据え、生活の質を再構築する時期
この5つのステージそれぞれで、どの役割がどの程度重要かは異なります。たとえば「学生」としての役割は成長期〜探索期に重みをもち、「親」「労働者」としての役割は確立期に比重が高まります。「余暇を楽しむ人」や「市民」としての役割は、ライフステージを問わず自己実現や社会参加として意味を持ちます。
キャリアレインボーでは、こうした役割とライフステージの重なりを、虹のようにカラフルな帯として図式化します。このビジュアル表現により、「今の自分はどの役割に時間やエネルギーを使っているのか」「見落としている役割はないか」といった問いを持つきっかけとなります。
自分だけのキャリアレインボーを描く意味
キャリアレインボーの最大の特徴は、「自分の人生を多面的に見直す視点を与えてくれること」です。たとえば、キャリアに行き詰まりを感じているとき、「労働者としての自分」だけに注目していることがあります。しかし、「親として」「配偶者として」「趣味を楽しむ個人として」の役割に意識を向けることで、別の自己肯定感や価値観が見えてくるかもしれません。
また、働き方改革や人生100年時代といった文脈の中で、「働くこと」だけではなく、「どのように生きたいか」という問いが重要視されるようになってきました。その点で、キャリアレインボーは個人の価値観や人生観を見つめ直すツールとして、今改めて注目されています。
ワークとしての活用例
キャリアレインボーは、キャリアカウンセリングや自己理解ワークショップなどでも活用されています。
- 自分の現在の役割を円グラフのように可視化する
- 将来担いたい役割を加えて「理想のレインボー」を描く
- 各役割における満足度や課題を整理してみる
このようなプロセスを通じて、「本当は何に時間を使いたいのか」「何にもっとエネルギーを注ぎたいのか」が見えてきます。
「キャリア=生き方」と捉えるために
キャリアとは、単に仕事や地位のことではなく、「自分がどんなふうに人生を送っているか」という視点で捉えるべきものです。キャリアレインボーは、その人生を構成する多様な役割に気づき、それぞれを大切にするという考え方を私たちに示してくれます。
どの役割が正解、ということはありません。今のあなたにとって、どの役割が意味を持つのか。その問いに向き合うことが、キャリアという“人生の旅路”を、より豊かなものにしてくれる起点ともなります。
野村紀夫 監修
医療法人 山陽会 ひだまりこころクリニック 理事長 / 名古屋大学医学部卒業
保有資格 / 精神保健指定医、日本精神神経学会 専門医、日本精神神経学会 指導医、認知症サポート医など
所属学会 / 日本精神神経学会、日本心療内科学会、日本うつ病学会、日本認知症学会など
一人で悩まずに、まずは一度ご相談ください
一人で悩まずに、
まずは一度ご相談ください
たくさんの方が
悩みを抱えて来院されています。
ご紹介している症状以外でも、「こんなことで受診していいのかな…」 と迷ったらまずは一度お気軽にお電話ください。