GADD45とは、細胞のストレス応答から精神疾患研究についてまでを名古屋ひだまりこころクリニック名駅エスカ院が心療内科ブログで紹介

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GADD45とは|細胞のストレス応答から精神疾患研究まで

2025.09.062025.09.07

うつ病、双極性障害・躁うつ病、大人の発達障害・ADHD、統合失調症

GADD45とは何か

GADD45(Growth Arrest and DNA Damage-inducible 45) は、その名の通り「細胞周期の停止」や「DNA損傷応答」に関与するタンパク質群です。聞き慣れない名称かもしれませんが、実は私たちの身体を日々守っている重要な分子のひとつです。

細胞は紫外線、熱、酸化ストレス、化学物質など、外界からの刺激に絶えずさらされています。こうしたストレスに直面したとき、GADD45の発現量が増えることで、細胞はDNAを修復したり、不要な増殖を抑えたりして自らを保護します。言い換えれば、GADD45は「細胞のセンサー」として働き、環境変化やダメージに応じて細胞の運命を調整しているのです。

GADD45ファミリーの種類

GADD45は単一の分子ではなく、進化的に共通の祖先から派生した3つのファミリータンパク質を含みます。

GADD45α

DNA損傷修復やアポトーシス誘導に深く関与。

GADD45β

炎症応答や神経保護に関連。精神疾患研究でも特に注目されている。

GADD45γ

発生過程や細胞周期制御に関与するほか、免疫系での役割が指摘されている。

これらは互いに似た機能を持ちながらも、細胞内で異なる経路や状況に応じて働き分けられています。

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GADD45とエピジェネティクス

GADD45の重要性を理解する上で欠かせないのが エピジェネティクス です。これは、DNAの塩基配列そのものを変えることなく、遺伝子の「オン・オフ」を調整する仕組みを指します。

代表的なのが DNAメチル化 です。DNAにメチル基という小さな化学基が付くと、その領域の遺伝子は「沈黙」し、タンパク質が作られなくなります。一方で、DNAからメチル基が外れる DNA脱メチル化 によって遺伝子は再び活性化されます。

ここでGADD45が登場します。GADD45はDNA脱メチル化に関与し、特定の遺伝子をオンにする働きを助けます。つまりGADD45は「遺伝子スイッチの調整役」として、細胞の機能を環境に合わせて最適化しているのです。

GADD45と疾患の関連

精神疾患・神経疾患

GADD45は脳内でも広く発現しており、神経可塑性(神経回路が経験に応じて変化する性質)や神経保護機構に関与しています。これにより、精神疾患や神経変性疾患の研究においても注目されています。

自閉症スペクトラム障害(ASD)

ASDではDNAメチル化異常が報告されており、重度の言語障害を持つ児童でGADD45α遺伝子の欠失が確認された例もあります。

統合失調症

陽性症状(幻覚・妄想)と陰性症状(意欲低下・感情鈍麻)を示す疾患。前頭皮質でのGADD45β発現増加とDNAメチル化異常が報告されており、病態形成との関連が示唆されています。

大うつ病性障害

動物モデルでは前頭前野においてGADD45βが低下しており、DNAメチル化を介して関連遺伝子発現を制御していると考えられています。抗うつ治療の新たな標的として注目されています。

心的外傷後ストレス障害(PTSD)

PTSD患者では、免疫関連遺伝子のDNAメチル化が低下しているとの報告があります。GADD45が外傷体験と遺伝子発現の橋渡しをしている可能性があります。

双極性障害

躁状態とうつ状態を繰り返す疾患。治療薬バルプロ酸投与によってGADD45βの発現が増加することが報告されており、薬理作用の一部に関与していると考えられています。

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神経変性疾患

アルツハイマー病

記憶障害を特徴とする認知症。異常なDNAメチル化とアミロイドβ蓄積が病態の中心とされます。研究では、GADD45βが神経保護的に働き、GADD45αがDNA損傷修復に関わることが示唆されています。

筋萎縮性側索硬化症(ALS)

運動ニューロンが変性・脱落する進行性疾患。患者脳ではGADD45αの発現増加が観察され、ストレス応答経路の活性化が病態に関与していると考えられています。

がん・免疫疾患

GADD45は細胞周期停止やDNA修復に深く関与するため、がん研究でも古くから注目されてきました。また、炎症性疾患や自己免疫疾患においても、GADD45の発現調節が病態に影響を与えることが報告されています。

臨床応用の可能性

GADD45を介した遺伝子調整機構は、従来の「薬で神経伝達物質を操作する」という治療法とは異なるアプローチを提供します。例えば、DNAメチル化異常を是正するような治療戦略は、精神疾患や神経変性疾患の根本治療に結びつく可能性があります。

ただし、現時点での多くの知見は細胞実験や動物モデルに基づくものです。人間での臨床データはまだ限られており、今後の研究の進展が待たれます。

まとめ

GADD45は、DNA損傷応答や細胞周期制御だけでなく、エピジェネティクスを介して遺伝子発現そのものを調整する、非常に重要な分子群です。

  • 細胞をストレスから守るセンサーとして機能
  • DNA脱メチル化を介したエピジェネティクス制御
  • 精神疾患(ASD統合失調症うつ病、PTSD、双極性障害)や神経変性疾患(アルツハイマー病、ALS)に関連
  • がんや免疫疾患の研究対象としても注目

これらの知見は、従来治療が難しかった疾患に対する新しい治療戦略の可能性を示しています。今後、GADD45研究の臨床応用が進むことで、精神疾患や神経疾患の理解と治療は大きく変わっていくかもしれません。

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野村紀夫 監修
医療法人 山陽会 ひだまりこころクリニック 理事長 / 名古屋大学医学部卒業
保有資格 / 精神保健指定医、日本精神神経学会 専門医、日本精神神経学会 指導医、認知症サポート医など
所属学会 / 日本精神神経学会、日本心療内科学会、日本うつ病学会、日本認知症学会など

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