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刑務所で生活すると起こる?「ガンザー症候群」の症状と治療法を解説

2024.05.232024.05.25

解離性障害・解離性とん走、ガンザー症候群、うつ病、統合失調症

自由を奪われたストレスで、受け答えが乏しくなってしまう

刑務所や留置場などの収容施設では、自由を奪われたストレスから「ガンザー症候群」という状態に陥ることがあります。徐々に反応が乏しくなり、的外れな受け答えをしたり、自分が誰か分からなくなったりするような症状が特徴です。

本記事では、ガンザー症候群の3つの症状や治療法について、詳しく解説します。

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ガンザー症候群とは?

ガンザー症候群とは、刑務所のような閉鎖された環境下で生じる精神症状の1つです。自由を奪われたストレスから、的外れな受け答えや意識がもうろうとした状態に陥ります。幻覚や身体症状を伴うこともあり、様子が大きく変化することが特徴です。

女性よりも男性に多く、男女比はおよそ2:1であるとされています。刑務所に収容された受刑者によくみられるため、刑を軽くするための「詐病」と勘違いや判断されてしまうこともあるでしょう。周囲から理解されにくい症状だといえます。

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ガンザー症候群の3つの症状

ガンザー症候群には、大きく分けて以下の3つの症状がみられます。

  • 的外れ応答
  • 健忘症状
  • 意識混濁

ガンザー症候群の症状①:的外れ応答

「的外れ応答」とは、質問に対する応答が正解とずれてしまう、受刑者にみられる症状です。犯罪精神医学者である中田修によって名づけられました。的外れ応答が起こるのは、外部の刺激に反応する能力が失われ、正確に反応できなくなるためだと考えられています。具体的には、以下のような言葉が的外れ応答の例です。

【的外れ応答の例】

  • 計算間違い:「1+1」を『3』と答える
  • 知識の誤り:「アメリカの首都」を『ニューヨーク』と答える
  • 身近な品物の名称:「鉛筆」を指して『鍵』と言う
  • 色の名前:「緑」を『青』と答える

以上のように、的外れ応答は、質問の受け答えは理解できるものの、内容がやや間違っていることが特徴といえます。「質問をされている」「○○について答える」といった状況や質問の意図は分かっていますが、精神的な混乱で答えを間違うのです。

さらに、受け答えの間違いに加えて、「幼児退行」がみられる場合があります。幼児退行とは、赤ちゃん返りのことであり、子どものような幼い話し方になることです。

ガンザー症候群の症状②:健忘症状

ガンザー症候群では、記憶が失われることが特徴です。「自分が誰なのか」「ここがどこなのか」「何時なのか」といった個人情報や見当識が失われます。

ガンザー症候群の症状③:意識混濁

「意識混濁」とは、周囲の状況に対する認識力が低下し、通常のように注意を払えなくなる状態です。ガンザー症候群においても、周囲に注意を払えず、反応できなくなることがあります。

ガンザー症候群にみられる意識混濁は、一過性で良くなったり悪くなったりすることを繰り返すのが特徴です。それまで反応を見せていたのに、急に一切反応がなくなるといったことが起こります。

ガンザー症候群の原因とは?

ガンザー症候群は、個人的な葛藤や経済的な失敗といった、ストレスが主な原因です。一方で、過去にてんかん発作や頭部外傷、脳卒中といった脳の異常がみられた人がガンザー症候群になりやすいとされています。何らかの外傷により症状が発症する例が多く、心理的なストレスだけが原因ではないといえるでしょう。

また、他の精神疾患との関連も深く、ガンザー症候群は単独で生じることは少ないでしょう。具体的には、統合失調症うつ病などの症状に加えてみられることが多い傾向があります。

ガンザー症候群の治療はどんなことを行う?

ガンザー症候群は、珍しい病態であるため、治療方法が確立されていません。症状が顕著にみられた場合、入院治療を行い、安全で保護的な環境の下で休養することが重要です。正常な状態に回復するまでに数日以内と、比較的早いことが多く、休養により状態が回復することもありますが、稀に長期化することもあります。

統合失調症の治療で用いられる「抗精神病薬」を少量服用すると、効果がみられることがあります。薬を使った治療は根本的な解決にはならないものの、幻覚が生じている場合は、症状を緩和させられるでしょう。

また、治療においては、ストレスの原因は何かを明らかにすることが不可欠です。しかし、的外れ応答が顕著な場合、ストレスの原因が特定しにくいことがあるでしょう。ストレスの特定のためには、催眠療法が効果的なケースもあります。

ガンザー症候群は自由を奪われたときに生じる

ガンザー症候群は、刑務所などの自由を奪われた環境下で生じる、解離性障害の1つです。的外れ応答や健忘、意識混濁といった症状が特徴で、様子が大きく変化します。自由を奪われることは、意識の状態を変えてしまうほどの強いストレスなのだといえるでしょう。

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野村紀夫 監修
医療法人 山陽会 ひだまりこころクリニック 理事長 / 名古屋大学医学部卒業
保有資格 / 精神保健指定医、日本精神神経学会 専門医、日本精神神経学会 指導医、認知症サポート医など
所属学会 / 日本精神神経学会、日本心療内科学会、日本うつ病学会、日本認知症学会など

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