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間欠性爆発性障害|怒りっぽいのは性格じゃなく「病気」の可能性も
2025.04.042025.04.04
間欠性爆発性障害、双極性障害・躁うつ病、統合失調症
「どうしてそんなに怒るの?」身近な“怒り”の違和感
「えっ、そんなことで怒るの…?」
- 洗い物をお願いし忘れただけで、突然怒鳴り声が飛んでくる。
- 家では機嫌が悪くなれば物を投げる。
- 些細な一言で爆発するのに、外では穏やかで優しそうに振る舞っている。
「なんで家族にだけ、こんなに怒りをぶつけてくるんだろう?」
「こっちは何もしていないのに、まるで地雷を踏んだかのような反応…」
そんなふうに思いながらも、怒りのスイッチが入るのが怖くて、言いたいことが言えず、気をつかう毎日。
怒った本人はしばらくしてから急に落ち着いて「さっきはごめん…」と謝ってくる。でもまた同じことが起こる。
もしかしたら、それはただの“怒りっぽい性格”ではなく、「間欠性爆発性障害(IED)」という病気が関係しているのかもしれません。本人も、自分の怒りがコントロールできずに苦しんでいる可能性があります。
今回は、「怒りっぽさ」の裏に隠れているかもしれない病気について、一緒に考えてみましょう。
その怒り、実は「大人の癇癪」かもしれません
本人も後悔していることが多い
間欠性爆発性障害の怒りは、“わざと”ではありません。本人も「やりすぎた」と後悔しているのに、次もまた同じように爆発してしまう。そこがこの障害の苦しさです。
問題なのは、怒りのきっかけがあまりにも小さいこと。周囲から見れば「なんでそんなことで?」と思うような場面で、突然スイッチが入ってしまいます。そして爆発のあとには、深く落ち込んだり謝ったりする…というサイクルを繰り返します。
間欠性爆発性障害の具体的な症状とは?
暴力や暴言などに発展してしまうことも
間欠性爆発性障害(IED)では、些細なことがきっかけで怒りが爆発するのが大きな特徴です。
たとえば、車の運転中に割り込まれたことに激怒してクラクションを鳴らし続けたり、相手を追いかけようとしたり。家庭内では、夕食が気に入らない、思いどおりにいかないなどの小さな不満から、大声をあげて怒鳴ったり、物を投げたり壊したりすることもあります。
こうした怒りの爆発は、数分から30分程度で自然におさまることが多く、爆発後は急に冷静になり、自己嫌悪や後悔に襲われるのも特徴の一つ。また、怒りの間に本人が「自分では止められない感覚」に陥っている点も、周囲が知っておくべき重要なポイントです。
親しい関係間で起きやすい
さらにこの障害は、家族など“安心できる関係の中”で特に出やすい傾向があり、職場や外では穏やかに振る舞えている場合も少なくありません。そのため、周囲は「甘えているだけでは?」「家族にだけワガママなんだ」と誤解してしまうこともあります。
▷「間欠性爆発性障害(IED)と家庭、仕事、自己理解について」も記事にて紹介しています
【ケース例の紹介】身近にある“大人の癇癪”とは
【ケース例A:30代・男性/営業職】
Aさんは普段は穏やかで、社内でも好印象を持たれている存在。
しかし、顧客とのやりとりで思い通りに話が進まないと、突然声を荒らげたり、激しく詰め寄ったりすることがありました。
本人はその後必ず「やりすぎた、ごめん」と反省するのですが、また同じようなことが繰り返されていました。
上司との面談で「自分でも怒りがコントロールできない」と話したことで、専門機関の受診につながりました。
【ケース例B:40代・女性/主婦】
Bさんは家庭では優しい母親ですが、ある日、子どもが牛乳をこぼしたことに対し、突然大声で怒鳴りつけ、食器を床に叩きつけました。
怒りは10分ほどでおさまりましたが、その後ひどく落ち込み、「私なんて母親失格」と涙を流すほど自己嫌悪に…。
夫が心配してメンタルクリニックに同行したことで、間欠性爆発性障害の可能性があることが分かりました。
こうしたケースからもわかるように、本人の意思とは関係なく繰り返される怒りの爆発が、日常生活に深刻な影響を与えることも少なくありません。
どうやって診断されるの?
一時的な「怒りっぽさ」とは、どう違う?
誰にでも、ついカッとなって怒ってしまうことはあります。でも、間欠性爆発性障害(IED)の特徴は、「怒りの大きさや爆発の頻度が、日常生活に支障をきたすほど極端」であること。そしてその怒りが、繰り返し、コントロールできない形で起こることです。
診断には、アメリカ精神医学会が定めた「DSM-5」という診断基準が用いられます。そこでは、たとえば「1週間に2回以上、言葉や行動での攻撃的な爆発が続く」「3回以上、破壊的な行動があった」など、一定期間内にどのような怒りのエピソードがあったかを医師が確認していきます。
また、うつ病やADHD、双極性障害など他の精神疾患との区別も大切です。そのため、継続的な外来診療だけではなく、心理検査や過去のエピソードの聞き取りを通して、総合的に診断が行われます。
「最近怒りっぽいけど大丈夫かな…」と心配なときは、早めに精神科や心療内科に相談することが第一歩になります。一人で抱え込まず、まずは専門家の力を借りてみましょう。
治療法はあるの?
間欠性爆発性障害(IED)の治療は可能です!
しかし、治療には時間がかかることが多いので、根気強く取り組むことが大切です。
IEDの治療には、大きく分けて薬物療法と精神療法があります。特に、これの組み合わせにより、怒りや衝動のコントロールにより効果があるとされます。
①薬物療法
薬物療法は、怒りの爆発を抑えるために有効です。主に以下の薬が使用されます
- リチウム(リーマス):抗てんかん薬で、攻撃的行動を抑制する効果があり、間欠性爆発性障害(IED)にも効果があるとされています。
- 抗うつ薬(SSRIなど):セロトニンの働きを改善することで、衝動を抑える助けになります。
- 抗てんかん薬(バルプロ酸やカルバマゼピン):衝動的な行動を和らげる作用があります。
薬物は、症状を安定させる助けになりますが、治療は医師の指導のもとで行う必要があります。また、抗うつ薬の使用によって衝動の緩和ではなく、むしろ衝動の悪化が認められることもありますので注意が必要です。
なお統合失調症や双極性障害などの治療薬で症状の改善を認めることもありますが、その場合には統合失調症や双極性障害の可能性も否定はしきれません。
②精神療法
精神療法、特に認知行動療法(CBT)は、間欠性爆発性障害(IED)の治療において非常に効果的とされています。CBTでは、怒りを引き起こす思考パターンを見直し、感情のコントロール方法を学びます。具体的には、怒りを感じたときにどのように冷静になるか、どのように自分の気持ちを表現するかを身につけることが目標です。
また、家族療法も有効です。特に思春期や青年期の患者に対して、家族全体でのアプローチが効果的であるとされています。家族が治療に参加することで、理解を深め、家族間の関係を改善することができます。
③その他のアプローチ
場合によっては、生活習慣の改善も治療の一部になります。適切な睡眠や運動、ストレスの管理など、健康的な生活を送ることが症状の改善に繋がることもあります。
治療には時間がかかる場合もありますが、間欠性爆発性障害(IED)は治療可能な病気です。薬物療法と精神療法をうまく組み合わせることで、症状をコントロールし、より安定した生活を取り戻すことができます。
予防策はあるの?
間欠性爆発性障害(IED)の予防には、早期の認識と自己管理が重要です。自分の感情をコントロールするための方法を学び、ストレスをうまく解消することで、症状の悪化を防ぐことができます。
間欠性爆発性障害(IED)の発症を完全に防ぐわけではありませんが、ストレスを上手く対処できることで、症状を和らげ、生活の質を向上させる手助けになります。
①怒りの兆候に気づく
間欠性爆発性障害(IED)の予防には、自分の怒りの兆候に早く気づくことが第一歩です。イライラしたり、心拍数が上がったりする前に、「怒りのサイン」を認識することで、感情をコントロールしやすくなります。
②ストレス管理の工夫
日常的にストレスを上手に解消する方法を持つことが重要です。運動やリラクゼーション法(深呼吸や瞑想など)は、怒りの感情を落ち着かせる助けになります。
③感情を記録する
毎日、自分の感情や出来事を書き留めることで、怒りを引き起こすトリガー(きっかけ)を見つけやすくなります。自分がどんな状況で怒りを感じやすいかを知ることで、予防策を立てやすくなります。
④生活習慣の改善
健康的な食事、十分な睡眠、規則正しい生活を送ることも予防に役立ちます。特に睡眠不足や不規則な生活は、感情の不安定を引き起こす原因となるため、注意が必要です。
⑤定期的な運動
運動は、ストレスを減らし、気分を安定させる効果があります。軽いジョギングやヨガ、散歩など、自分に合った運動を取り入れて、心身のリフレッシュを図りましょう。
まとめ
間欠性爆発性障害(IED)は、ただの「怒りっぽい性格」ではなく、実際には脳の働きや過去の経験に深く関係する精神的な障害です。家庭や職場での人間関係に大きな影響を与えることもありますが、治療とサポートによって症状を管理することが可能です。
自分や周囲の人が間欠性爆発性障害(IED)に悩んでいる場合、早期に認識し、専門家の助けを借りることが重要です。感情のコントロール方法を学び、ストレスを適切に管理することが、日常生活をより豊かにする鍵となります。もし、この記事で少しでも自分や身近な人の状況に気になるところがありましたら、ぜひ専門家に相談してみてください。
まずは、間欠性爆発性障害(IED)と自分の感情の性質を理解していくことが大切です。
野村紀夫 監修
医療法人 山陽会 ひだまりこころクリニック 理事長 / 名古屋大学医学部卒業
保有資格 / 精神保健指定医、日本精神神経学会 専門医、日本精神神経学会 指導医、認知症サポート医など
所属学会 / 日本精神神経学会、日本心療内科学会、日本うつ病学会、日本認知症学会など
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