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トゥレット症候群の治療と家族ができるサポート
2025.09.262025.09.27
トゥレット症候群、大人の発達障害・ADHD
トゥレット症候群の治療と家族ができるサポート
子どもに寄り添ったケア、安心できる環境とは
子どもが突然「チック」と呼ばれる動きを繰り返すようになり、医師から「トゥレット症候群」と診断されると、親として不安や戸惑いを感じるものです。「この症状は一生続くのだろうか?」「学校生活に支障は出ないだろうか?」と考え、どう支えればよいのか迷う方も少なくありません。
トゥレット症候群は、決して珍しい病気ではなく、適切な理解と対応によって多くの子どもが生活を送ることができます。本記事では、トゥレット症候群の治療法やサポートのあり方を、最新の知見を交えて詳しく解説します。
トゥレット症候群とは
トゥレット症候群は「チック症」のひとつで、運動チックと音声チックが1年以上持続する状態を指します。症状は4~6歳ごろから始まり、小学校高学年の10~12歳で最も強くなることが多いとされます。
- 運動チック➡まばたき、顔のしかめ、首振り、肩すくめなどの動作
- 音声チック➡咳払い、鼻鳴らし、声を発する、単語や文を繰り返す
これらは本人の意思では止められず、無理に抑えようとすると強い「前駆衝動」と呼ばれるむずむず感や圧迫感を伴うため、とてもつらい症状です。
さらに、ADHD(注意欠如・多動症)や強迫性障害などを合併することも多く、生活のしづらさはチック症状単独よりも複雑になる場合があります。
トゥレット症候群の治療を考えるときの基本姿勢
症状を「叱らない」「誤解しない」
チックは本人の努力や性格の問題ではありません。意思に反して起こる現象であるため、「やめなさい」「ふざけてるの?」と叱ることで症状が悪化したり、子どもが自信を失うことにつながります。
「治す」より「生活の質を上げる」
治療のゴールは「チックを完全になくすこと」ではなく、日常生活・学校生活を安心して送れるようにすることです。症状の程度によっては治療を必要としないケースもあり、状況に応じた柔軟な判断が求められます。
主な治療法
1. 行動療法
チックが強く、日常生活に大きな支障を与えている場合に行われるのが行動療法です。
習慣反転法(Habit Reversal Training: HRT)
チックには「前駆衝動」が先行します。習慣反転法では、この前駆衝動に気づき、チックと相反する行動(競合反応)を意識的に行う練習をします。
例:首を振るチック➡あごを引いて固定する、音声チック➡深くゆっくり呼吸をする。
暴露反応妨害法(ERP)
チックを短時間だけ我慢し、その時間を少しずつ伸ばしていく方法です。前駆衝動に耐える練習を積み重ねることで、症状のコントロール力を高めていきます。
これらの行動療法は海外で効果が実証され、日本でも専門機関で導入が進んでいます。
2. 心理教育と家族への支援
トゥレット症候群の治療では、家族の理解と協力が不可欠です。
- 症状の正しい知識を学ぶ(心理教育)
- チックが出ても「大丈夫」と受け止める態度を示す
- 学校や周囲に理解を広げる
「チックを叱らない」「治るはずだと過剰に期待しすぎない」ことも大切です。家庭が安心の場であれば、子どもは外での困難を乗り越える力を育みやすくなります。
3. 薬物療法
症状が重度で行動療法だけでは対応が難しい場合、薬物療法が検討されます。
- リスペリドン➡副作用が比較的少なく、日本でもよく使われる
- ハロペリドール・ピモジド➡米国FDAで承認されている薬
- その他の選択肢➡ADHDの併発がある場合にはメチルフェニデート、強迫症状が強い場合にはSSRIが使用されることも
薬は症状や合併症の状態に合わせて少量から調整され、医師と相談しながら進める必要があります。
家族にできるサポート
よき理解者であること
子どもは「症状そのもの」と「周囲の反応」の二重の苦しみを抱えています。親が「症状を理解している」と示すだけで、子どもは安心感を得ます。
生活リズムを整える
睡眠不足や疲労はチックを悪化させる要因となります。
- 幼児(3〜5歳)➡10~13時間
- 小学生➡9~12時間
- 中学生➡8~10時間
十分な睡眠と規則正しい生活を心がけることで、症状が和らぐことがあります。
学校や地域との連携
先生やスクールカウンセラーに相談し、クラスでの理解を促すことも重要です。必要に応じて外部の発達支援センターや医療機関と連携し、環境調整を進めましょう。
家庭内で抱え込まない
親が「自分の責任だ」と思い込むと、過度なストレスからうつ状態に陥ることもあります。家族会や支援団体につながることも、心の支えになります。
まとめ
トゥレット症候群は子どもの意思や性格ではなく、脳の神経発達に関わる疾患です。
- 治療の目的は「チックを完全に止める」ことではなく、生活の質を守ること
- 行動療法・心理教育・薬物療法などが治療の柱
- 家族の理解と安心できる環境づくりが最大のサポート
症状は成長とともに軽くなることも多く、本人と家族が安心して生活できる工夫を続けることで、よりよい未来につながります。
野村紀夫 監修
医療法人 山陽会 ひだまりこころクリニック 理事長 / 名古屋大学医学部卒業
保有資格 / 精神保健指定医、日本精神神経学会 専門医、日本精神神経学会 指導医、認知症サポート医など
所属学会 / 日本精神神経学会、日本心療内科学会、日本うつ病学会、日本認知症学会など
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