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「うつ病って、いつ治るの?」と聞かれたときに伝えたいこと
2025.05.132025.05.13
抑うつ、うつ病
「うつ病って、いつ治るの?」と聞かれたときに伝えたいこと
回復には「時間」と「波」があるという現実
うつ病と診断された方が、医師や心理士に最もよく尋ねる言葉の一つが、「これって、いつ治るんですか?」という質問です。
この問いには、強い不安と切実な思いが込められています。今のつらさがいつ終わるのか。仕事や家族との関係はどうなるのか。元の生活に戻れるのか。今回は、この「うつ病の回復期間」にまつわる疑問に対して、精神科の視点からできるだけ現実的で、かつ希望を持てる情報をお伝えします。
回復までの期間は「人それぞれ」
まず最初に、正直な答えをお伝えします。うつ病が治るまでの期間は、人によって大きく異なります。
軽症のうつ病であれば、数か月の休養と治療で回復することもあります。一方で、中等度〜重度のうつ病や、再発を繰り返しているケースでは、回復に年単位の時間が必要になることも珍しくありません。
精神科では一般的に、「うつ病の回復には6か月から1年程度を見込む」と言われています。ただし、これはあくまで目安であり、早くよくなる人もいれば、もっと時間をかけて回復していく人もいます。
うつ病は「直線的」に良くなる病気ではない
回復にかかる時間を語る上で大切なのが、「うつ病の回復は波がある」という事実です。
多くの人は、薬や休養で少し症状が軽くなると、「あ、治ってきたかも」と感じます。しかしその後、また気分が沈んだり、疲れやすくなったりすることがあります。この「上がったり下がったり」を繰り返しながら、少しずつ良くなっていくのが、うつ病の典型的な経過です。
これは「治っていない」ということではなく、自然な回復のプロセスの一部です。ただ、本人にとっては「また悪くなった」「やっぱりだめだ」と感じやすいため、焦らない心構えがとても大切になります。
治療だけでなく「生活の調整」も重要
うつ病の治療は、薬物療法(抗うつ薬など)と精神療法などを中心に行われます。しかし、回復には「生活そのものの見直し」も重要なポイントです。
具体的には以下のような項目が回復に影響します
- 睡眠リズムは整っているか
- 職場や家庭のストレス環境はどうか
- 自分を責めすぎる思考パターンが続いていないか
- 休む時間と活動のバランスが取れているか
特に、再発を防ぐためには「環境の見直し」が不可欠です。無理に復職を急いだり、これまでと同じペースで生活しようとすると、うつ病がぶり返す可能性があります。
家族や職場ができる支援とは
うつ病の回復には、周囲の理解と支えも大きな役割を果たします。
ご家族や職場の同僚が「もう治ったんじゃないの?」「気持ちの問題でしょ」といった無理解な発言をしてしまうと、孤立感を強め、本人の回復は一気に遠のいてしまうことがあります。
重要なのは、症状の軽快=完治ではないということ。表面上は元気そうに見えても、心の中ではまだエネルギーが不足していることもあります。本人が「今はまだ無理」と感じているときには、無理に動かそうとせず、見守ることが回復を助けます。
「回復」=「元の自分に戻る」ではないかもしれない
多くの人がうつ病の回復を、「以前と同じように働けるようになること」や「何もなかったかのように過ごせること」と捉えがちです。しかし、うつ病を経験することで価値観や生き方が変わる人も少なくありません。
「治る」というよりは、「自分らしく回復していく」「無理をしないで生きていくスタイルを見つける」と言ったほうが、現実に即しているかもしれません。
以前のようにフルタイムで働かなくてもよい、休む時間を意識的に取る、完璧主義を手放す。これらは、うつ病の回復の中で得られる大切な“気づき”や変化でもあります。
治ることの「可能性」について
うつ病は「こころの風邪」と言われることもありますが、風邪のように自然に治るとは限らない病気です。きちんとした治療と支援、そして時間が必要です。
でも確かなことがあります。それは、多くの人がうつ病から回復しているということです。適切なサポートがあれば、あなたも少しずつ元気を取り戻すことができます。
「いつ治るのか」は誰にも断言できませんが、「必ず変化していく」ということはお伝えできます。焦らず、比べず、一歩ずつ。今の自分を否定せずに、できることから始めていきましょう。
野村紀夫 監修
医療法人 山陽会 ひだまりこころクリニック 理事長 / 名古屋大学医学部卒業
保有資格 / 精神保健指定医、日本精神神経学会 専門医、日本精神神経学会 指導医、認知症サポート医など
所属学会 / 日本精神神経学会、日本心療内科学会、日本うつ病学会、日本認知症学会など
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