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やる気が出ない日は“掃除”から始めてみるのもいい理由|心療内科の視点で
2025.04.252025.05.01
掃除とメンタルヘルス
やる気が出ない日は“掃除”から始めてみる視点とは
「今日は何もしたくない」「やらなきゃいけないと頭ではわかっていても、体も気持ちもまったく動かない」
そんな日があるのは、決して特別なことではありません。誰にでも、そんなふうに心と体が重く感じられる日が訪れることがあります。特に、ストレスや疲労が積み重なっているとき、あるいはメンタルバランスが乱れかけているときには、「やる気そのもの」が出なくなることがあるのです。
こうした状態のときに、「頑張らなきゃ」「もっとしっかりしなきゃ」と無理に自分を奮い立たせようとすると、かえって自己嫌悪や落ち込みを深めてしまうこともあります。
心療内科の視点から見れば、「やる気が出ない日」は、心のエネルギーが一時的に低下しているサインのひとつです。そんなとき、無理に気持ちを高めようとするのではなく、そっと回復に向かうための行動をとることが大切です。その一つとして、意外にも効果的なのが「掃除」という行動です。
今回は、なぜやる気が出ないときに掃除がよいのか、心と脳の仕組みに触れながら、丁寧に解説していきます。
やる気は「出すもの」ではなく、「回復を待つもの」
まず知っておきたいのは、「やる気」は気合いや根性で無理やり引き出すものではない、ということです。脳科学の観点から見ると、やる気は前頭前野という脳の領域が担っていますが、この部分はストレスや疲労、不安などの影響を非常に受けやすくできています。
心療内科の現場でも、うつ病、適応障害、燃え尽き症候群などの症状の一つとして「やる気が出ない状態」を多く目にしますが、いずれの場合も共通しているのは、「やる気が出ない=本人の怠け」では決してないということです。
エネルギーが低下しているときには、無理に気持ちを引き上げるよりも、まずは小さな行動を通じて、脳と心に少しずつ活力を取り戻していくことが、回復への確かな一歩となります。
やる気回復に「掃除」が向いている3つの理由
1. 達成感をすぐに得られるから
掃除は、小さな行動でも目に見える結果がはっきり現れます。ゴミを捨てる、机の上を拭く、物を整える…そんな一つひとつの動作が、「できた」「きれいになった」という実感につながります。
この「小さな達成感」は、脳内でドーパミンという神経伝達物質の分泌を促し、自然とやる気を回復させる助けになります。
2. 複雑な判断を必要としないから
やる気が出ないときは、判断力や思考力も一時的に低下していることが少なくありません。掃除は、難しい判断を必要とせず、「手を動かすだけ」で完了する作業が多いため、認知的な負担が非常に少ないのが特徴です。
たとえば、「床に落ちているゴミを拾う」「机の上のものを片付ける」といった行動は、深く考えずともできるため、心にかかるプレッシャーを最小限にとどめたまま取り組むことができます。
3. 空間を整えることで、心も整理されるから
人間の脳は、視覚から入る情報に強く影響を受けています。部屋が散らかっていると、それだけで無意識のうちにストレスや圧迫感を覚えやすくなります。一方、整理された空間に身を置くと、自然と心にも余白が生まれ、気持ちが落ち着きやすくなるのです。
「物理的な片づけが、内面的な整理にもつながる」という現象は、日常の中でもたびたび実感されることです。掃除は、心のコンディションを整えるための意外な近道にもなり得ます。
どんな掃除から始めればいい?
やる気が出ないときに掃除をするなら、「完璧を目指さない」ことが何より大切です。あくまで脳と心に少しずつエネルギーを取り戻すための“きっかけ”として、小さな範囲から手をつけていきましょう。
おすすめなのは、5分間だけ、あるいは一か所だけを意識した簡単な掃除です。
- ゴミを一袋まとめて捨てる
- 床に落ちているものを拾って定位置に戻す
- 洗面台をさっと拭く
- テーブルの上だけを片づける
- クイックルワイパーで床を一往復する
「これだけ」と決めて取り組むと、心理的ハードルがぐっと下がり、「やってみたら意外と動けた」という感覚を得られることが少なくありません。
「掃除すらできない日」があっても、まったく問題ない
ここまで読んで、「それでも掃除をする気力もない…」と感じる方もいるかもしれません。それは、自然な反応です。
やる気の低下が強いときには、掃除どころか、着替えや歯磨きなどの基本的なセルフケアすら難しくなることもあります。
そういうときは、掃除に取り組めない自分を責める必要は一切ありません。むしろ、まずは心療内科など専門機関に相談し、心のエネルギーがどれほど低下しているのかを正確に把握することのほうが重要です。
掃除は、心身に少し余裕が戻ってきたときに行う「小さなリハビリ」のようなもの。最優先すべきなのは、無理をしないこと、そして今の自分の状態を正しく理解することです。
まとめ:「動き出すきっかけ」として、掃除を味方に
やる気が出ないとき、心は「休息が必要だ」というサインを送っている場合もあります。しかし、何日も動けない日が続くと、気持ちがさらに落ち込み、回復のきっかけをつかみにくくなってしまうこともあります。
そんなとき、「掃除」というシンプルで負担の少ない行動は、ほんの小さな「動き出し」の一歩になることがあります。
心療内科でも、やる気や気分の回復を目指すときには、「日常生活に取り入れられる小さな行動」を積み重ね、リズムを整えていくことをとても大切にしています。
掃除が得意でなくても、完璧でなくてもかまいません。「引き出し一つだけ」「テーブルの上だけ」と決めて、ほんの少しだけ動いてみる…その小さな一歩が、気づけば次の“やる気”を呼び起こしてくれるかもしれません。
野村紀夫 監修
医療法人 山陽会 ひだまりこころクリニック 理事長 / 名古屋大学医学部卒業
保有資格 / 精神保健指定医、日本精神神経学会 専門医、日本精神神経学会 指導医、認知症サポート医など
所属学会 / 日本精神神経学会、日本心療内科学会、日本うつ病学会、日本認知症学会など
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