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月経前不快気分障害はお薬や精神療法などの治療があります
2021.05.022022.06.08
月経前症候群・PMS/月経前不快気分障害・PMDD
月経前不快気分障害という病気をご存知でしょうか。
月経前に様々な身体的症状に悩まされる月経前症候群(PMS)というものがありますが、月経前不快気分障害(PMDD)とは、簡単に言うと「PMSと比べて精神的な辛さが際立つ」という病気です。
実は、意外と多い月経に関連した心と体の不調
月経がある女性のうち5.4%はPMSがあるという報告がされています。そして、1.2%は月経前不快気分障害であると言われています。うつ病などの他の精神疾患と違うところは症状の悪化・軽快が「月経周期と連動している」というところです。
生理になる前・もしくは生理になると、極度にイライラしてしまう、衝動的になる、鬱々として時には死にたくなる、眠れない、過食をしてしまう……そんな症状があるなら、月経前不快気分障害の可能性があります。
月経前不快気分障害の症状
月経前不快気分障害の自覚・他覚症状には、以下のようなものがあります。
そして、月経前症候群(PMS)と大きく異なる点は、「精神の不安定さ」がしっかりとある事です。
- 極度にイライラとしてしまう
- 涙もろくなり、些細なことで泣いてしまう
- 体が重く、やる気が起きない
- ちょっとしたことで強く不安に思う
- 自己否定感が強くなる
- 孤独感を強く感じる
- 衝動的になる
- 周囲につらくあたってしまい、人間関係が悪化する
- 不眠・過眠になる
- 過食・拒食の症状が出る
何度も、記載しますがPMSと大きく違う点は「精神の不安定さが強く出る」ということです
また、精神症状以外にも
- 胸部・腹部が張る
- 下痢になる/便秘になる
- 片頭痛がする
- 腰痛が悪化する
- むくむ
といった身体症状が現れることも多くあります。
月経前不快気分障害は、生理が始まる日のおよそ7~10日前頃から始まり、生理の終わりに近づくにつれて軽減していくというパターンが多いです。また、普段から片頭痛や腰痛、あるいはうつ病などの疾患があり、それが生理周期と連動して悪化・軽快するという方もいます。
月経前不快気分障害の場合、生理周期は基本的に安定していますが、中には不安定な方も見受けられます。
月経前不快気分障害の診断基準と治療
月経前不快気分障害を治療するためには、心療内科、もしくは精神科を受診します。月経に関する病気なので、まずは婦人科で他の疾患が無いか診てもらったあとに心療内科・精神科を受診するのも良いでしょう。特に、月経周期が不安定、月経以外の不正出血がある、出血量が多すぎる・少なすぎるように思う、といったケースは先に婦人科を受診するのもひとつの選択肢です。
受診をする際、2ヶ月分の生理周期の変動・その時の症状を記録したものがあれば診察に非常に役立ちます。
月経前不快気分障害の診断基準としては以下になります。2013年にアメリカの精神医学会で作成されたものになりますが、完全に当てはまらない場合も医師の診察の上、月経前不快気分障害だと診断されるということも考えられます。
【月経前不快気分障害の公的な診断基準】
次に挙げる1~6に該当すること
1. ほとんどの月経周期で月経開始1週間前に5つ以上の症状が出現し、症状は月経開始後数日以内に軽減し月経終了後はほぼ消失する
2. 症状は<カテゴリーA>から1つ以上、<カテゴリーB>から1つ以上が存在し、合計5つ以上が確認されること
<カテゴリーA>
- ・感情が著しく不安定である
- ・怒りや激しいイライラの感情がある
- ・ひどい落ち込み、絶望感、自責の念の高まりがある
- ・異様な不安、緊張、興奮、いらだち感がある
<カテゴリーB>
- 仕事・学業・交友・趣味など日常活動への意欲低下がある
- 集中力低下
- 倦怠感、疲れやすさ、もしくは気力の欠如がある
- 過食、甘いものが極端に欲しくなるなど食欲の変化がある
- 過眠または不眠
- 自分を抑えることができないという感覚がある
- 胸の痛みや腫れ、関節痛、体重の増加、筋肉痛、むくみなどの身体症状がある
3. 症状には明らかな苦痛が認められ、仕事、学校、対人関係などの日常生活にわたり大きな支障をおよぼしている
4. うつ病、気分変調性障害、パニック障害、パーソナリティ障害の増悪によってだけ起こっているわけではない(合併の可能性はある)
5. 月経2周期以上にわたる症状を記録したもので連動が認められる
6. 症状は、薬物やアルコール、他の病気の影響によるものではない
月経前不快気分障害の治療について
次は治療についてです。月経前不快気分障害の治療方法として、薬物療法、漢方療法、精神療法が挙げられます。
薬物療法について
PMSと比較して婦人科で処方される低用量ピルが効きにくい場合があるので、薬物療法としては抗うつ剤や抗不安薬、向精神病薬を処方します。特にSSRIという抗うつ薬(選択的セロトニン再取り込み阻害薬)は産婦人科学会でも月経前不快気分障害の治療薬として推奨されています。SSRIは不安や緊張、抑うつといった症状を和らげてくれます。抗うつ薬は基本的には毎日服用し、効果が出るまで2~4週間かかるという薬ではあるのですが、月経前不快気分障害の治療の場合は排卵後~月経終了まで服用するという使い方をする場合もあります。また、抗不安薬は抗うつ剤と比較して効果がすぐに現れるという特徴を持つため、頓服薬として使うこともできます。衝動性が強い場合などには向精神病薬を使用することもあります。
漢方療法について
漢方を月経前不快気分障害に用いることもあるのですが、西洋薬と比べるといくつか特徴があります。まず、効果が比較的おだやかに出やすいため、即効性を求める場合には向いていません。また、西洋薬より効き方に個人差が出るため、効く人には非常によく効くのですが、効かない場合もありますし、体質によってはむしろ症状が悪化することもあります。
月経前不快気分障害の治療に用いられる薬としては、抑肝散(よくかんさん)、加味帰脾湯(かみきひとう)が挙げられます。抑肝散は不眠症や情緒不安定を、加味帰脾湯は精神不安や心身の疲れを和らげる効果があります。
また、出血量が多いなど婦人科からのアプローチが必要だと判断される場合は、婦人科と精神科・心療内科が連携して治療にあたることもあります。
精神療法について
月経前不快気分障害の方は、ストレスを感じやすい、あるいはストレスに気づきにくい、ストレスへの対処が苦手、という場合が多くあるようです。時にはそれが人間関係の悪化にまでおよんでしまうため、患者さん自身の自己肯定感を損ねてしまっていることがあります。そして、そういった考え方・感じ方の特徴が月経前不快気分障害を重くしている可能性があります。認知行動療法という治療法を用いて、認知の歪み(考え方の片寄り・くせ)を自覚することでストレスに対して適切な反応、処理をできるように訓練し、症状を軽くするという治療も可能です。
最後に
月経前不快気分障害では、身体的な症状も精神症状と合わせて現れやすく、頭痛、腰痛、胸部・腹部の張り、むくみ、便秘といったものが特に多いです。それらを緩和するために、鎮痛剤や下剤、利尿剤などを用いたり、身体の調子を整える目的で漢方を処方することもあります。
月経前に心身が不安定になるのはごく普通であり、ありふれたことです。しかし、それが生活に支障をきたすようなレベルであれば治療が必要です。「調子が悪いのは月経のせいだし、こればかりは仕方がない」と思いこまず、つらい時は医療的ケアを求めることが大切です。医療的な介入により、月経に振り回されることが減り、生活の質が上がればストレスも減り、ストレス減により症状がさらに軽くなる、というサイクルに入れれば理想的ですね。
診察の際は月経の記録を2ヶ月分以上つけて、月経前不快気分障害かもしれないと思っていることを医師に伝えると診察がスムーズですよ。
月経前不快気分障害かもとお困りの方も、名古屋駅のエスカ地下街の心療内科・精神科・メンタルクリニックのひだまりこころクリニック名駅エスカ院へご相談くださいませ。
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