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他の医学的疾患による抑うつ障害~概要・診断基準~
2023.01.192023.05.19
他の医学的疾患による抑うつ障害、うつ病
他の医学的疾患による抑うつ障害~概要・診断基準~
医学的疾患を発症することは大きなストレスであるため、抑うつ症状を引き起こすことがあります。しかし発症のストレスとは別に、医学的疾患の生理学的作用によってうつ病に陥ることもあります。このようなうつ病は「他の医学的疾患による抑うつ障害」と呼ばれるものです。
DSM5における他の医学的疾患による抑うつ障害の概要や診断基準について、この記事では詳細に説明します。
他の医学的疾患による抑うつ障害の概要
他の医学的疾患による抑うつ障害とは、医学的疾患の生理学的作用の結果として生じたうつ病のことです。しかし、医学的疾患の発症というストレスや、その疾患を治療するための医薬品の生理学的作用もうつ病を引き起こすことがあります。また、他の医学的疾患を発症している人がたまたま原発性抑うつ障害を発症する可能性もあります。そのため、抑うつ症状を引き起こした要因について注意深く評価しなければなりません。
抑うつ障害が医学的疾患によって生じたものであるかを判断するうえで、当然のことですが、その医学的疾患を患者さんが本当に抱えていることを確定しなければなりません。医学的疾患が実在するものであることが分かったら、次はその医学的疾患の生理学的作用の結果として抑うつ障害が引き起こされているかを考えます。抑うつ症状と明らかに関連していると言われている医学的疾患の代表例には以下があります。
・脳卒中や頭部外傷といった脳の損傷
・ハンチントン病やパーキンソン病といった神経変性疾患
・クッシング病や甲状腺機能低下症といった神経内分泌疾患
・多発性硬化症
とはいえ、上記の医学的疾患はあくまでも一例にすぎません。うつ病を引き起こす可能性のある医学的疾患を全て把握することは不可能です。
抑うつ障害の発症要因を判断するための指針として、患者さんが抱えている医学的疾患と抑うつ症状との間に病因論があることを示す文献も判断の参考になるでしょう。また、様々な要因を注意深くかつ包括的に評価することも大切です。例えば、発症や悪化、寛解などの医学的疾患の経過と抑うつ症状との間の時間的な関係は参考になります。また、うつ病の家族歴がないことや、発症年齢や経過が非定型的であることなどの原発性抑うつ障害の特徴がないことも、原発性抑うつ障害と鑑別するうえで大切です。
なお、医薬品誘発性抑うつ障害のように他の医学的疾患による抑うつ障害と両立する抑うつ障害もあります。詳しくは後編の鑑別診断で説明します。
他の医学的疾患による抑うつ障害の診断基準
診断基準は以下の通りです。
A 抑うつ気分あるいは興味・喜びの減退といった著しい気分の障害が見られる
B 身体診察の所見や既往歴、検査結果などから、抑うつ症状は他の医学的疾患の直接的な生理学的作用の結果であると考えられる
C その症状は他の精神疾患では説明できない
※医学的疾患の発症というストレスが原因となる「適応障害、抑うつ気分を伴う」と、他の医学的疾患による抑うつ障害は別個である
D せん妄(思考力や注意力、記憶力が急速に低下する状態。回復に数週間かかることもあ
る)状態のときにのみ気分の障害が見られるわけではない
E その症状は、臨床的に意味のある苦痛や、人間関係、仕事、勉学、家事などの大切な領域における機能障害をもたらしている
コードする際の注意点
ICD-9-CMやICD-10-CMにおける他の医学的疾患による抑うつ障害のコードは「293.83」です。なお、ICD-10-CMからは以下の特定用語も記載するようになりました。
・抑うつの特徴を伴う(F06.31):
症状の数や持続期間などの抑うつエピソードの基準を完全には満たさない
・抑うつエピソード様病像を伴う(F06.32):
抑うつエピソードの基準を完全に満たしている
※抑うつエピソードの診断基準C「症状は物質の生理学的作用や他の身体疾患によるものではない」は除く
・混合性の特徴を伴う(F06.34):
臨床像において優勢ではないが躁病・軽躁病の症状も見られる
また、どのような医学的疾患を抱えているかについてもICDではコードします。コード方法には以下の2パターンがあります。甲状腺機能低下症が原因で抑うつ障害を発症したケースを考えていきましょう
「他の医学的疾患による抑うつ障害」の病名中に他の医学的疾患の病名を入れる
293.83[F06.31]甲状腺機能低下症による抑うつ障害、抑うつの特徴を伴う
「他の医学的疾患による抑うつ障害」の前に他の医学的疾患を別個にコードする
244.9[E03.9]甲状腺機能低下症:293.83[F06.31]甲状腺機能低下症による抑うつ障害、抑うつの特徴を伴う
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