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物質・医薬品誘発性抑うつ障害~危険要因と予後要因、自殺のリスクなど~
2023.04.192023.05.19
物質・医薬品誘発性抑うつ障害、うつ病
物質・医薬品誘発性抑うつ障害~危険要因など~
前編の記事では、DSM5に基づいて物質・医薬品誘発性抑うつ障害の概要やその診断基準などを説明しました。
後編では、物質・医薬品誘発性抑うつ障害の危険要因などを解説します。
有病率
物質・医薬品誘発性抑うつ障害の日本における有病率は、明らかにはされていません。なお、アメリカにおける成人の生涯有病率は0.26%であると考えられています。
危険要因
リスクファクターには以下があります。
気質要因
アルコールや薬物使用のリスクファクターとして、心理社会的ストレスやうつ病の既往歴、薬物誘発性抑うつの既往歴などがあります。
環境要因
特定の種類の医薬品はリスクとなるため、注意しなければなりません。例えば、経口避妊薬を服用しているときにエストロゲンやプロゲステロンを大量に投与されると、うつ病のリスクが高まります。また、C型肝炎の治療に先行して免疫活性を亢進させることは、インターフェロンアルファ誘発性抑うつと関連しています。
経過の修飾要因
あくまでもアメリカにおける報告ですが、物質誘発性抑うつ障害の患者さんは物質使用とは関係ないうつ病の患者さんと比べて、以下に当てはまりやすいです。
・男性
・アフリカ系
・高卒以下の学歴
・保険に入っていない
また、家庭の収入が低い傾向にあることも分かっています。
特定の医薬品
以下にあげる医薬品は抑うつ症状と関連すると考えられています。このような医薬品の使用歴を調べることは、より的確な診断を下すことに繋がるでしょう。
・抗ウイルス薬(エファビレンツ)
・心血管作動薬(例 クロニジン、グアネチジンなど)
・レチノイン酸誘導体(イソトレチノイン)
・抗片頭痛薬(トリプタン系)
・ホルモン製剤(例 副腎皮質ステロイド、経口避妊薬など)
・禁煙治療薬(バレニクリン)
・免疫学的医薬品(インターフェロン)
・抗うつ薬や抗けいれん薬、抗精神病薬
診断マーカー
疑わしい物質について血液や尿を検査室で分析することによって、診断を確認できることがあります。
鑑別診断
物質・医薬品誘発性抑うつ障害は、物質中毒と離脱や、他のうつ病と鑑別しなければなりません。
物質中毒と離脱
抑うつ自体は物質中毒や離脱でも生じることが多いです。その物質で通常見られるものより抑うつ症状が重症である、あるいは持続期間が長いなどの理由から臨床上の関わりが必要な場合にのみ物質・医薬品誘発性抑うつ障害の診断が下されます。そうではない場合は物質中毒あるいは物質離脱の診断となります。
原発性抑うつ障害
抑うつ症状の原因として物質が関係していないと判断される場合、原発性抑うつ障害の診断を下されます。
他の医学的疾患による抑うつ障害
医学的疾患の治療中の患者さんに抑うつ症状が生じた場合、その抑うつ症状の原因として医薬品だけではなく医学的疾患の生理学的結果も考えなければなりません。原因を判断するにあたり、一番の根拠はこれまでの経緯となります。経緯からは判断できない場合、その医薬品が変更されたり、中止されたりすることもあります。抑うつ症状の原因が医学的疾患と医薬品の両方であると判断される場合は、他の医学的疾患による抑うつ障害と物質・医薬品誘発性抑うつ障害の両方の診断名を付けてよいです。医学的疾患と医薬品ともに抑うつ症状の原因としての根拠が不十分であり、かつ原発性抑うつ障害とも考えられない場合は、他の特定される抑うつ障害または特定不能の抑うつ障害の診断名が付けられます。
併存症
危険要因と予後要因の経過の修飾要因の通り、物質・医薬品誘発性抑うつ障害の患者さんは低学歴であったり、収入が低かったりすることが多いです。それと関連して病的ギャンブルや妄想性パーソナリティ障害(現実離れしているほど強い不信感を他者に抱きやすく、人間関係が破綻しているという問題を抱えている障害)、演技性パーソナリティ障害(自分とかかわりのある他者から注目されたいと思い、時には自殺のそぶりをするように注意を引くための過度な行動を取る)、反社会性パーソナリティ障害(社会のルールを破ったり、他者を傷つけたりすることに罪悪感を持たない障害)などが併存されやすいです。また、持続性抑うつ障害はあまり併存されません。
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