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発達障害に対する薬の補助効果
2021.05.262022.06.08
大人の発達障害・ADHD
発達障害に対する薬の補助効果とは
注意欠陥多動性障害(ADHD)や自閉症スペクトラム障害(ASD)といった発達障害を完全に治す薬は、2021年の時点ではまだありません。しかし、薬を使うことで、患者さんが生きていきやすくなるようにサポートすることはできます。
この記事では発達障害に対する薬の補助効果について解説します。
ADHDと薬
ADHDの薬として一番エビデンスが豊富なのが、メチルフェニデートです。
成人のADHDの診断と薬
発達障害は生まれつきのものなので、子どもの頃からずっと機能障害が続くことは少なくありません。子どもの頃から多動性障害などの診断が付くほど日常生活に支障が出ている患者さんの場合、薬物療法が第一選択となります。ADHDの第一選択薬はメチルフェニデートです。子どもの頃からADHDの薬物療法を受けていて現在も症状が続いている場合、基本的に子どもの頃と同じ治療を続けることが推奨されます。
しかし、子どもの頃は変わった子どもとして見過ごされて、大人になってから自身をADHDなのかもしれないと思って受診する患者さんも少なくありません。新規でADHDを診断する場合は、Diagnostic Interview for DSM-Ⅳ ADHD(DIVA)などの診断面接評価を使って症状や機能障害を診断することが推奨されています。また、診断の際は患者さんを子どもの頃から知っている親などからも話を聞いて、包括的に診断しなければなりません。
うつ病のなどの精神疾患と異なり、ADHDは薬では症状や問題を根本的に解決できません。とはいえ、子どもの場合と同じく、成人の場合でもメチルフェニデートが第一選択薬となります。薬は、あくまでも心理行動学的、教育的、職業的ニーズに対応するための治療計画の一環でしかないことを理解する必要があります。
メチルフェニデートを扱う上での注意点
メチルフェニデートの副作用として不眠や食欲不振、血圧上昇などがあります。一般的にこれらは対症療法や薬の減量などでも対処できますが、体重や血圧、心拍数などをモニタリングしておいたほうがよいでしょう。
また、小児期にADHDを見過ごされた患者さんの場合、周りとのトラブルから反社会性人格障害や物質乱用などの問題を抱えていることは少なくありません。メチルフェニデートは精神刺激薬なので、もし患者さんが薬物乱用する心配がある場合は、メチルフェニデートではなくアトモキセチンの使用が強く推奨されます。
ただ、薬を服用していても機能障害がある場合や、薬の効果があまり見られない場合もあります。この場合は、認知行動療法を行うことも一つの策です。
ASD(自閉症スペクトラム)と薬
ASDの症状の緩和や併存する問題を解決するための補助手段として、薬が使われます。
①限定された反復行動と興味
限定された反復行動と興味を改善するための第一選択は行動療法です。
ただし、重度な問題となる場合や自傷他害の恐れがある場合は、薬物療法を行うこともあります。この問題を改善するために最も広く使われているのは、SSRIです。ただし、SSRIがこの問題を緩和することを支持するエビデンスもありますが、その効果は一貫したものではない点には注意が必要です。
他の薬としては第二世代抗精神病薬や抗てんかん薬、オキシトシン、リスペリドンなどがあります。リスペリドンは易刺激性や攻撃性、常同行動などを緩和したと報告する研究もあります。ただし、小児や青年期のASDに対するリスペリドンの長期使用の安全性についてはまだ結論が出ていないので、使用は注意が必要です。
②コミュニケーションの障害
薬ではコミュニケーションの障害を直接的に治すことはできません。しかし、リスペリドンを使うことで易刺激性が緩和され、結果としてコミュニケーションの障害が改善されることが期待されます。
他に効果が期待されるのが、グルタミン酸作動薬やオキシトシンです。ただ、12件のRCTを対象としたメタ解析の結果、オキシトシンによる改善は有意ではないことが示されました。sulforaphaneやインスリン増殖因子1(IGF-1)などの研究が、現在進められている段階です。
③ASDに併存する問題
ASD患者さんの70%が1種類、41%が2種類の精神障害や問題を併存していると言われています。併存症や問題に薬で対処する場合があります。
・ADHDの不注意や多動性、衝動性
ADHDと薬でも解説した通り、メチルフェニデートが第一選択薬となります。ただし、ADHD単独の場合と比べてADHDとASDが合併している場合、薬の効果にはかなりばらつきがあるようです。
・易刺激性
重度な自傷他害が見られる場合は薬物療法が必要です。リスペリドンやアリピプラゾールが易刺激性や攻撃性の改善に比較的効果があることが分かっています。
・睡眠障害
睡眠障害の原因によって、薬が変わります。易刺激性の亢進による睡眠困難の場合はリスペリドンが、不安や抑うつが原因の睡眠困難な場合は抗うつ薬が、過覚醒が原因の不眠にはクロニジンやクロナゼパムが有効である可能性があることが指摘されています。また、最近ではメラトニン系の異常にも注目が集まっています。
・うつ病や不安
一般にうつ病や不安の治療ではSSRIが広く用いられていますが、ASDでは特異的な効果は示されていません。
まとめ
発達障害の問題は薬だけでは治せませんし、解決ができるものではありません。薬物療法だけではなく心理社会的な介入や行動的介入など、包括的なサポートが必要になります。
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