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「あの人、発達障害かも」と思ったときにしてはいけないこと
2025.05.132025.05.13
自閉症スペクトラム・ASD、大人の発達障害・ADHD
発達障害に対する誤解とラベリングを避けるために必要な視点
日常生活の中で、同僚や友人、あるいは家族との関わりに戸惑いを感じることがあります。たとえば「空気が読めない」「同じミスを繰り返す」「会話がかみ合わない」といった場面で、「この人、もしかして発達障害かも…?」と感じることがあるかもしれません。
近年、発達障害に関する情報が広まり、特に大人の発達障害(ASDやADHD)が注目されるようになったことで、私たちは以前よりも多くの「特性」に気づけるようになってきました。しかしその一方で、素人判断による“ラベリング”や“決めつけ”が、相手との関係性を損なうばかりか、誤った理解を広めてしまうリスクも増えています。
本記事では、「あの人、発達障害かも」と感じたときに避けるべき言動と、適切な向き合い方について、精神科的視点から解説します。
「発達障害かも」と思う、その直感はどこからくるのか
「普通じゃない」「変わっている」と感じる瞬間、人は何かしら“理由”を探そうとします。発達障害という言葉は、その“理由付け”として近年よく使われるようになりました。
たとえば
- 一方的に話し続けてしまう(→ ASD?)
- ケアレスミスが多く落ち着きがない(→ ADHD?)
- 職場での人間関係が極端に苦手(→ ASD?)
こうした特徴は確かに、発達障害の診断基準と重なる部分もあります。しかし重要なのは、それだけでは診断にならないという点です。
発達障害は、「特性があること」だけでなく、それによって日常生活や社会生活にどれほどの困難が生じているかまでを含めて、医学的に評価される必要があります。つまり、“性格の一部”なのか“医療的な支援が必要な状態”なのかは、専門的な判断が不可欠なのです。
してはいけないこと①:本人に「発達障害なんじゃない?」と言う
よかれと思って「専門家に相談してみたら?」「発達の特性かもしれないね」と声をかける人もいるかもしれません。しかしこのような言葉は、非常にデリケートで慎重に扱うべきです。
発達障害の当事者は、「変わっている」と言われてきた過去を持っていることが少なくありません。「また否定された」と感じることで、信頼関係が壊れたり、自尊心が大きく傷つく可能性もあります。
また、発達障害という言葉自体に強い偏見や誤解を抱いている人もいます。医療の専門家でない限り、その言葉を安易に使うことは避けるべきでしょう。
してはいけないこと②:「発達障害だから仕方ない」と片づける
逆に、「あの人は発達障害だから、もう関わっても無駄」「注意しても意味がない」といった諦めのような見方も、関係性を壊す要因になります。
発達障害がある人の多くは、周囲のサポートや環境調整によって、大きく生きやすさが改善されます。また本人も、自分の特性を理解した上で努力しているケースが多くあります。
「どうせ無理」と決めつけることは、本来できるはずの支援や関係性の構築を妨げてしまうのです。
してはいけないこと③:ネット情報やチェックリストで“診断”してしまう
インターネットには「あなたは発達障害?」といったチェックリストが数多く存在します。確かに、これらは自分を振り返るきっかけにはなるかもしれませんが、診断ツールではありません。
発達障害の診断は、精神科や発達専門の医師・臨床心理士が、詳細な問診・生育歴の確認・必要に応じた心理検査などを含めた総合的な評価によって行います。
「当てはまる項目が多かったから」といった理由で、自己判断をしたり他人にあてはめたりすることは、非常に危険な行為です。
正しい対応とは「困りごと」ベースで考える
では、どう接するのが望ましいのでしょうか?
キーワードは、「特性」ではなく「困りごと」ベースで考えるという視点です。
たとえば、「連絡がいつも遅い」「報連相が苦手」という相手に対して、「なぜそれがうまくできないのか?」「どうしたら助け合えるか?」といった現実的な視点から関係を見直すことが大切です。
本人の苦手を責めるのではなく、環境やコミュニケーションの工夫によって改善の余地を探る。その積み重ねが、結果的に「生きづらさ」の緩和や相互理解につながります。
相談のすすめ:本人が困っている場合は専門家へ
もし、当の本人が「うまくいかないことが多い」「職場で浮いてしまう」といった悩みを抱えているようであれば、精神科や心療内科への相談を勧めることは有効です。
ただし、その際も「あなたは病気かもしれない」と指摘するのではなく、「自分を理解する手助けになるかもしれない」「今より楽に働けるヒントがあるかもね」といった前向きなニュアンスで伝えるのが望ましいでしょう。
まとめ:ラベルよりも、関係性に目を向ける
人は誰しも、得意なことと苦手なことがあります。発達障害の「特性」は、その“凸凹”がやや極端に現れる形とも言えます。しかしそのことを理由に、他者をカテゴライズしたり、線引きしてしまうと、人間関係の本質を見失ってしまう危険性があります。
「この人、発達障害かも」と思ったときこそ、その人の“困っていること”や“強み”に目を向け、関係性をどう築くかを丁寧に考えてみてください。診断を下すのは医療の仕事ですが、良い関係をつくる努力は、誰にでもできることです。
野村紀夫 監修
医療法人 山陽会 ひだまりこころクリニック 理事長 / 名古屋大学医学部卒業
保有資格 / 精神保健指定医、日本精神神経学会 専門医、日本精神神経学会 指導医、認知症サポート医など
所属学会 / 日本精神神経学会、日本心療内科学会、日本うつ病学会、日本認知症学会など
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