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発達障害グレーゾーンって?「診断はされないけれど、生きづらい」あなたへ
2025.04.182025.04.18
自閉症スペクトラム・ASD、アスペルガー症候群、発達障害グレーゾーン、大人の発達障害・ADHD
「発達障害グレーゾーン」という言葉を聞いたことがありますか?
最近、「自分は発達障害かもしれない」と感じて、検索する方が増えています。そしてその中でよく見かけるのが「発達障害グレーゾーン」という言葉。明確に診断されたわけではないけれど、日常生活の中で「人と同じようにできない」「疲れやすい」「周囲と噛み合わない」そう感じている方にとって、この言葉は強く引っかかるものかもしれません。
けれど、「グレーゾーン」という言葉の定義はあいまいで、医学的に明確な基準があるわけではありません。今回は、「発達障害グレーゾーン」と呼ばれる状態が、どのようなものなのか、そしてその背景や向き合い方についてお話しします。
発達障害とは?まずは基本的な理解から
まず「発達障害」とは、生まれつきの脳機能の特性により、社会生活や対人関係で困りごとが生じやすい状態を指します。主な分類には以下の3つがあります。
- 自閉スペクトラム症(ASD):対人関係の苦手さ、こだわりの強さなどが特徴
- 注意欠如・多動症(ADHD):不注意、衝動性、多動などが目立つ
- 学習障害(LD):読み書きや計算など、特定の分野に著しい困難がある
これらの発達障害は、正式な診断基準(DSM-5など)に基づいて診断されますが、その「診断のライン」に明確に達していない、けれど困りごとを抱えている人たちが、「グレーゾーン」と呼ばれることがあります。
「発達障害グレーゾーン」とはどういう状態?
「グレーゾーン」とは、文字通り「白でも黒でもない」領域です。具体的には、以下のような状態が該当します。
- 特性はあるけれど、診断基準をすべて満たしていない
- 子どもの頃に問題はあったが、大人になってある程度カバーできている
- 本人や周囲の工夫で、日常生活には(なんとか)適応できている
- 明確な診断名はつかないが、対人関係や仕事に大きなストレスを感じている
たとえば、「人の話を聞いている途中で思考が飛んでしまう」「こだわりが強くて職場で浮いてしまう」「音や光、匂いに敏感で、生活に疲れてしまう」などの困難を抱えながらも、診断名がつかないケース。こうした人は、実は少なくありません。
「グレーゾーン」は、見えにくいからこそ苦しい
発達障害の診断がつけば、理解や支援の対象になることが増えます。ところが、グレーゾーンの人は「普通に見える」ことも多く、周囲からの理解を得にくいという現実があります。
- 「あなたならできるでしょ?」と言われて、限界まで無理してしまう
- 自分でも「これくらい、できるはず」と思い込んでしまう
- 失敗や疲労のたびに、「自分はダメなんだ」と強く自己否定してしまう
つまり、「できる/できない」の間にいるからこそ、本人にとっての“しんどさ”が積み重なってしまうのです。
発達障害グレーゾーンとHSPは違うの?
「グレーゾーン」と混同されやすい言葉に「HSP(Highly Sensitive Person)」があります。HSPは「発達障害」ではなく、生まれつき感受性が高く、刺激に敏感な気質のことを指します。
たとえば以下のような傾向があります:
- 他人の気分や声色に強く反応してしまう
- 音や光に過敏で、人混みが苦手
- 緊張しやすく、ミスが気になり続ける
HSPの人も、仕事や人間関係でのストレスを感じやすく、「生きづらさ」に直面することがあります。発達障害グレーゾーンとの違いは、「構造的な脳の特性」か「気質的な敏感さ」かという点にありますが、日常の困りごとは重なる部分も多いです。
診断がつかなくても、「困っている」ことが事実なら、それが大切
「診断がつかないなら、我慢するしかないの?」と不安になる方も多いですが、答えはNOです。
医療の世界でも、最近では「診断名よりも支援の必要性を重視する」という考え方が広がりつつあります。つまり、「診断はつかないけれど困っている」状態こそ、相談すべきサインだということです。
こんなときは、医療機関への相談をおすすめします
次のような困りごとが続いている場合、心療内科や精神科、発達外来での相談を検討してみてください。
- 社会生活や仕事に明らかな支障を感じている
- 対人関係でのトラブルや孤立が繰り返される
- 不安や抑うつ、強い疲労感が慢性的に続いている
- 「自分は違うのでは?」と強い自己否定がある
医療機関では、心理検査や診察を通じて、自分の傾向を知る手がかりを得ることができます。診断を受けることだけが目的ではなく、「自分の特性を理解して、どう向き合っていくか」がとても大切です。
「グレーゾーン」こそ、自分に合ったケアを見つけることが大事
診断がつかないからといって、無理に「普通」に合わせる必要はありません。むしろ、自分の特性に合った環境や習慣、働き方を見つけることが、長期的な安定につながります。
たとえば
- 刺激の少ない環境で仕事をする
- 完璧を目指さず、「7割でOK」と考える
- 苦手なことはなるべくアウトソースする
- 精神療法や心理支援を取り入れる
こうした工夫を少しずつ取り入れていくだけで、日々の“生きづらさ”は少しずつ緩和されていきます。
「グレーゾーン」違和感の正体と、そこから始まる自己理解
「発達障害グレーゾーン」という言葉に引っかかるとき、それは「自分をもっと知りたい」という心のサインかもしれません。
診断がついてもつかなくても、あなたが日常の中で感じている“つらさ”や“違和感”は、確かにそこにあります。だからこそ、無理にがんばりすぎず、少しずつ自分の特性と向き合っていくことがとても大切です。
困ったときは、どうか一人で抱え込まず、信頼できる医療機関や支援者にご相談ください。大切なのは、病名といったラベルではなく、“あなたらしく過ごせる方法”を見つけることです。
野村紀夫 監修
医療法人 山陽会 ひだまりこころクリニック 理事長 / 名古屋大学医学部卒業
保有資格 / 精神保健指定医、日本精神神経学会 専門医、日本精神神経学会 指導医、認知症サポート医など
所属学会 / 日本精神神経学会、日本心療内科学会、日本うつ病学会、日本認知症学会など
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