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F32うつ病エピソードの診断基準
2021.06.082022.06.08
ICD-10、うつ病
F32うつ病エピソードの診断基準
現代の日本における5大疾病は、がん、脳卒中、急性心筋梗塞、糖尿病、そして精神疾患です。精神疾患と一括りにされていますが、その中で割合が最も高いのが気分障害です。
この記事では気分障害のひとつであるうつ病エピソードについて、ICD-10に基づいた診断基準を解説します。
F32うつ病エピソードの診断基準の概要
うつ病は、気分の落ち込みやポジティブ感情の喪失、意欲・活動性の低下などの気分の問題を主症状とする疾患です。
うつ病は、以下の基本症状とその他の症状を満たす数や、症状が日常生活や社会的活動をどの程度妨げているかに基づいて診断されます。基本的には症状が2週間ほど続くことが診断を行ううえで必要となります。ただし、非常に重症である場合や急激に症状が起きた場合などは、症状の持続期間が2週間に満たなくてもうつ病エピソードと診断されます。
・基本症状
- 1) 抑うつ気分
- 2) 興味と喜びの喪失
- 3) 易疲労性(疲れやすくなる)、あるいは活動性の減少
- ※わずかであれば頑張れるが、その後は強い疲労感を抱く
・その他の症状
- a) 集中力や注意力の低下
- b) 自己評価や自信の低下
- c) 罪責感や自己の無価値観
- d) 将来に対する悲観的な思考
- e) 自傷あるいは自殺の観念や行為
- f) 睡眠障害
- g) 食欲減退
症例によっては、不安や苦悩、激越(非常に強い不安からそわそわしたり落ち着かなくなったりする)のほうが抑うつよりも強いことがあります。また、他の恐怖症や強迫症状、過度の飲酒、心気症的なとらわれから、気分の問題が見えにくいこともあります。認知症や知的障害のある患者さんの場合は、自分の症状を上手く話せないこともあるでしょう。うつ病エピソードは気分の問題がメインですが、他者から見て分かる精神運動静止(思考が回らないので集中できない、会話が遅い、考えがまとまらなくなるなど)や体重の減少、睡眠障害なども診断を行ううえで重要です。
うつ病エピソードの身体症候群
身体症候群と呼ばれる特徴的な症状の有無を、診断の5桁目の数字に示すこともあります。なお、身体症候群については記載しなくても問題はありません。
・身体症候群
- いつもは楽しいと感じられることが、楽しいとは感じられない。興味も持てない
- いつもは楽しむことができる状況に対して、何も感じられない
- 早朝覚醒(2時間以上早く目が覚めてしまう)
- 抑うつ気分の日内変動(一般に、午前中に抑うつ気分が強くなる)
- 他者から見て分かるほどの精神運動静止あるいは焦燥感
- 食欲減退
- 体重減少(1ヶ月で体重の5%以上が減る)
- 性欲の減退
身体症候群の有無をF32軽症うつ病エピソードで記載する場合、以下のようになります。
身体症候群がない軽症うつ病エピソード:F32.00
身体症候群が4つ以上(非常に重い場合は2、3つでも)の軽症うつ病エピソード:F32.01
F32うつ病エピソードの各診断基準
うつ病エピソードの重症度の区別は、症状の種類や数、症状の重さの観点から複合的に判断されます。なお、疾患の重症度と日常の社会的活動や職業的活動が阻害される程度は必ずしも一致しないこともあります。そのため、社会的活動については重症度判断のための必須項目ではないです。
F32.0軽症うつ病エピソードの診断基準
・基本症状のうち、少なくとも2つを満たす
・その他の症状のうち、少なくとも2つを満たす
なお、これらの症状はいずれも著しい程度ではないことも、「軽症」の条件となります。
F32.1中等症うつ病エピソードの診断基準
- ・基本症状のうち、少なくとも2つを満たす
- ・その他の症状のうち少なくとも3つ(より望ましくは4つ)を満たす
- 一部の症状は著しい程度になることもあります。
F32.2精神病症状を伴わない重症うつ病エピソードの診断基準
- ・基本症状の全てを満たす
- ・その他の症状のうち少なくとも4つを満たす
- ・症状のいくつかは重症である
なお、精神運動静止のために患者さん本人が正確に症状を話せないこともあります。また、強い苦悩や激越が見られることも多いです。重症な場合は自殺の危険性が高いため、重症うつ病エピソードにほぼ存在する身体症状や、見て分かる患者さんの様子なども参考にして重症度の見極めをしなければなりません。
F32.3精神病症状を伴う重症うつ病エピソードの診断基準
- ・F32.2重症うつ病エピソードの診断基準に加え、妄想や幻覚、うつ病性昏迷(話しかけられても反応できない状態)などが見られる
- 重症うつ病エピソードで見られる幻覚や妄想は、うつ病の特徴が見られます。
- ・幻覚例:切迫した災難、自責、罪業、貧困など
- ・妄想例:中傷や非難してくる声、汚物や肉の腐ったようなにおい
なお、同じ昏迷症状が見られる緊張型統合失調症や解離性昏迷、脳器質性昏迷とは鑑別しなければなりません。
F32.8他のうつ病エピソードの診断基準
- ・問題の本質が抑うつであるが、ここまで挙げてきたうつ病エピソードには合致しない
具体的には、うつ病の診断基準を満たすわけではないが苦悩や困惑、緊張に様々な身体症状が混合しているものや、器質的には問題はないにも関わらず慢性的な痛みや疲労の問題を抱える身体性抑うつ症などです。また、非定型うつ病(基本的には抑うつ気分にあるものの、良いことがあるとすぐに一時的に症状が緩和される)や仮面うつ病(精神症状よりも身体症状が目立つうつ病)もこれに該当します。
F32.9うつ病エピソード、特定不能のもの
特定不能のうつ病や特定不能のうつ病性障害などが該当します。
うつ病のICD-10の診断基準について記載をさせて頂きました。うつ病にはその他に抑うつ症状である適応障害などの診断とも区別がつきづらいこともありますので、自己判断なさらず医療機関迄ご相談くださいませ。
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