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感情調整は月経前不快気分障害(PMDD)の症状を緩和させる方法の1つ

2021.04.122022.06.08

月経前症候群・PMS/月経前不快気分障害・PMDD

月経前症候群も月経前不快気分障害も、月経開始1週間ぐらい前からイライラしたり、涙もろくなったり、眠くなったりと心身の不調が起きるものです。しかし、月経前症候群の中等症の人と月経前不快気分障害の人とでは症状が出る場面に違いがあることが分かっています。その症状が出る場面の違いには、感情調整能力がかかわっていると考えられています。

この記事では、感情調整能力の身に着け方についてお話しします。

月経前不快気分障害によって生じてしまう、感情調整能力の低さが人間関係にも影響

簡単にいえば、月経1週間前からの心身の不調が月経前症候群(premenstrual syndrome:PMS)で、PMSのなかでも特に重度なものが月経前不快気分障害(premenstrual dysphoric disorder:PMDD)です。PMSもPMDDも単にイライラしたり、眠くなったりといった個人の問題だけでは済みません。

特にPMDDはイライラから他の人(特に家族やパートナー)とトラブルを起こしてしまったり、眠さから普段通り仕事ができなくなってしまいます。ひどいときには、子どもの虐待や離婚、自殺願望などとも繋がる危険性があると言われるほどです。

PMDDはPMSが重くなったものというイメージを持たれがちですが、実は違いがあることが分かっています。それは、中等症PMSでは仕事や家事で問題が出やすいけど、PMDDでは対人関係に問題が表れやすいということです。この違いには感情調整能力か関係している可能性があると言われています。

PMDDの感情調節能力について名古屋駅のメンタルクリニックが解説しております

感情調整能力とは何なのか

一言に感情調整能力といっても、感情が不安定なときに作業に集中するのが困難になるとか、感情が不安定になっている自分が嫌だというもの、不安定な感情から立ち直ることができないなど色々なものがあります。

2014年に工藤らが軽症・中等症PMS、PMDDで感情調整能力に違いがあるか調べたところ、PMDDの人はこういった感情調整能力が全般的に低いことが分かりました。そのため、ネガティブな感情の対処能力や、色々なストレスへの対処方法を学ぶことが、PMDDの症状を軽くすることに繋がると考察されています。

感情調整能力を高めるには?

感情調整能力を高めるケアの方法として、3つ挙げてみました。

①敢えてPMDDの影響と割り切って、自分の人格や他の人の批判をしない

嫌なことがあると、「何でいつも自分は…」と自分を責めたり、「何であの人は分かってくれないの!」と人を責めてしまいがちです。そして、そうやって責めている自分がさらに嫌になるという負のスパイラルに陥ってしまいます。しかしPMDDのせいにすることで、「仕方がない」という割り切ることに繋げられるのです。

必要以上に、自分や他人を傷つけることを防ぎます。

②嫌な出来事にも何か良い面はないか、別の見方はできないか考え直してみる

2009年と少し前の研究ですが、秋元らが行った調査によるとPMDDの人はPMSが軽症あるいはPMSがない人と比べて、嫌な出来事をそのまま嫌な出来事として考えてしまうことが分かりました。そのため、嫌な出来事に対して他の見方ができないかという行動はPMDDの症状を軽減するのに役に立つのではないかと考えられています。

「嫌な出来事は嫌な出来事でしょう?」と思われるかもしれませんが、実はそうではありません。例えば、仕事でちょっと失敗して上司から叱られたとします。そのまま事態を受け取ったら、「また失敗して、自分はどうしようもない」とか「上司は口うるさくて嫌になる」など、嫌な気分になると思います。

しかし、上司に叱られたという同じ事態でも、「上司が先に気づいてくれたから大きな問題にならなくて済んだ」とか「上司は自分に期待しているからこそ、厳しく接しているのだ」と思うと、ちょっとストレスが低くなりませんか。

このような考え方を変えることを認知的再解釈というのですが、ストレスというのは考え方次第で変わってくるのです。

③無理して嫌な感情を抑え込もうとしない

ネガティブな感情を感じたくないからといって、無理に抑え込もうとしていませんか。実は、これは逆効果です。ウェグナーという心理学者は1987年にある実験を行いました。

その実験では白熊の映像を見せる前に「白熊のことを絶対に考えないでください」と言った条件と、言わなかった条件がありました。

「白熊のことを考えないでください」と言われた条件ではかえって白熊について実験参加者は考えてしまったという結果になりました。これは白熊効果(専門的には抑制の逆説的効果や皮肉過程理論などと呼ばれます)といいますが、絶対に考えないようにしようとすればするほど、そのことをつい考えてしまうものです。

そのため、嫌な感情であっても無理に追い出そうとしないほうがよいものです。

月経前症候群・PMSの診断や治療なら心療内科へご相談ください

まとめ

PMDDの人にとって月経前1週間は鬼門なので、その時期だけ何とかできないかと思いがちです。しかし、普段からの感情調整能力を高めることで、月経前1週間も上手く自分や周りの人と付き合っていけるように向き合えるかもしれません。周りの人とのトラブルを起こさないことは、トラブル後の自己嫌悪を未然に防ぐことに繋がります。良い循環が生まれますので、ぜひ実践してみてください。

文献
秋元世志枝・宮岡佳子・加茂登志子 (2009).  月経前症候群、月経前不快気分障害の女性の臨床的特徴とストレス・コーピングについて 跡見学園女子大学文学部紀要 43, 45-60.
工藤未妃・石村郁夫・青木佐奈枝 (2014). 月経前症候群(PMS)重症度別における感情調節機能の特徴 日本心理学会第78回大会
Retrieved from http://www.myschedule.jp/jpa2014/detail.php?sess_id=980(2020/08/01)

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野村紀夫 監修
医療法人 山陽会 ひだまりこころクリニック 理事長 / 名古屋大学医学部卒業
保有資格 / 精神保健指定医、日本精神神経学会 専門医、日本精神神経学会 指導医、認知症サポート医など
所属学会 / 日本精神神経学会、日本心療内科学会、日本うつ病学会、日本認知症学会など

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