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重篤気分調節症~概要・診断基準~
2022.12.232022.12.23
重篤気分調節症、うつ病、双極性障害・躁うつ病
重篤気分調節症について
気分障害に関連した精神疾患群の分類がDSM5では大きく変わりました。
DSM5における抑うつ障害群について、DSM4からの大きな変更点と、抑うつ障害群のひとつである重篤気分調節症について、この記事では説明します。
DSM5における抑うつ障害群
DSM4では、うつ病と躁うつ病が気分障害に分類されていました。しかし、症候論や家族論、遺伝的な観点などからうつ病と躁うつ病は異なることが分かってきました。そのため、うつ病と躁うつ病は分けてカテゴライズされるようになったのです。うつ病やそれと関連する精神疾患は、DSM5では「抑うつ障害群」と分類されています。
抑うつ障害群の病状は、うつ病と聞いて多くの人がイメージするものと言えます。非常に悲しい気分やそれに伴う身体的・認知的変化などが生じ、その結果、勉学や仕事、家事などの活動に大きな支障がもたらされるというものです。
重篤気分調節症の概要
一言でいうと、重篤気分調節症とは子どもにおけるうつ病です。しかし、その特徴はうつ病に典型的な悲しい気分ではありません。その子どもの発達水準に合わないほどの激しいかんしゃくや易怒性(怒りっぽさ)が1年間以上続くというものです。
るということはエネルギーが溢れているとも表現できることから、うつ病ではなく躁うつ病のカテゴリーに分類されるほうが適切ではないかと思われるかもしれません。しかし、重篤気分調節症の子どもは青年期・成人期以降では躁うつ病よりも単極性の抑うつ障害群や不安症群を患うことが多いという知見の積み重ねから、このような分類となりました。
躁うつ病と重篤気分調節症を鑑別するうえでポイントとなるのは、易怒性がエピソードのあるものか否かという点です。映画でエピソード△と表現されるように、エピソードとはそれなりに長いまとまった話を意味します。転じて、精神医学では「ある病状が続いている期間」をエピソードと表現します。例えば、躁病エピソード、抑うつエピソードといった具合です。躁うつ病と異なり、重篤気分調節症の子どもは毎日ほぼ終日怒りっぽい気分状態にあります。そのため、特定の期間だけ怒りっぽかったということはありません。
また、年齢分布についても躁うつ病と重篤気分調節症では異なります。躁うつ病の罹患率は思春期以前では1%未満と非常に少ないです。そして、成人期早期になるにつれて罹患率が1~2%に増えていきます。反対に、子どもや思春期の患者さんにおける重篤気分調節症の6ヶ月~1年間の有病率はおよそ2~5%と言われており、決して低くありません。しかし、激しいかんしゃくや怒りといった症状は成人期に移行するに連れて減少していきます。
重篤気分調節症の診断基準
重篤気分調節症の診断基準は以下の通りです。
A 状況やきっかけと比べて非常に強い、あるいは長時間に渡るかんしゃく発作を起こす
かんしゃく発作の例…激しい暴言、物への八つ当たり、自分や他人への攻撃的行動
B かんしゃく発作は、その子どもの発達水準にそぐわない
C 週に3回以上、かんしゃく発作を起こす
D かんしゃく発作を起こしていないときであっても、ほぼ毎日終日易怒性を示す
※子どもの周囲にいる両親や教師、友人などが「あの子は怒りっぽい」と思うほど、易怒性はその子どもの特徴になっている
E 基準A~Dは12ヶ月以上持続している。
また、基準A~Dの全てを満たさない期間が3ヶ月以上続くことはない
F 基準AとDは家庭や学校、友人関係のうち2つ以上の場面で該当する。
少なくとも1つの場面で顕著に認められる
G 6歳未満の子どもあるいは18歳以上の青年期の患者さんに対して、初めてこの診断を
下してはいけない
H 基準A~Eは10歳以前から認められる
I 躁病あるいは軽躁病の診断基準を完全に満たすほどに高揚した気分や肥大した自尊心などが1日以上見られることはない
※子どもの発達水準からみて起こりうる気分の高揚は除く
例えば、9歳ぐらいの子どもは大人気のゲームソフトをプレゼントにもらうと非常に喜ぶが、そういったものは除外する
J 激しいかんしゃく発作はうつ病のエピソード中にのみ起こるわけではない
また、他の精神疾患ではかんしゃく発作や易怒性を上手く説明できない
(例)自閉症スペクトラム症、心的外傷後ストレス障害、分離不安症、
持続性抑うつ障害(気分変調症)など
※鑑別基準については後編の記事で解説します
K 薬物の生理学的作用や、他の医学的あるいは神経学的疾患によって生じた症状ではない
重篤気分調節症に特徴的な臨床症状としては、①かんしゃく発作が何度も起こる(基準C)、②かんしゃく発作の間欠期でもほとんど怒りっぽい状態にある(基準D)の2点が挙げられます。
重篤気分調節症の症状の発展と経過
幼い頃は激しいかんしゃくという形で抑うつ症状が現れますが、これは成熟に伴って変わると考えられています。そのため、重篤気分調節症の診断名を下すのは、その妥当性が確立されている6~18歳に限定するべきとされています。また診断の年齢的な条件として、6歳未満の子どもに対してこの診断を下すべきではない、この疾患の発症は10歳以前であるなどもあります。
概要でもお伝えした通り、重篤気分調節症から躁うつ病に移行することは稀です。この疾患の経過として、成人期では単極性抑うつ障害や不安症群を発症するリスクが高いです。
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