名古屋駅から徒歩1分の心療内科・精神科・メンタルクリニックのひだまりこころクリニック名駅エスカ院がF94小児期および青年期に特異的に発症する社会的機能の障害の診断基準について解説

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F94小児期および青年期に特異的に発症する社会的機能の障害の診断基準

2024.05.272024.05.31

ICD-10、コミュニケーション障害

子供のコミュニケーション障害について

一言に、子どもの社会的機能(コミュニケーション能力)の障害といっても、発達障害のように生まれつきの脳の障害に由来するものもあれば、深刻な環境の歪みや不適切な養育(いわゆる虐待)に由来するものがあります。

この記事では、後者に該当するF94小児期および青年期に特異的に発症する社会的機能の障害について、ICD-10をベースに説明します。

F94小児期および青年期に特異的に発症する社会的機能の障害の概要

同じコミュニケーション能力の障害であっても、小児期および青年期に特異的に発症する社会的機能の障害と広汎性発達障害では以下の点で異なります。

  • 脳の障害という素質的なコミュニケーション能力は欠如していない
  • 特に小児期の反応性愛着障害や脱抑制性愛着障害では、深刻な環境の歪みが病因となることが多い
    ※環境による影響が大きいため、正常な環境で養育されれば障害は大幅に改善される

F94小児期および青年期に特異的に発症する社会的機能の障害の各診断基準

この障害の下位診断の代表的なものとして、選択性緘黙のほかに小児期の反応性愛着障害や脱抑制性愛着障害があります。なお、これらの障害群にも診断ガイドラインはありますが、うつ病や神経性障害などと違って確実なものではありません。

F94.0選択性緘黙の診断基準

  • 言語理解能力に問題はない
    ※言語発達の遅れが見られるのは少数
  • 表出性言語能力に問題はない
    ※発音の障害が見られるのは少数
  • その子どもが一定時間の間ずっと会話できない状況がある一方で、正常に会話できる状況もある
    ※会話できない状況と会話できる状況には一貫性があって、予想できる

選択性緘黙とは家族や仲の良い友達といる状況では普通に会話できるけれども、学校や知らない人ばかりの状況では話せなくなるといった、相手・状況によって話せないというコミュニケーションの障害です。なお、会話できる相手・状況は子どもによって異なり、逆に家庭では会話できないということもあります。

話す必要がないから「話さない」のではなく、不安の強さから「話せない」状態になっていると考えられています。それというのも、社会的過敏性や社会的不安、社会的引きこもりといった不安になりやすい気質が選択性緘黙を患う子どもに見られることが多いためです。

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F94.1小児期の反応性愛着障害の診断基準

  • 養育者(主に親)との異常な関係パターンを5歳以前から示す
    (例)養育者に抱っこされているときに養育者のほうを全く見ない
  • 視線をそらしながら養育者に近づく

小児期の反応性愛着障害の関係パターンを簡単に表現すると、養育者に近づきたいけど近づけないアンビバレントな関係と言えます。

通常、お腹が空いたときの授乳や寂しいときの抱っこなどの赤ちゃんのときのスキンシップやお世話を通して、子どもは親との間に愛着関係(心の絆)を築き、親を安全基地(心の拠り所)としていきます。親が安全基地となることで、新しい人とも親しい関係を築くことができるようになります。しかし、身体的虐待や心理的虐待、ネグレクトなど養育環境に深刻な歪みがあると、養育者と愛着関係を築くことができなくなり、アンビバレントな関係となるのです。なお、虐待されたら必ずこの障害になるというわけではないため、虐待の有無は診断基準とはなりません。

この障害の中核は愛着の問題ですが、みじめさを感じるという情緒障害や自分や他者への攻撃性、興味はあるものの友だちと遊べない、過度の警戒心などの問題も見られることが多いです。また、通常の子どもは励ませば元気になりますが、反応性愛着障害を抱えた子どもの場合は励ましても恐れや警戒心は消えません。この障害では身体的発達不全を合併していることもあります。その場合は、「R62」の身体的コードが診断に付加されます。

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F94.2小児期の脱抑制性愛着障害の診断基準

  • どんな状況であっても、たとえ初対面の人であってもしがみついたり、注意を引こうとしたりするなど、みさかいのない愛着を5歳以前から示す
    ※2歳ぐらいまでは、誰にでもべったりくっつく
  • 4歳ぐらいになると、くっつく行動ではなく注意を引こうとする行動や親し気な行動が見られる
  • 小児期の中・後期では特定の相手に愛着を形成することもあるが、注意を引こうとする行動は続く

小児期の脱抑制性愛着障害の関係パターンを簡単に表現すると、誰でもよいから愛情が欲しい関係と言えます。通常、子どもは親との愛着関係をベースにして、少しずつ他の人と愛着関係を形成していきます。初対面の人にべったりくっつくことはありません。しかしこの障害の子どもの場合は、とにかく愛情や安全を求めるかのように誰にでもしがみつこうとします。なお、しがみつこうとする対象は基本的に大人であり、同じ子ども同士ではあまり交流しません。

乳幼児期の頃から施設で育てられたり、離婚のように養育者が何度も変わったりするなど、特定の養育者との間に愛着関係を形成できなかった子どもで、この障害が見られることが多いです。なお小児期の反応性愛着障害と異なり、脱抑制性愛着障害では情緒障害や行動障害を必ずしも伴うとは限りません。

ほか、これまでのカテゴリーに該当しないものとして、「F94.8他の小児期の社会的機能の障害」、「F94.9小児期の社会的機能の障害、特定不能のもの」があります。F94小児期および青年期に特異的に発症する社会的機能の障害の診断基準

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野村紀夫 監修
医療法人 山陽会 ひだまりこころクリニック 理事長 / 名古屋大学医学部卒業
保有資格 / 精神保健指定医、日本精神神経学会 専門医、日本精神神経学会 指導医、認知症サポート医など
所属学会 / 日本精神神経学会、日本心療内科学会、日本うつ病学会、日本認知症学会など

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